携帯料金値下げ、誰もが幸せになるには寡占市場を終焉させるしかない。

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 総務省は19日、携帯キャリア関係者を呼ばずに有識者会議を開催しました。日本経済新聞の報道によると、注目された主な論点は、料金の公正負担です。

 端末や通信キャリアを定期的に替えるユーザーが優遇され、その原資が長期契約者の高額な料金となっており不公平であるという点。つまり問題視されているのはMNPキャッシュバックや、iPhoneに集中する施策や「実質価格」です。また、データ通信や音声通話をあまりしない人向けのプランや、高齢者が必要以上に料金を支払っているという問題も取り上げられたそうです。

 これについて日経は、端末代金と通信代を分離する海外キャリアの事例について伝えています。流れとして、いわゆる「実質価格」は、過去のものか、選択肢のうちの一つとなりつつあるのです。

海外では是正の動きが進んでいる。米ベライゾン・ワイヤレスは端末価格を通信代と完全に分離する料金プランを打ち出した。英国では端末代と通信代の配分を消費者が選べる。端末を高く買えば通信代が安くなる。これなら長期利用者にも利点がある。

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 私は消費者には選択肢が確保されるべきだと思っているので、これらの海外事例は参考になるところがあると思います。

 ただし私は、総務省有識者会議がそのような提案をしてくるところまで、既に携帯キャリア(MNO)が先読みしている可能性があると思います。というのも、最近になって、SIMロックありのキャリア版端末の、端末定価がやたら高額に設定されている事例が散見されるからです。(例:1, 2, 3, 4)これらは端末購入に伴い2年間得られる通信料からの割引を全額適用した場合、通常よりやや安い負担額になるという仕組みです。解約をすると、端末代分割金の残債が多く残ることになるので、新たな「縛り」としての性質を強めつつあります。

 つまり今後のシナリオとして考えられるのは、「はい、割引無しにする代わりに、通信料の安いプランを用意したよ」と携帯キャリアが選択肢を設けるというもの。しかし実際にはその安い「割引なし」プランはあまり選択されないよう、キャリアは端末代金を高額にしたり、割引額を操作することで、顧客を縛りやすい「割引あり」プランに強く誘導するようになると推測します。都合のいいプランに実質的に強制するような形で誘導する例は枚挙に暇がありません。例えば、キャリアはより高収益の新料金プランへの巻取りを強化しています。割引やショップへのインセンティブを握っているので、それらを操作して、顧客の端末買い替え時、旧料金プランから新料金プランへと実質強制に近い形でプラン変更を迫っています。これは日本全国のキャリアショップで、現在進行形で起きていることです。

 どこかで聞いたような話だなと思ったら、そういえば10年近く前、キャリアの販売奨励金を問題視した総務省の要請に従い、キャリアが2つの料金プランを用意したことがありました。端末代金の安いバリューコース(フルサポートコース)と、基本料金の安いバリューコース(シンプルコース、スーパーボーナス)です。前者は廃れ、キャリアにとって都合のいい、2年縛り・契約自動更新のある後者ばかりになっていました。選択肢を用意したというのは建前で、結局こういうものは片方に集約されていく結末が待っているのではないかなと思います。販売機種のうち、不人気機種のみSIMロック解除サービスの対象とし、「SIMロック解除は需要がなかった」などとのたまったSoftBankという会社もありますし、例を挙げればキリがありませんが、キャリアの言う「選択肢」はあまりアテになりません。

 これらの諸問題を解決するには、いっそのこと携帯キャリアから端末販売を分離するしか無いのでは?とまで考えてしまいます。少なくとも既存顧客の料金を原資として端末のバラマキに充てられるような事態は起きなくなります。もちろん、それは別の問題を生む可能性もあるので難しいところですが。

 なので、現実的に取れるのは、実質価格(端末購入に伴う割引)の禁止といったところでしょうか。実質価格表記は若者の信用情報のブラック化という社会問題も生んでいるため、実質価格の禁止は様々なメリットが期待できそうです。ただし端末買い替えサイクルの鈍化も想定されます。その時は、現在キャリアが取り扱うラインナップの高機能・高級端末偏重が改善され、正価の安い廉価端末がより存在感を増しそうです。それが良いことばかりなのかはわかりませんが。

 というより、キャリアが何かをするたびに、総務省が些末なことにまであれこれ議論しなければならないような現状は、誰にとっても不幸です。国民にとっても、総務省の役人にとっても、そして携帯キャリア=MNOにとってもです。結局のところ、MNOが3社しか存在しないという反競争的な寡占市場が問題の根幹にあると思います。WILLCOMやE-MOBILEを失い、3社寡占にすることを許してしまったのは総務省であり、大いに反省すべきだと思います。

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 仮にMNOが多数あれば、ある会社が「阿吽の呼吸で、他社と足並み揃えてプランを統一、ユーザーの逃げ場を無くし、ARPUを引き上げて美味しい思いをしてやろう」などという魂胆で、横並びの不自由で割高なプランに集約したところで、残りの会社はそれを逆手に取り、独自のプランで突き崩し、一気に顧客を奪うチャンスに変えることでしょう。それこそが寡占ではない、自由競争の正しさです。菅官房長官は定例記者会見で、大手3社が似た料金設定をしていることは国民から見て問題と述べたのは、その通りだと思います。もっとたくさんの会社から自分に合った会社にどんどん乗り換えればいいので、より料金の公平負担化が進みます。

 私は、ドコモの完全通話定額制の新料金プランは、公平負担とは言えないものの、革新性も持ち合わせていたと思います。問題なのは、数少ない他社がそれを模倣し、ユーザーに選択肢が無くなってしまうことです。

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 もしそこでMNOが多数あれば、完全通話定額制への一本化についても、「ドコモは面白いことを始めたね」と、今より多くの人からその革新性を評価されたことでしょう。新料金プランへの強引な一本化が嫌なら、ユーザーは豊富な他社のうち、ドコモのコピープランを導入していない会社に移ればいいのですから。MNOとしても、同業他社が多数あることで、自社だけで多様なプランをまかなう社会的責任が薄れるので、「うちのプランはこれ一本!」と勝負に出ても、顧客からは正当な評価を受けられますし、政府の横槍を受ける必要がありません。そういう競争環境の方がMNO自身にとっても幸せなのではないかと思います。 

 ここで私がMVNO(仮想移動体通信事業者=格安SIM会社)を挙げないのは、MNOの3社に真の意味で対抗できる存在だと思っていないからです。所詮MVNOは、MNOの回線を間借りしているだけの存在に過ぎません。サポートは最小限ですし、帯域が逼迫したらサービス品質が著しく悪化するリスクはMNOの比ではありません。いくらデータ通信料が安くとも、通話基本料金が安くとも、根本的な部分で弱いのがMVNOです。そういうものをMNOは真の脅威だとは思っていません。情報に疎い多数の消費者が安心して、こぞって乗り換えるに値する存在は、MVNOではなく、MNOが適格です。MNOこそがMNOに対抗できるのです。本当に脅威となるライバルが市場に多数いて初めて、値下げを含む熾烈な競争が起きるのです。

 総務省は小手先の議論ではなく、MNOの新規参入を呼び込むための画期的なアイデアを考えるほうが、諸問題の抜本的な解決策になるのではないでしょうか。もちろん容易なことではありませんが、周波数帯からテレビ局等を退けて、新規参入の携帯会社に割り当てるような、積極的な政策を総務省が取り、寡占市場を終わらせて真の自由競争が行われる環境を整えることが、諸問題の解決と、政府方針の達成、そして消費者の利益と幸福を満たすことに繋がると思います。

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