スマホ普及率39%(2016年現在、以下同)の日本ではスマホ市場が頭打ちと言われていますが、普及率58%の中国では、まだまだ成長分野とされています。
中国の列車では、同じボックス席の乗客同士で、「どちらまで?」やら「出身はどちらですか」をとっかかりにした雑談をすることが多いです。
中国の列車内にて、蘇州で働いている息子夫婦を訪ねに行くという隣の席の爺様がいました。筆者が日本から来たと告げると、「日本人はあんなに小さな国なのに、中国の大部分を占領した。つまり、頭がいいんだな。日本製品も品質がいい」と、なかなか反応に困る話題を、あっけらかんとしてぶっこんでこられました。
「最近の日本メーカーは、最近スマホもダメなんですよねー、はは」と話をそらすと、「そのスマホ、iPhone6?いくらだった?」ときかれたので、「中古で傷物を買ったから、1,200元ちょっと(2万2,000円)ですよ」と答えたら「安いなぁ」と驚かれました。
こちらからすると、襟が擦り切れたシャツを着て白い鼻毛が数cmも飛び出した中国人の爺様が、筆者の使うスマホを見て、その機種名を判別でき、しかもスマホの値段の相場まで知っているのか……と、少し驚き。
爺様の手に持っているスマホの機種名を確認するのは忘れてしまいましたが、そういえば、スマホではない携帯電話を持っている人は、一人もいなかったように思います。バスの中でも、80過ぎの御婆さんが、スマホで動画を視聴していたりします。もしかして「らくらくホン」だの「らくらくスマホ」って、死ぬほどナンセンスな商品なんじゃ……。
ただ、この爺様は少なくとも、餓死者が数千万人単位で出た1950年代や、皆で毛沢東語録を暗記していた文化大革命から、現代の経済大国中国までを生きているので、成人した頃には新幹線が開通していたアナログ経済大国日本人の高齢者よりも、適応力が圧倒的に高いんだろうなと思います。
「携帯電話はなかったけれども、今よりも日本が、生活が輝いていた時代」を知っているという日本の高齢者と、「今の中国が一番だ」という中国の高齢者では、新しいものへの姿勢が根本的に違うのかもしれませんね。
編集部雑感:中国では高齢者へのスマートフォンの普及の余地がまだある一方で、高齢者向けを謳う製品は(質・量ともに)今ひとつ揃っていない印象。iPhoneは本来そのシンプルなUIと操作性が魅力だったが、OSバージョンが進んだ今となっては使いこなしの難易度は上がっている。中国国内市場がひとしきり飽和し始めたところで、日本のらくらくスマートフォンのような方向性の高齢者向けの機種を、中国メーカーがしきりに発表する時期も、いつか来るかもしれない。 |