台湾MediaTekは、フラッグシップにあたるSoCの「Dimensity 9000」を正式発表しました。
今までの同社が販売するSoCの処理性能は最高峰というわけではなく、コスパが命なスマホに多く搭載されていましたが、Dimensity 9000はトップクラスの性能を誇るとしています。
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MediaTekの最強SoC Dimensity 9000
どこを見ても業界初、盛りに盛ったハードウェア構成
Dimensity 9000はTSMCの4nmプロセスで製造、同プロセスを採用した製品としては世界初めての発表。またスマホ向けチップとしてArmv9アーキテクチャを世界最速での採用、同様にBluetooth 5.3も一番乗りであるとのこと。
CPUはいずれも今年5月に発表された3.05GHzのCortex-X2、2.85GHzのCortex-A710×3、クロック未公開ながら高効率のCortex-A510×4という構成で、GPUはこちらも最新のMail-G710を10コア搭載。
メモリもLPDDR4XからLPDDR5/5Xへと世代を替え、最大3750MHzでの動作をサポート。
カメラセンサーは最大3億2000万画素までサポートし、3つのカメラから同時に4KHDRの映像をキャプチャできるようです。
最大180Hzのリフレッシュレート、レイトレーシングにも対応
ちなみに、以前にArmが明かした内容によると、Mail-G710はGoogle TensorやExynos 2100に搭載されているMail-G78に比べてFP32の計算能力が35%上昇しているとのこと。Mail-G78を20コア搭載するという暴挙に出ているTensorと比較してどれほど性能に差が見られるのか注目です。
この性能を生かせるゲーム関連の性能も素晴らしく、ディスプレイのリフレッシュレートはWQHD+で165Hz、FHD+では驚異の180Hzまで対応。
Vulkan for Androidを用いて業界初のレイトレーシングSDKを提供するとしており、一部ゲーム内での光の屈折反射が美麗になることとみられます。
4nmプロセスが功を奏したか、電力効率の大幅な進歩
MediaTekはDimensity 9000の処理性能について、「Androidのフラッグシップスマホ(ここではSnapdragon 888を指すものとみられる)と比較して35%のパフォーマンス上昇と37%優れた電力効率を実現した」としています。
同様にアイドル時やメディア再生時、ゲーム時の消費電力もそれぞれ40%、65%、25%抑えられていると発表しています。Snapdragon 888搭載スマホの電池持ちはお世辞にも良いとは言えないものではありますが、かなり期待したくなる数値です。
AnTuTuベンチマークは100万点越え、「A15同等」名乗る
さらに、AnTuTuベンチマーク(ver.9)はリーク通りの100万点越えを達成しているようです。
競合と比較するとDimensity 1200は70万点強、Snapdragon 888は80万点~というスコアであり、MediaTekは「A15と同等の処理性能である」と主張しています。
なお、AnTuTuベンチマークだけで見れば83万点程度のA15は当然凌駕しており、M1搭載iPad Proの110万点台との中間に位置するのですが、なぜ同等という表現をしたのかはやや不可解です。
発表が確実視されているSnapdragonやExynosもこのスペック飛躍に追随できるのか期待したいところ。
ここまでのスペックながら「ミリ波非対応」は玉にキズ
通信関連では先述のBluetooth 5.3に加え、前世代より最大2倍優れたパフォーマンス効率をアピールし、6GHz帯まで用いることができるWi-Fi 6Eに対応していますが、5GはSub6のみの対応にとどまっている点は非常に痛いところ。ミリ波は非常に高速な通信を可能にしますが、世界での普及は非常に限定的であるため仕方がないところではあるのでしょう。次期SoCでの対応を期待したいところです。
スナドラ爆熱を揶揄
Dimensity 9000を搭載したスマホは2022年の第一四半期、つまり1月から3月までに登場すると明言されているようです。
また、Android Authorityが伝えたところによると、MediaTekの副社長であるFinbarr Moynihanは、Dimensity 9000の供給には自信があるようです。
熱問題については「問題があるのは1社だけで、それは私たちではない」と開発中ながら熱に関する懸念が多くリークされるSnapdragon 898(8 gen1)への挑発を交え語ったとのこと。黒歴史とまで言われるほど発熱問題が深刻だった「Snapdragon 810」レベルの発熱であれば、MediaTekがQualcommに変わり天下を取ることもなくもなさそうですね。
Dimensity 9000を採用したスマホを販売する企業は公式には明らかにされていないものの、OPPOやXiaomi、Honorなどが採用すると噂されているようです。
同様に搭載されるスマホの価格帯についても明言はされていませんが、5万1000円からのデバイスに搭載されると以前のリークでは伝えられています。ただし個人的にはこのスペックで5万円台からというのは少し考え難く、眉に唾をつけておいたほうが良いと感じます。
Dimensity 9000は非常に魅力的なスペックを備えていますが、それは単に競合より一歩進んだArmv9と4nmプロセスを採用しているだけ、というのも考えられます。年内にはSamsungとQualcommがそれぞれSoCを発表するとみられており、どのような展開になるのか注目したいところです。