
PROLED XDRディスプレイを搭載したMacBook Pro。画像出典:Apple
Appleは10月28日、Macで初めてタッチ操作に対応したMacBook Proを発表しました。ディスプレイはタンデム有機ELの「PROLED XDR」で、11月6日(金)に発売します。
ディスプレイ業界のアナリストRoss Young氏は10月29日、この新しいMacBook Proの有機ELについて、バックプレーンにLTPSやLTPOを使わず「高移動度酸化物」(HMO、High Mobility Oxide)を採用しているとXに投稿しました。
同氏によると、サムスンディスプレイのA6工場が業界初のHMO工場であり、現時点ではLTPSやLTPOのラインより大きな基板で製造しているとのことです。
The new OLED MacBook Pro’s do not use LTPS or LTPO for the backplane. Instead, they use high mobility oxide. Samsung’s A6 fab is the industry’s first high mobility oxide fab and it is made on a larger substrate than LTPS and LTPO fabs for now.
— Ross Young (@DSCCRoss) October 29, 2026
このHMOについて、韓国のThe Elecは11月3日、最終的な量産工程は未定ながらも、Appleが製法(薄膜を積む方法)としてまず「スパッタリング」を検討していると伝えました。
The Elecによると、もう一つの選択肢である「原子層堆積」(ALD)は薄膜の精度や特性制御に優れる一方、装置や材料のコストが高いのが難点。そのため、Appleは費用負担の少ないスパッタリングの可能性を探っているといいます。
バックプレーンは、有機ELの画素を一つずつ点灯・消灯させたり明るさを調整したりする薄膜トランジスタ(TFT)を、基板の上に作り込んだ部分。HMOはこのTFTの性能を高める技術で、従来の酸化物TFTにおける10cm²/Vs前後の電子移動度を、30〜50cm²/Vsまで引き上げるのが目標とされています。

有機ELの構成。上からウィンドウ、有機発光層(RGB)、TFT、基板で、TFTと基板がバックプレーン(백플레인)。画像出典:The Elec(サムスンディスプレイのニュースルームの図)
The Elecは、電子移動度が高いほど多くの電流を流せるため、高解像度や高リフレッシュレートの画面を作りやすくなると説明しています。
スパッタリングは、プラズマで固体の材料から原子をはがして基板に積む方式で、既存の有機EL生産設備を転用できます。しかし、高い電子移動度と信頼性を両立させるには、材料組成や薄膜の改良が不可欠とのことです。
一方のALDは、気体の原料で原子1層ずつ膜を積むため、厚さや成分を精密に制御可能。サムスンディスプレイはスパッタリングによるHMO開発を進めつつ、ALDの検証も行っています。
The Elecによると、Appleは台湾の自社研究開発施設でHMO技術を検討したうえで、サムスンディスプレイに対し、第8世代クラスの大型基板ラインで適用できるか検証するよう提案したといいます。
また、LGディスプレイも第6世代の中小型有機ELラインでスパッタリングによるHMOを開発中。ALD研究も並行しており、昨年にはALDで作った酸化物TFTで約40cm²/Vsの移動度を達成し、試作パネルを公開しました。
それでも、LGディスプレイは追加の設備投資負担を考慮し、既存のスパッタリング設備を活用する方針に重きを置いているとされています。
The Elecは、HMOを将来のMacBookやiMacなど、高解像度なIT機器向け有機ELに使う候補の技術としています。
現行の高級有機ELの一部はシリコンと酸化物半導体を併用したLTPOを採用していますが、HMOの性能が十分に上がれば、シリコン工程の一部を酸化物に置き換え可能。製造工程が単純化され、生産コストの引き下げにつながるといいます。
業界関係者はThe Elecに対し、「サムスンディスプレイとLGディスプレイはどちらもスパッタリングを優先しつつ、ALDも研究していると聞いている」と証言。「ALDの性能面の利点は研究段階で確認されたが、費用面からスパッタリングをより多く試しているようだ」と語っています。
タッチ対応のMacBook Proは49万9800円からと非常に高価ですが、Ross Young氏の指摘通りならHMOはすでに製品へ投入されています。The Elecの伝える通り、既存設備を活かせるスパッタリング製法が確立して製造コストが下がれば、有機ELを積んだMacがより手の届く価格帯へ広がっていく道筋が見えてきそうです。











