携帯キャリアの「通信の最適化」、違法行為にならないよう説明すべき

掲載日時: 2015/07/14(火) 21:31

 複数のTwitterユーザーによると、NTT docomoに「通信の最適化」について問い合わせたところ、詳細の回答を拒否されたとの報告が上がっています。

 特に上り(アップロード)時に適用されるかどうかは重要なポイントのはずですが、これについて回答を拒否するようでは、果たしてユーザーへの説明責任を果たしていると言えるのでしょうか。

 また、SoftBankについては、詳細説明を頑なに拒否した上で「通信の最適化」自体を一時中止、auに関してはサポートセンター側ですら詳細を正確に把握していないという状況です。

 電気通信事業者協会の 「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」には、通信制御に関して、憲法第21条第2項および電気通信事業法第4条第1項に保障された「通信の秘密」を侵害するものと規定されています。これに実効性を担保する法律として、刑事罰を備えた電気通信事業法第179条、総務大臣による業務改善命令を定めた電気通信事業法第29条があります。

 このため、ガイドラインは帯域制御の実施にあたり、通信当事者の個別かつ明確な同意を求めており、単に契約約款やホームページに書いただけでは個別かつ明確な同意にはならないと明確に定めています。同意を欠くと違法です。

 これらに対する違法性阻却事由として、刑法第35条の「正当業務行為」があります。ガイドライン上、本人同意を得ていなくても、「正当業務行為」であれば「通信の秘密」侵害が許容されます。同じく「通信の秘密」を侵害する可能性のある未成年者向けのフィルタリングサービスはこれに該当すると考えられます。

 今回の「通信の最適化」はどうでしょうか。正当業務行為の要件として「帯域制御の方法等が相当なものであること(手段の相当性)」が不可欠です。「通信の最適化」がはたして相当性のある手段と呼べるでしょうか。ガイドラインはP2Pに関する転送量規制などを想定しています。しかし固定回線の事業者が、同意なく勝手に画像や動画を改竄するという例は聞きません。フィルタリングも、単に見れなくなるだけでデータを改変しているわけではありません。つまり非可逆圧縮という手段を用いた「通信の最適化」は、違法性阻却事由である正当業務行為の要件を満たしていないと見るのが妥当ではないでしょうか?

 このため、現行の携帯キャリアによる「通信の最適化」は、「通信の秘密」を侵害した違法行為であるとの疑いが拭えないように見えます。もし画像や動画ファイルを非可逆圧縮させることによる帯域制御を、適法に継続するのであれば、ユーザーにしっかりと説明した上で同意を得る必要があるでしょう。ガイドライン上も包括同意は認められていないので、説明なくデフォルトでオンにするという各社の現在のやり方ではもちろんダメです。ガイドラインに定められているようユーザーにメールなどの手段で連絡するなど、個別かつ明確な同意を得ることで初めて適法となります。

 販売現場やサポートセンターさえもまともに説明できない事項について、一般ユーザーが十分に説明され同意したと考えるには無理があります。やはり一度「通信の最適化」を全面的に中止した後、ユーザーが任意で適用できるような仕組みとして再出発する必要があるのではないでしょうか。個人的には、月間通信量や料金面で有利になる代わりに、画像や動画が圧縮される「通信の最適化プラン(またはオプション)」といった形で導入すれば、デメリットを甘受した上で、「通信の最適化」に同意してくれるユーザーが増える可能性があるのではと思います。

 これらはあくまで「通信の秘密」という観点から考えたものです。データ改竄による著作権、同一性保持権の侵害など他の観点からの適法性についての議論は、ひとまず読者や他の方にお任せし、筆を置くことにします。

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