
「宗教上の理由でAIは使いません」が通ってしまった。
米Business Insiderによると、ノースカロライナ州在住のソフトウェアエンジニア、Erin Maus氏が、勤務先のAI利用要件について宗教的配慮を認められたとのことです。
申請したのは2026年4月。大手のテック・エンタメ企業とされる勤務先は、同年5月中旬にこれを承認したのだとか。代わりに彼女が選んだのは、AIを使わず自分でコードを書き、レビューも手作業で行うという働き方です。
Maus氏はUnitarian Universalist(キリスト教にルーツを持つものの、現在は共通の信条を置かず、多様な宗教・哲学を受け入れる自由主義的な宗教運動)の信者で、AI利用が自身の倫理的・環境的な信条と相容れないと主張しました。本人は「自分でコードを書いて、自分でレビューしている。口に出すと正気じゃないみたいですけど」と語っています。AIが前提となった現場では、手書きのコーディングはもう奇異に映るのでしょう。なお、気になる生産性については、最近のほぼ同じコーディング課題で、AIを使った同僚と同じ速度で終えたとも述べています。
根拠として持ち出されたのは、信教を理由とする差別を禁じ、宗教的配慮を求める米国のTitle VII(公民権法第7編)です。ここで守られるのは本人が真摯に抱く宗教的信念であり、必ずしも伝統的な宗教概念に限られません。当のUnitarian Universalist Associationも、AIについて公表済みの統一見解を出しているわけではなく、AI利用の方針と神学的声明を作成中だと説明しています。しかし、教団の公式見解がないから即アウト、とはならないのがこの制度のポイントです。
その信条が真摯に抱かれた宗教的信念なのか、そして職場にどの程度の負担が生じるのかが争点であり、世間で主流派かどうかだけで決まるわけではありません。2023年のGroff対DeJoy判決(雇用主が配慮を断るハードルを引き上げた最高裁判断)以降、企業は相当なコスト増を示せなければ配慮を拒みにくくなりました。
ちなみにローマ教皇レオ14世の回勅も、AI時代に人間の尊厳や仕事の意味を守る必要を説いているので、とてもタイムリーと言えそうですね。
とはいえ、これは一企業が一社員に認めた配慮にすぎず、判例でも法的勝利でもありません。今後も同様の事例が出てくるのか注目です。











