中国の半導体最大手SMICが、7nmプロセス製造技術を使い、チップを製造していることが、TechInsightsの調査によって判明しました。
情報によると、SMICは、ビットコインマイニング用SoCを、同社の7nmプロセスで製造し、2021年7月ごろから既に出荷しているとのこと。
SMICは、過去に2回、台湾TSMCに技術のコピーをめぐり訴えられており、TechInsightsによるリバースエンジニアリングでは、今回発見されたSMICの7nmチップは、TSMCの7nmプロセスを緻密に真似たものであったことがわかっています。
SoCは、スマートフォンの動作おいて、性能を決める一番重要となるパーツ。現在、大手各社がスマートフォンを製造する上で、チップ製造において抜きん出た技術力を持つSamsungとTSMCは欠かせない存在となっています。
現在はその勢いを無くしてしまったファーウェイにとっても、自社製Kirinチップを発注していたTSMCはチップ製造において無くてはならない会社でした。しかし、米国による中国への禁輸措置によって、TSMCはファーウェイにSoCを出荷することができなくなり、ファーウェイもKirinチップの採用取りやめを余儀なくされ、結果的に現在は5Gの機能を削った米Qualcomm製Snapdragonシリーズが搭載されています。
アメリカはこれまで、中国にチップ製造の技術において追い越されるのを防ぐため、さまざまな手立てを打ってきました。その中の一つに、EUV露光装置の存在があります。
このEUV露光装置は、人間の髪の毛の数分の一にも及ぶシリコンウエハー上に、表面加工で回路設計を行うことのできる装置です。一台約1億5000万ドル(約206億円)のこのマシンは、現在オランダのASML社のみが製造でき、独占状態となっています。
7nm以下の回路幅でのチップ製造において、このマシンは必要不可欠であり、SamsungやTSMCもこの装置を使用。中国国内の半導体メーカーは喉から手が出るほど欲しいであろうこのEUV露光装置ですが、米国の禁輸措置強化によって導入はかなり難しい状況。この状況から、中国の半導体ファウンドリは、世界的にもかなり遅れている、というのが、これまでの考え方でした。
しかし、SMICは、この装置なしでも7nmプロセスでのSoC量産に成功。もちろん、EUV露光装置を使わずに7nmプロセスによるSoCの製造を行うには、技術の向上や設備投資に莫大な資金がかかる上、歩留まり率も低いことが予想されます。ただ、成功した際の利益がとてつもなく大きいため、資金のある中国にとってこの投資は痛くも痒くもないものであるとのこと。
なお、今回TechInsightsがリバースエンジニアリングした7nmプロセスで製造されたSoCは、ビットコインマイニング用に作られたもの。ビットコインのマイニングにおいては、実行メモリをあまり使用しないため、SoCとしての完全な機能を持っているわけではなく、現段階でスマートフォン等に搭載できるようなものではないようです。
ただ、SIMCは今後、さらに複雑なチップセットの製造に取り組む可能性は非常に高く、いずれファーウェイのKirinチップがSMICによって再び製造される日が来るかもしれません。