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VAIO Z長期利用所感。納めた炭素税の価値は

 VAIO株式会社の新しい旗艦モデル「VAIO Z」を、2021年の発売当時、40万円台に手購入し、これまで愛用してきました。本記事の写真は原則として購入当初に撮影したもの。

 筆者はこれまで頻繁にノートPCを買い替えてきましたが、2022年は買い替えませんでした。これはVAIO Zに愛着が湧いてしまったことが一番の要因です。

 愛着の湧いたその最たる理由が、やはりデザインです。

 炭素繊維、カーボンによるほぼ立体成型の筐体。カーボンは軽量で耐久性のあるメリットのある反面、加工が難しい性質がありますが、加工技術でこれを克服。14型と大型モニターを搭載しながらも、重量をわずか1kg前後を実現しています。

 性能も長く使えた要因です。TDP35WのCore H35プロセッサを搭載。筆者がノートPCで行なっていたのは主に記事執筆、写真現像、画像編集などであったのですが、あらゆる作業をパワフルにこなせました。この性能のPCを入れた鞄を背負う背中が軽い……心が躍りました。

 キーボードは、印字が隠し刻印でクールな印象を与えます。

 とはいえ無刻印ではなく、あえて他の人からは見えにくくしているだけ。よく見ると確認できます。また、バックライト透過により使う時は見やすく。暗所でもしっかり使えます。

 キーボードの配列は左下にctrlキーが配置されたオーソドックスな形式。個人的にはこっちの方が打ちやすいです。

 キーは1.5mmとかなりキーストロークもあり、音は控えめ。打鍵感は良好だと感じます。

 ただし、キーストロークと静粛性では、やはりキーボードをアイデンティティとするThinkPad X1 Carbonの方が一枚上手だと感じています。1.8mmのキーストロークを確保しながら、VAIO Z以上にキーの音がしません。単純にキーボードの打鍵感のみで選ぶのであれば、ThinkPad X1 Carbonに軍配が上がると思います。

 とはいえ、チルトアップヒンジによる傾斜が生み出す打ち心地も捨てがたい。また、隠し刻印を含めた外観上の満足感も数値化できない良さがありました。

 インターフェイスの乏しさは弱みでしたが、筐体があまりにもカッコいいので我慢できました。カメラとの接続のための有線ケーブルはほとんど必須でした。

 ノングレア、非光沢で落ち着いて作業に集中できるディスプレイです。ディスプレイは180度の開閉に対応。ホットキーで画面回転も可能。机を挟んで相手にプレゼンする場面でも使えます。

 新開発の53Whの大型電池を搭載。JEITA2.0測定値なので当てになりませんが4Kモデルなら17時間、FHDモデルなら34時間の電池持続時間。

 筆者は「SIMの刺さらないPCは要らない」と公言しており、屋外では常にモバイルネットワークで4G/5G通信をしています。前述した通りFHDモデルを選択。80%で充電を止めて電池劣化を防ぐ「いたわり充電」を有効化しています。この筆者の環境で、屋外ではブラウジング、予定やメモ、少しの写真編集などをしているのですが、3時間以上は持ちます。

 気になったのは待機中の電池持ち。特に通信モジュール活用時は、最近のWindowsはモダンスタンバイ(省電力で稼働しネット常時接続で待機)が働く上に、これをユーザーがオフにすることは原則不可能。そのためか、単にスリープさせるだけでは莫大な電池消費して困りもの。必ず一定時間後の休止設定が必要。

 顔認証と指紋認証に両対応。指紋認証センサーは電源ボタンに内蔵です。顔認証は単にインカメラのみで行うものではなく、実行時に赤外線を照射、セキュリティを担保。指紋認証はスリープ/休止からの復帰時にうまく動作しないこともありました。

 スピーカーは音楽や動画を再生すると、音質は全体的にややこもった印象を受け、音のキレが足りません。しかし驚いたのがその音量音圧。VAIO Zの40%台の音量で、ThinkPad X1 Carbon(2018)の音量80%ぐらいでしょうか。とてつもない音のデカさ。人の声もしっかり聞こえますので、会議向け、ビジネスといったテイスト。配信側の問題なのか音がなぜか小さくて聞こえない時や、外が工事でうるさい時などでも安心して使えました。

 本機は「挑戦に火を灯す、道具を超えた相棒」を企図して設計開発されました。良くも悪くもその通りで、オーディオにはあまり色気がありません。そこを求める人にはおすすめできない機種です。しかし「ビジョンに共鳴した」「ビジネス用途に使う」「音楽はイヤホンで楽しむ」といった人には向いている、質実剛健なコンセプト通りの機種と言えます。ただそれでいながら、インターフェイスを削って、とにかくカッコよさに振り切っている点は、ついて来れる人とそうでない人を分けていたでしょう。個人的には、これで良かったと思います。

 不満はあれど総合的には非常に気に入っていました。筆者はRTX4090を挿したデスクトップPCも持っているので、モバイルノートPCに求めるCPU処理性能としては、VAIO Zに不満があったわけではありません。しかし、利用頻度がガクッと下がる出来事がありました。それがSIMモジュールの故障です。

 モバイルネットワークに接続できないだけではなく、ハードウェアそのものが認識しなくなりました。初期化しても変わらず。このため、スマートフォンでテザリングをして使うようになりました。この辺りから、ノートPCをあまり出先で使わないようになりました。

 とはいえ、これはVAIOの問題ではないと思います。筆者は10年以上前からSIMスロット付きのノートPCを使ってきましたが、ほぼ毎回モバイル通信モジュールから壊れます。OSやドライバの更新などを重ねていくうちに挙動が怪しくなりますし、結局ハードウェアもダメになります。もう何台もこの調子なので、本当にそういうものだと思って諦めています。Windows機のSIM内蔵に夢を見るのは本当にやめた方がいいです。強いて言えば、まだかろうじてArm版Windowsには少しだけ夢を見てもいいのかもな……ぐらい。

 繰り返しになりますが、VAIO Z自体は開発者の情熱がこもっていて本当に愛着のわく素晴らしい機種でした。様々な取材の相棒として活躍してくれました。「炭素税」を納めた価値はあったと思います。

 電池の換装等を行なった上でサブ機として残そうかと思っています。後継機が無事に出てくれることを祈りたいです。

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