ごめん、AQUOS R8 proより好きだわ(笑)
SHARPより、Androidスマートフォン「AQUOS sense8」をお借りしたのでレビューします。発売前のファームウェアであるため、実際の製品とは異なる部分がある可能性をご承知ください。
本機は消費税込み5万円台後半(SHARP新製品発表で公開されたメーカー想定価格)のミッドレンジモデル。
驚くべきはその軽さ。5000mAhの大容量電池を搭載した防水防塵耐衝撃MIL規格対応の高耐久機でありながら、なんと重量は実測わずか159.1g!(公称値とほぼ一致)アホみたいに軽いです。持ち心地も良好です。
ちなみに高耐久ではないXperia 10 Vも同水準の軽さです。国内勢ミッドレンジは軽さ競争がトレンドというわけですね。
今回お借りしたのはグリーン。暖色の灯下では銀色にも見えた絶妙な色合い。今作の中でも随一の色です。
幅は71mm。iPhone 15 Proよりわずかに太く、iPhone 15 Pro Maxより大幅に狭いです。
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Zenfone 10, Pixel 8, AQUOS sense8, iPhone 15 Pro Max
FeliCaはカメラ部分。金属筐体なのでここが最適ですね。
イヤホンジャックとスピーカーは底部。指紋認証センサーは側面部。画面内指紋認証も先進的な印象は受けますが、やっぱり確実に指を当てて解錠しやすいのは側面配置ですよね。しかも、前モデルでは電源ボタンと指紋認証が分離していて、指紋認証も変に下に寄っていて使いにくかったのが、ちゃんと統合型に変更の上で、中央配置となっています。これは大きなポイントです。
指紋認証解錠をし続けると任意のアプリ起動が可能な「Payトリガー」には引き続き対応。「電源ボタンを押して、それから指を置き換えて、指紋認証に置いて長押し」みたいなまどろっこしい動作が必要なくなったのもあって、使いやすいです。
しかもこのPayトリガーにて、複数アプリのショートカット指定も可能になりました。どのアプリひとつだけに絞ろうか、もう悩まなくて済みます。
Payトリガー、なんかまれに不発に終わるんですが、設定から「ホーム画面表示時でもPayトリガーを使う」ようにできるので、この設定をオンにしておくと失敗の確率を減らせます。
画面は10億色、ピーク輝度1300nit、6.1型のIGZO OLED(有機EL)。カメラ使用時のみ輝度を高めるオプションもありますし、HBM発動により屋外でもしっかり視認性を確保できます。
国内Androidシェア首位を取り続けてきたAQUOSにとって、最大の好敵手が新星Google Pixelシリーズです。廉価帯でも高駆動化が進み、Pixel 7aは価格6万円で90Hz駆動に対応してきましたが、ここにきてAQUOS sense8もしっかり90Hz駆動、さらに黒挿入90コマによる擬似180Hz駆動にも対応です。60Hzでのスクロールは個人的にはもはや苦痛なので、良いことだと思います。
AQUOS sense8 90Hz+黒挿入90コマ(※途中スロモで録画) pic.twitter.com/TYHQakRNys
— すまほん!! (@sm_hn) October 27, 2023
可変駆動に対応、画面静止時1Hzのアイドリングストップによる省電力も実現。電池容量5000mAhへの増量もあって電池持ちは良好です。
SDR動画をHDR動画のように視聴できると謳うバーチャルHDR機能に対応します。確かに鮮やかでこってりとした色合いにはなります。
ただ色彩だけではなく輝度情報を含んだのが本来のHDR動画。暗部階調の保持など記録時点から広いダイナミックレンジでたっぷりの情報量を記録し、再生側もそれを表示して初めて本当に意味があります。そもそもSDR動画ではそうした情報が欠落しているので、変換には限界があります。あくまで「HDR動画っぽい雰囲気の動画」でしかありません。
また、本機はAQUOS sense7とは異なり、そもそもHDR動画に対応しています。YouTubeやSVODのHDR対応動画にて細かい明暗も再現、美しく臨場感のある動画視聴が可能です。
なお、AQUOS sense6でもHDR動画に対応していましたし、AQUOS sense7はHDR動画非対応・パネル自体はHDRに対応、何ならAQUOS sense8と同じパネルを搭載していたものの、sense7採用の「Snapdragon 695」が原因で、sense7はHDR動画自体に非対応となっていました。このため、旧来モデルから対応していた「バーチャルHDR」機能を、AQUOS sense7で苦し紛れにアピールした、というのが実情だと思います。
とはいえ、AQUOS sense8でHDR動画の輝度情報まで含んだダイナミックレンジの広い美しい高画質映像を堪能した直後に、やや眠たい退屈な色調の映像、たとえばSDRのテレビ番組でも見ようものなら、なかなか落差を感じます。そうした違和感を緩和してくれるという意味では、バーチャルHDRにも存在意義はあるのでしょう。
さて、ここまで読んできて「え、AQUOS sense7とパネルが同じはずがない、sense7のリフレッシュレートは60Hzなので違う」と心のなかでツッコミを入れたあなたは鋭い。既に90Hz対応だったパネルの真価を発揮できるよう、AQUOS sense8ではパネルではなくディスプレイICを変更しているのです。いくら特定の部品が優れていようとも、他の部品で整合性がとれていなければ意味がないということです。
その意味ではSoCがあらゆる点で進化したのも大きいでしょう。そう、Snapdragon 695とは違うんです。本機の搭載するSnapdragon 6 Gen 1の性能を御覧ください。Snapdragon 695からグラフィックスは35%向上、ゲーム性能は40%向上、AI性能は最大3倍。ベンチマーク計測でも凄まじい飛躍で、2年前のミッドハイぐらいの性能を有しています。
- AnTuTu v10.0.7:50万9464点
- Geekbench 6 Single-Core:937
- Geekbench 6 Multi-Core:2693
- Geekbench 6 GPU:1326
- Sling Shot Extreme OpenGL ES 3.1:4021
- Wild Life Extreme Unlimited:605, 平均3.63fps
- Wild Life Extreme Stress Test:Best loop 613, Lowest loop 544, Stability 88.7%
- Solar Bay:測定不能
- PCMark Work 3.0:10932
AQUOS R5GなんかはX(当時Twitter)のスクロールがすごく快適だったのですが、後のスペックアップしたハイエンドではわずかに怪しい部分も出て、「独特のスクロール慣性が足を引っ張ってるのだろうか?」と思いつつ、senseシリーズでの90Hz駆動対応は特にX等でやや心配だったのですが、概ね杞憂でした。独特のスクロール慣性が相当弱まっていたので、基礎スペックの向上と調整が効いているのだと推定します。ちなみに黒挿入はSoCではなくディスプレイIC側でやってると思うのでほぼ処理負荷の要因とはならないはずです。
凄まじい性能向上はCPU・GPU性能に留まりません。ISPの性能も飛躍的に向上しており、動画はFHD/60fpsはもちろん4K/30fpsにも対応します。
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サブ 超広角 800万画素/メイン 広角 5030万画素 1/1.55型
廉価モデルとしては大型の撮像素子を搭載。適度のボケ味を得られます。
擬似再現ではない光学的なボケであるため、被写界深度の奥だけではなく手前もボケさせられます。
感動したのが、カメラの色味です。Leicaとの提携以降、画質処理のレベルが格段に上がってきたAQUOSですが、その成果がsenseシリーズにもトリクルダウンしています。
たとえば料理を撮影する際には「メシウマ」写真を連発できます。
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AQUOS sense8
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OPPO Reno10 Pro
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Zenfone 10
光学式手ブレ補正にも対応。静止画でブレずに安定して撮影が可能でした。
AQUOSは日中屋外でややダイナミックレンジが狭い印象ですが、「あえて」そうしているのでしょう。意図通りにハマったであろう一枚がこちら。
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広角/オートで撮影。他社製品では暗部も持ち上げてしまう場面だったが、あえて雰囲気を重視している意図が伝わる。ただこの作例は暗部の色味等に違和感もある。SHARPは高性能化したISPを活かして本機からHDR用のNRを、非HDRの写真にも適用するようになっているため、今後の調整次第ではこうした場面でも暗部の品質が向上する可能性はあり、アップデートに期待したい。実際、ここから掲載する夜景の作例では暗部のディテールもかなり健闘している
特に素晴らしいと感じたのが夜景です。
明暗差の大きな部分も捉えられ、タップ後に露出ツマミが出るので調整可能。
これまでのAQUOSの色味は「一般人にA/Bテスト」をしたのだろうと思わせる、やや黄色みがかった派手な画作りでしたが、これが変化。東京駅の有名なロケーションでのこの作例がわかりやすいと思います。まるで大陸版Leica Xiaomiハイエンド機のLeica Authentic Lookを彷彿させる、落ち着いた高級感ある画に激変。たまらなく良いです。
ちょうどsense7とXiaomi Leicaの中間といったテイストで、万人向け且つ伝統的な写真の良さのある、素晴らしい画だと思います。以下、参考までにsense7とXiaomi MIX Fold2の同一ロケーション(別日撮影)。
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参考:前モデル「AQUOS sense7」にて別日撮影。明るく黄色みがかる傾向。
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参考:ほぼ同サイズの撮像素子 IMX766を搭載したXiaomi MIX Fold2でLeica Authenticにて撮影。より格調高いクラシカルな色彩。必ずしもsense7が駄目という話ではなく、この写真と比較した投票を行ったところ、わずかにsense7の作例が人気という結果だったので、シャープとしても一般人にA/Bテストをしっかり行った結果、あえてsense7はあのようなテイストにしていたのだと思われる。
より低照度のロケーションでは、シャドウ部分のディテールもしっかり描き出しており高水準です。
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複数の夜景を撮影したところ光芒光条らしきものも確認できたがRAW時点から入っている光学的な事象で、疑似再現ではないことをメーカーに確認済み。
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参考:2020年、ハイエンド旗艦AQUOS R5Gにて撮影した同じ場所。ほとんど全てがいまいち。この頃までは夜景モードさえもまともに実装されておらず、廉価モデルはさらに劣悪なカメラ品質だった。
本作では、普段はピクセルビニング(画素混合)、2倍以上のズーム時にはリモザイク(画素混合解除)を活用するようになりました。
左が1.9倍のピクセルビニング、右が2倍のリモザイクから切り出し。わずかにリモザイクが精細ですが、日中屋外で違いを感じることは稀かもしれません。
むしろ低照度でこそ大きな効果を感じられる場面がありました。以下の東京駅での作例がわかりやすいです。煉瓦のディテールがより詳細に描き出されています。
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1倍 画素混合
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1.9倍 画素混合 ディテールが潰れている
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2倍 リモザイク 煉瓦も描写
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左:画素混合、右:リモザイク
シャドウ部分も極力ディテールを描き出そうとしており感心します。画素ピッチあたりの光量は減少するため、単枚でより高感度を要してノイズは乗ります。廉価モデルでここまでやれているのは本当に素晴らしいことです。これ以上やるには、より大型の撮像素子と高度なSoCが必要になるでしょう。
課題は、1.9倍以下と2倍以上の切替時のホワイトバランスの一貫性の無さで、寒色から暖色、またはその逆に顕著に反転することが多々ありました。アップデートでの改善を期待します。
超広角はセンサーもレンズもダメなのか光学性能の余裕の無さはHDR/夜景モードでも補えない水準で、日中屋外でもしばしば解像感の無さ、特に周辺部の甘さ、パープルフリンジ、ノイズなどが気になる上に、広角カメラ利用時の保存等バックグラウンド処理が走っている時には超広角への利用が制限されるため、積極的に使いたくなるものではありませんでしたが、超広角でしか撮れないダイナミックな構図を撮りたい時、ここぞという時でにはやはり使いたいもの。超広角、単純に楽しいですからね。
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広角カメラでの保存中に他のモードへの切り替えは可能だが、超広角への切り替えは制限された
なお、従来のAQUOSのカメラは使い勝手の悪くて酷いUIでしたが、AQUOS R7にて大幅に改善、その成果はsenseシリーズにもトリクルダウン。片手操作も容易なズームなど、比較的良好なUIになっている上、さらに今作では「予備シャッターボタンの自由配置」も可能となっており、片手操作性がさらに増しています。
AIのシーン判別は、点字ブロックに照明があたってるのを「夕暮れ」、雨の中で光る街頭に「花火」など、誤認した理由はわからんでもないというものから、東京駅を「動物」など、さっぱり理解不能な珍判定も出るので、AI判定が正しくない場合には適宜オフにしましょう。
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判定結果の右の罰印を押すことで判定を解除できる
スピーカーは、AQUOS senseシリーズとしては、sense7 plusのようなオーディオビジュアル特化の別格を除けば順当な音響。
ただsenseシリーズということを差し引いてフラットに評価すると、全体的にややヴェールがかけられ、ドライな音に感じます。特に低域は何枚もかかっていて音圧も解像感も全然足りません。中域は出ていますし、高域もなんとか努力は感じますが金属系の音、ジンバルクラッシュなどは痩せ細って尖ったような違和感を覚えます。そもそもモノラルなので、縦方向の動画SNSばかりを楽しむのでない限り、積極的に活用する品質ではありません。
廉価モデルではありますが、最悪の状況の為替が原因で5万円台後半にまでなってきてしまった現在地を考えると、物足りないのも正直なところです。せめて音を「シャワー浴中のギリギリから、余裕でしっかり聞こえるライン」に上げるだけでも、製品特性を強化しつつ継続利用者の満足度を上げることができると思います。概ねTWS等無線音響機器でカバーできても風呂場だけは難しいですし、改善すれば「お風呂防水」対応を謳っているsenseシリーズの強みになるはずです。
本機のバイブレーターは良く言えば優しく、悪く言えば重厚感がなく、振動によって発せられる音も含めて安っぽく、電源二度押しでのカメラ起動時には漫然と鳴るバイブが嫌になります。廉価モデルなのでリニア式ではなく回転式なのでしょう。
充電関連は、廉価モデルなので仕方ないですが急速充電には非対応である一方、ノートPCでお馴染みの「9割ほどで充電を止める」機能などの工夫があり、長く電池を労ることができます。
アップデート公約は「最大3回のOS更新、セキュリティ更新最大5年」。ハイエンドモデルであるAQUOS R8 / R8 proに準じる形となりました。単に頑丈と言うだけではなく、中身の面でも長く使える仕様になったと言えるでしょう。基礎性能の向上により動作の低下も長期間維持できることも一定期待できそうです。
筆者はsenseシリーズに対して、廉価モデルとして健闘しているとは思うものの、自分で使いたいと思うことはありませんでした。
しかしネックだった画面のリフレッシュレートも改善し、高耐久・軽さ・大容量電池の高次のバランスとカメラに強烈に惹かれてしまいました。国民機senseシリーズの最新作、より幅広く売れそうだと感じました。
この価格帯の機種を検討しており弱点の部分が気にならない、妥協できると感じた人は、ぜひ手に取ってもらいたい1台です。
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