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プロ写真家が徹底検証。スマホカメラ頂上決戦「HUAWEI P40 Pro」対「iPhone 12 Pro Max」

 スマートフォンのカメラが「一眼レフ画質」を謳って久しいですが、普段から一眼カメラを使う人にとって、その画質がどのくらいのものか気になりますよね。

 職業カメラマンである私が、スマホカメラの中でも評判の良い機種を2台チョイスして、比較検証してみました。

 念のため筆者の自己紹介しておくと、東京大阪を拠点にポートレート(人物写真)を撮影するカメラマン。複数の写真展の主宰や写真集制作を行っています。自称「関西で一番コスプレイヤーの写真を撮ってる男」であると同時に、フリーランスプログラマーでもあることを活かし、コスプレイヤーのためのWebサービス「コスピクセル」の開発運営もしています。

 今回用意したのは「iPhone 12 Pro Max」と、「HUAWEI P40 Pro 5G」です。現時点でスマホカメラ最高峰とされる両社の2台が、今回は主に人物写真で、どのくらいの画質やパフォーマンスを発揮できるのか。実際に撮影・検証してみました。

ファーストインプレッション

 両機種ともカメラ性能でスマートフォン最高峰を謳うだけあり、撮影した写真を確認して「おおっ!こんなに撮れるんだ!」という感動がありました。顔認識AFからシャッターボタンワンタッチで、本格的な写真が撮れる!もう大きいカメラは要りません(笑)

 撮影を始めてまず、「HUAWEI P40 Pro(以下、P40 Proとする)」のレンズが0.5倍/1倍/5倍のため、人物写真にてゆがみが少なく、ちょうどいい距離がとりやすい2~2.5xのレンズがないことを少し残念に思いました。画素数に余裕があり、描写も良いのでデジタルズームでも不満はないんですけれど。

HUAWEI P40 Pro 5G プロモードで撮影 / Adobe LightroomでRAW現像

 一方で「iPhone 12 Pro Max(以下、iPhoneとする)」は、写真の暗いところが少なくなるよう、全体的に白っぽく仕上げるようになっているので「ちょっと写真が安っぽい」という印象。AF時に指を離さず、下にスライドすると明るさを調整して撮影が可能なので、やや暗く設定して撮るようにしていました。

iPhone 12 Pro Max ポートレートモードで撮影 / Photosで調整

撮影時の操作性

 撮影時に両機種で気になったのはカメラの操作性です。スマートフォンの写真アプリは”手軽に撮る”ことが重視されています。撮影時の明るさ(露出,EV)も自動で設定されるので「この明るさで撮りたい」と決まっている場合は毎回シャッターを押すたびに選び直さなければなりません

撮影のたびに《ピンを位置をタッチ→下にスライドして明るさ決定→シャッター》と言う操作がめんどくさい。

 人物写真は肌色のこまかな表現が最も重要です。光が一番よく当たっている部分が白飛びしないように、あるいは、暗くなっている部分が血色悪く沈まないようかなり気を使ってカメラの設定を決める必要があります。

 また、相手あってのものですから、ポーズの指定やコミュニケーションなどに応じた「撮影のテンポ」もあります。ここで設定を毎回選び直さないといけないのは大変です。このあたりは、一眼レフカメラなどのダイヤルなどを使った操作系に、一日の長があります

 P40 Proの「プロモード」だと、カメラ慣れした人にも馴染みのある「ISO/SS/EV」など自在に設定して撮影することが可能です。ただ、スリープ復帰時やアプリを切り替えた場合などに、決めていた設定が消えてしまうことがありました。結局毎回確認する手間、直す手間がかかるかぶん、あまりスムーズとは言えないです。

照明にはGodox LC500R RGB LEDライトスティックを使用。

編集長

私も写真撮影を傍らで微力ながら手伝ったのですが、さすが本職、相当な労力と撮影枚数をこなしているものの、表には出ない部分なので、ここで『スゴイぞ』と言っておきます。厳選した上で、さらに現像して作品として仕上げていきます。

RAW現像のポテンシャル

 iPhoneもP40 Proも、標準のカメラアプリでRAW形式での撮影に対応しています。RAW形式で残しておくと、「現像」と呼ばれる編集作業で、写真の色や濃淡といった表現を調整可能になります。(調整はJPEG/HEIFなどでも可能ですが、RAW形式のほうが自由度が高くなります。その分1枚あたりの容量は増えます)

 特にiPhoneは「Apple ProRAW」という形式に新しく対応し、こちらでの仕上がりが気になるところ。「Apple ProRAW」で撮影したiPhoneの写真は写真.app(Photos)で、P40 Proの写真はAdobe Lightroomを使って現像してみました。

 ざっくり触った印象ですが、P40 ProのRAWのほうがしっかり現像に耐えるな……という印象。iPhoneのRAWを同じ印象に仕上げようとすると、写真の明るい部分が滲み、本来グラデーションする部分から色が浮き出てしまいます。色も全体的にぺたっとした印象に。このあたりは、センサーサイズの大きさの違いによる影響が大きそうです。なお、Apple ProRAWはDNGとして記録されるのでLightroomでも編集可能で、少し挙動も変わりますが、現像の限界が低いという印象は変わりませんでした。

iPhoneにてApple ProRAWで撮影・編集した写真。木の影の部分に滲みが発生している。もう少し自然な色合いにしたいけど、これ以上さわると紫の色付きが強くなり、目立ってしまう。

同じタイミングのP40 Proで撮影した写真。写真全体で破綻なく仕上げられる。

 P40 ProのRAWも完全に満足いくものではなく、RYYBという特殊なセンサー配列のせいか、読み込んだ直後からLightroomの「色かぶり補正」というパラメーターが右端に振り切れてしまっています。また、スマートフォンカメラの宿命ですが、かなり周辺光量落ちがひどく、レンズ補正を適用しても改善しません。

 特に太陽光下で撮影した写真では、どうしても色が緑っぽくなり、小さいサイズで見ると薄い円が見えるレベルで光量落ちを確認できます。完全に補正するには工夫が必要です。

 とはいえ、P40 Proは1世代前の一眼レフカメラと同等くらいにはしっかり写真を仕上げることができるな……というのが筆者の感想。この画質、このポテンシャルがポケットに入るのはすごいですね。

P40 Proの光量落ちと色かぶりの顕著な例

ポートレートモード(擬似ボケ)について

 iPhoneに新たにLiDARセンサーが搭載され、いままで「被写体とボケとの境界線の処理が弱い」と言われていたポートレートモードもだいぶ改善しました。Huawei P40 Proにも同じくToFによる深度解析によるポートレート機能が備わっています。

 両機種とも使い勝手は「悪くない」という印象。ボケ量も撮影後調整可能です。ただ、両機種ともRAW形式での撮影に対応しないのは残念。とくにiPhoneのApple ProRAWは、通常のRAWと異なりハードウェアから現像ソフトまで開発した強みから、スマート HDR/Deep Fusion/ナイトモードといった様々な撮影機能と併用できることが謳われていたので、そこから溢れているのは残念です。

 以下のツイートに使った2枚はポートレートモードにて撮影しています。P40 Proでポートレートモードを使うと、肌色が余分に赤くなるのは少し気になりました。

総評: 100%満足するレベルではないが、かなり健闘

 いろいろ辛口で書きましたが、両機種撮影時に「おおっ」と言ったのは嘘ではなく、いい写真が撮れている高揚感をもって撮影できました。楽しく撮影できることがカメラの一番大切な部分です。

 やはり小さいレンズとセンサーから出てきた写真ですから、両機種工夫は見えつつまだ不満点はありますが、この画質がスマートフォンと一体である手軽さに代えられるものはありません。両メーカーの更なる開発に写真の新しい未来を期待したいです。

iPhone 12 Pro Max 満足度 ★★☆☆☆

  1. 写真が明るくなりすぎ、白飛びしやすい。
  2. スマホ程度の小さい画面サイズならいいけど、iPad・ノートパソコン以上の大きい画面で見ると不満な画質。特に感度ノイズ処理には大きな改善の余地がありそうです。
  3. Apple ProRAWがまだまだいまいち。編集ソフトである写真.appも重い・不安定。

HUAWEI P40 Pro 5G 満足度 ★★★★☆

  1. ほかのモニターで見ると写真の色が薄く見える。
  2. 5xはいらないので2xのレンズが欲しい(これ何に使うの?)
  3. 1世代前の一眼レフカメラと同じくらいの写真作りができそう。弱点はあるが全体的に満足です。
らいち

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