ASUSより携帯PC「ROG Ally」を一定期間お借りしたのでレビューします。
本機は7型FHD液晶を搭載した携帯ゲーミングPCです。重量は約608gとこの手の端末にしてはかなり軽量で、携帯性も高いです。画面はタッチパネル。
白基調のデザイン。表面はシボ加工のようなサラサラとした質感で比較的良好。背面に給気口、上部に排気口を備えます。
携帯ゲーミングPCの中には端末の上部と底部両方に端子を備えるものがありますが、本機は上部のみ。
インターフェースは3.5mmイヤホンジャック、microSDカードスロット、ROG XG Mobile端子、USB 3.2 Type-C。その横には音量ボタンが並びます。本機の性能を活かして画面出力して利用することも可能です。
なおmicroSDリーダーは高温での利用が続くと不具合が出るなどの報告もあり、アップデートでの改善がなされる見通しではあるものの、注意が必要です。また、ROG XG Mobile端子の純正eGPU接続を想定しており、ThunderboltやUSB4による社外製eGPUを想定していない点も弱みです。
指紋認証は上部の電源ボタンと兼用。
ベンチマークスコア的にはモバイルPCとしては極めて高い数値を叩き出します。いずれもTurboモードTDP25W(非給電・内蔵電池のみ)で計測。 AMD Ryzen Z1 Extremeとほぼ同一のRyzen 7 7840Uを搭載したAOKZOE A1 Proと性能は互角。
ROG Ally Ryzen Z1 Extreme |
AOKZOE A1 Pro Ryzen 7 7840U |
ONEXPLAYER2 Ryzen 7 6800U |
AYANEO Air STANDARD Ryzen 5 5560U |
CHUWI MiniBook X Celeron N5100 |
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3DMark TimeSpy | 2944 | 3009 | 2699 | 952 | 346 |
3DMark Wildlife | 14118 | 15436 | 14956 | 4829 | 2390 |
VRMark v1.3 Orange Room |
3273 平均71.35fps |
3346 平均72.93fps |
未計測 | 1258 平均27.42fps |
489 平均10.66fps |
VRMark v1.3 Cyan Room |
2560 平均55.80fps |
2634 平均57.42fps |
未計測 | 826 平均18.00fps |
328 平均7.15fps |
VRMark v1.3 Blue Room |
714 平均15.56fps |
732 平均15.97fps |
未計測 | 201 平均4.37fps |
70 平均1.52fps |
PCMark10 | 5957 | 4854 | 5219 | 4757 | 2371 |
Cinebench R23 マルチコア |
12705 | 12779 | 10948 | 4491 | 1854 |
ドラクエX 最高/全画面/FHD |
11891 | 7909 | 9582 | 5876 | 3272 |
FF XV ver1.3 標準/全画面/FHD |
3542 普通 |
3599 普通 |
3531 普通 |
1283 動作困難 |
544 動作困難 |
シーケンシャルリードは4306MB/s、シーケンシャルライトは1832MB/sとストレージの読み書きも高速です。
左スティックでスクロール、右スティックでマウスポインターにてWindows PCとしての基本的な操作も可能。たとえばAYANEO Air Standardでもこうした仕組みはあるのですが、反応はいまひとつ緩慢な印象。ROG Allyではスティックの品質の高さと性能、120Hz液晶により、スクロールもマウスポインターの追随も非常に滑らか。ゲームのみならず一段上の高い操作感を得られます。極上。
このフォームファクタでは、機体の初期設定やゲームインストールには難儀するかもしれませんが、Bluetooth接続によりマウスやキーボードを使うことも可能なので、これらを接続して快適に初期設定を終えた後に、持ち出して利用するというスタイルが最も良いでしょう。
なおBIOSアップデートには充電器が必要となるので、アップデートがある場合は予め自宅で行ってから持ち出すのが肝要です。
「Armoury Crate」から各種設定が可能。キーマッピングやスティックの反応閾値、振動調整等を細かく設定可能。さらにランチャー「Game Library」からSteamやEA Playなど各ゲームプラットフォームを横断してタイトル表示し、好きなゲームを簡単に起動。ゲーム中等にコマンドセンターを呼び出すことでTDP制御や輝度調節も適宜できます。
ゲーム中、背面ボタン+Aボタンを押下するとスクリーンショットを撮影することができます。
撮影した画像は、Armoury Crateボタン(画面のすぐ右側にある2個のキーの下)を押して、メディアギャラリー内から確認や共有が可能。実際のファイルの保存先はマイビデオのキャプチャフォルダ内です。AYANEOにもこういうボタン割り当てでのスクショ撮影とギャラリー機能がありますけど、やっぱりあると便利ですよね。キーボードのない携帯ゲーミングPCとなると尚更です。
当初、Steam側のBig Pictureモードから起動しているのに、各タイトルはゲームパッドを認識しない事象がありましたが、これはコマンドセンターボタン(画面のすぐ左側にある2個のキーの下)を押し、コントロールモードを「デスクトップ」から「ゲームパッド」に切り替えることで解消できました。
Strayはグラフィック設定を各種「高」でFHD時、フレームレートは30台。低でHDでは50弱~70台を推移します。Forza Horizon 5もHDで80程度。より軽いタイトルではさらなる高リフレッシュレートも狙えます。
重たいタイトルであるサイバーパンク2077は、ASUSが出している数字によれば、最低fpsが45、最高fpsが65。実際に低画質設定レイトレーシングなしでHD解像度で遊んでみましたが、近い数字ではあったもの、40fpsを切る場面も散見されました。これは筐体の発熱状況や、TDPの差異(本記事では一般的利用を想定し最大TDP25WのTurboで運用、急速充電に接続時のみTDP最大値30W)も影響していると思います。
BattleField2042では、最大64人のAI戦(ブレークスルー ソロ)にて検証。重たい作品として有名ですが、発売後しばらくの更新でいくらか軽量化も進んでいます。流石にFHD高設定では厳しいですが、低画質設定でHD解像度にて50台後半から70ちょい。接敵した状況でも快適に動作しました。BF伝統の戦車・航空機も含めた最大128人の対人戦(コンクエスト)での拠点攻防における多数の敵味方が入り乱れる激戦ではさらなる低下は予想されるものの、良好な数値だと思います。
操作もコントローラーに最適化されているので、キーマウのPCユーザーでも機種転換は容易。ただし、ささやかなAimアシストがあるとはいえ個人的には対人戦は厳しいと感じたので、戦闘車両の操縦や工兵、支援に徹するか、そもそもAI戦を主軸に遊ぶのが良いでしょう。本作は未所持武器装備の解禁には、その武器での殺傷回数の基準をこなす必要があるので、出先でAI戦で暇を潰しながら武器装備を解禁していき、きたるべきデスクトップPCでの対人戦に臨むというのが遊び方として非常に適合していると思います。
スピーカーはDolby Atmosで臨場感、立体感に優れています。外出中の利用を考えるとあまり使う機会はないかもしれませんが、寝る前にプレイする時には使えそうです。外出中に重宝するのがイヤホンジャック。ノートPCやUMPCなら今どき無線イヤホンで十分ですが、ゲームをするなら話は別。敵の発砲音が遅れるような環境では話になりません。遅延なく有線イヤホンで没頭しましょう。
電池持ちはTurboモードTDP25Wで運用して、1時間~持ってもせいぜい1時間半。サイバーパンクをプレイすると56分で90%減少しました。重たい大作ゲームでは1時間程度で限界が来ると考えておきましょう。通勤時間が長いなど外での利用時間の長い人は、モバイルバッテリーを忍ばせておく必要がありそうです。
急速充電のおかげで公称1時間36分で満充電。急速充電は通常、一直線で駆け上がるのではなく、途中から電池を労るようその充電速度を緩めますので、実際は1時間もすれば8割以上の充電は完了します。プレイ中でも付属急速充電器で充電は可能ですので、自宅で利用するという人には、こうした電池消費が早い問題は問題とならないかもしれません。
ASUSの携帯ゲーミングPC初号機としては良くできた機種で、120Hz駆動画面やこの高性能ぶりは流石。現時点で市場に出ている携帯ゲーミングPCの中では最も高性能で高駆動だけあって、いま買うなら選択候補最筆頭です。
しかしながら電池持ちは課題で、自分の利用状況をもとに、問題にならないのか、モバイルバッテリー等で対策する必要があるのかを見極めた上で検討するのが良いでしょう。本機の系譜はこのまま携帯性重視で薄型軽量を追究しつつ、大容量電池の8型モデルなんかも投入してくると、バランスのとれた魅力的な製品群として愛されていくのではないでしょうか。
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