CHUWI(ツーウェイ)より、Surfaceスタイルの12.96インチタブレットPC「CHUWI Hi10 Max N150」を提供していただきましたのでレビューします。
2in1のPCといえば、その代表例がMicrosoft Surfaceシリーズ。でも、価格が高いんですよね。現時点で最も安価なSurface Go 4に関しては、Intel N100と大きく変わらない性能のIntel N200や時代錯誤も甚だしい64GBのストレージを搭載しながら、価格は10万円弱からとなっており、流石にコスパ悪いです。
そこで今回レビューするSurface風中華タブ、Hi10 Max N150は、同じIntel N系統のチップを搭載しつつ、なんと5万円台という約半額の値付けを実現。
Surface Goは10.5インチですが、Hi10 Max N150は12.96インチなので、画面だけでいえば、13インチでほぼ同じ解像度のSurface Proがライバルとして土俵に立ってくるわけです。そうなると最安20万円vs5万円台。まさにプアマンズSurfaceとでも言うべき立ち位置に。
そんな爆安製品、本当にまともに使えるのか?詳しくレビューしていきます。
充電器が危険すぎる、封印しろ
早速レビューしていきましょう。まずは外箱から。「THE 段ボール」という感じの色合いですが、ノートPCじゃよくあることです。Lenovoとか。
本体の同梱品はこんな感じ。画像中央の紙は品質を保証するもの、その下のは適合証明書、Warranty Cardは保証書です。
CHUWI恒例のヤベーやつ、USB Type-Cの皮をかぶったACアダプターです。どこがヤバいか分かりますか?
正解はコレ。よく見ると12V3Aの36W出力にしか対応していません。この入力に対応していない機器を接続するとぶっ壊れかねません、危険です。ほぼアダプターを取り外さないであろうミニPCならともかく、ノートPCにもお構いなしにこれを採用するのは感心しません。仮に家族と共用している場合やうっかりで、この充電器でスマホなど充電してしまったら……と考えると、こいつは押し入れの奥のほうに封印していてもよいでしょう。他の形にすればよかったのに。
外観
さて、本体を見ていきましょう。本体には最初からスタンドを兼ねるカバーが付属しています。iPadの純正ケースのように強力なマグネットで本体にくっつける形で、さらにキーボード接続時に自立させるためのスタンドとあってか、結構しっかりした作りになっていると感じます。
タブレット本体の表面の質感は良好。ここがプラスチックだと一気に残念になるところですが、背面は指紋など目立たずひんやり冷たい金属の感触が伝わってきます。
本体寸法は幅287.4×高さ208.5×厚み9mm。比較的マイナーな機種ですがGalaxy Tab S9 FE+と比べるとこんな感じ。幅はほぼ同じ、3:2のディスプレイ分だけ高さがある感じですね。余談ですが、Galaxy Tab S9 FE+と4辺の曲率がほぼ完全に一致しているのがなんか気持ちいいですね。
本体を自立させるためには、マグネットでひっついているカバーの上部を折り曲げればOK。Nintendo Switchの逆ですね。ただし剥がす箇所に取っ手があるとかではなく、端っこに強引に手を入れるしかないので、いずれ端っこのほうがヘタりそうではあります。
キーボードの接続もラクラク。接点が磁石でくっつきます。また一部のキーボードにありがちな、奥側を少し持ち上げるように傾けることも同じく磁石によって行えるようになっています。
キーボードバックライトも備わるため、夜間や暗いところでの作業も行えます。バックライトの強さは電源遮断後は保持されない仕様となっていますが、そのおかげで「ちゃんと接続されたことが分かる」という副次的な恩恵もあります。
ライセンスなど
Hi10 Max N150はWindows 11 Homeを搭載。中華ミニPCやノートPCなどではよく、正規でないWindows 11 Proのボリュームライセンスを使用した製品が見受けられます。これは企業や法人向けの割安なライセンスであり、組織外での使用は規約上NGです。Windows 11 Homeにはこのボリュームライセンスがそもそも存在しないので安心して大丈夫です。
slmgr -dliコマンドで確認すると、ちゃんとOEM_DMチャンネルとの表記が。
背面にはちゃんと技適マーク等が記載されたシールが貼付されており、番号検索でしっかり出てきます。
CHUWIは昨年、2.4GHz/5GHzに対応するWi-Fiチップにおいて、5GHzの認証を受けないまま販売してしまい、総務省より行政指導を食らっていました。
しかしHi10 Max N150に記載されている番号で検索すると、「第2条第19号に規定する特定無線設備」と「第2条第19号の3に規定する特定無線設備」がヒット。これらはそれぞれ2.4GHz帯と5GHz帯の周波数帯域に対応します。
パフォーマンス
CPUは先述の通りIntel N150。激安PCに搭載されるローエンドCPUながらも、意外と使えるということで話題になったN100の後継機種に当たります。
N150はCPUの最大クロックが3.4GHzから3.6GHzに向上するなど、スペックシート上での進化はなかなかなものですが、Passmarkの平均スコアを参照するとN100がシングル1910点/マルチ5405点に対してN150がシングル1923点/マルチ5523点と、ほぼ誤差レベルとなっています。
さて、スコアを実測しようとCinebenchをダウンロードしたはいいものの、なぜか動きません。そもそもN150にCPU性能もGPU性能も求めるのは間違っているので、開き直って最低限のベンチマークのみ計測したのでご紹介します。
まずPassMark。CPUや2D/3Dグラフィック、それにメモリとディスクの性能を測定してくれるベンチマークです。電源設定を「最適なパフォーマンス」と「バランス」に設定した計測結果がこちら。
項目 | バランス | 最適なパフォーマンス |
---|---|---|
Passmark Rating | 1,510 | 1,498 |
CPU Mark(Multithread Rating) | 4,350 | 3,609 |
Single Thread (Single Thread Rating) |
1,771 | 1,649 |
2D Graphics Mark | 382 | 365 |
3D Graphics Mark | 1,006 | 1,006 |
Memory Mark | 1,552 | 1,818 |
Disk Mark | 11,320 | 15,893 |
1度目と2度目の計測にはある程度間をおいていたものの、熱ダレでも起こしてしまったのか「最適なパフォーマンス」設定のほうが総合的なパフォーマンスが低くなってしまいました。放熱や電力に余裕のあるミニPCによって平均が引き上げられた「Intel N150」のCPUマークの平均に比べていずれも平均を下回る結果ですが、形状による制約や求められる用途を考えれば及第点といった形でしょう。
ストレージは512GBを搭載。そこいらのビジネス用PCよりも多いのは素晴らしいです。ストレージ性能測定の代表的なソフトウェアであるCrystalDiskMarkのスコアはこの通り。ノートPCとしては十分に高速であり全く問題ないでしょう。
最後にスピードテストです。今回はルーターのすぐそばで測定しました。結果はご覧の通り。
参考までに、ほぼ同じ場所で測定したiPad Pro(M1)と、有線接続のPCでの結果もお見せします。
Wi-Fi6を謳うわりに遅いというのが正直な感想ですが、このレベルなら特に困ることはなさそうですね。
利便性
本機はわりとディスプレイに力を入れているようで、12.96インチとタブレットとしては大柄、でもノートパソコンとしては普通レベルな画面で2880×1920という解像度を採用。1インチ当たりにどれだけの画素があるかを表すppiは267で、これは264ppiのiPad Proとほぼ横並び。可搬性を求める小型タブレットとはそういった棲み分けを行っているのでしょう。
実際に近づいて見てみても、粗さを感じさせることは全くありません。若干の光漏れが確認できますが、これは暗い部屋で画面明るさ最大、真っ黒を表示させないと分からないレベル。ちなみにASUSのサポート基準では正常の範囲内。
画面は光沢。目の色素によって好む色合いは変わるらしいですが、少なくとも日本人にとって気になる感じの色温度ではありません。結構いい感じです。なお筆者は最初から貼付されていたフィルムに気泡が入っていたため、非光沢のフィルムを購入し取り付けたのですが、さらに気泡とゴミが入ってしまう結果に。
本体左側面のUSB Type-Cポートは映像出力(DP Altモード)に対応しており、ケーブル1本でモバイルモニターへの電源供給と映像出力を行えます。もちろんその逆も対応しており、対応するモニターやUSBドックからタブレットに給電しつつ、映像を出力することも可能。4Kモニターへの出力も確認できます。
LenovoのUSBドック(40AS)で確認したところ、しっかり給電も映像転送も行えていました。先述したように、専用の充電器が12V3A固定という謎な仕様となっているため、対応する充電器がかなり少ないという問題がありましたが、今回のドックでは充電もできます。えらい。

出典:Lenovo
余談ですが、筆者宅にある充電器で本機を充電できるか確認した結果がこちらになります。テスターを持ち合わせていないので検証できず、詳細な条件は分かりかねますが、ご参考までに。
Anker Nano II 65W | × |
---|---|
Anker PowerPort III 3-Port 65W Pod | × |
Anker 317 Charger (100W) | △(一瞬だけ繋がらなくなることがある) |
Lenovo ThinkPad USB-C ドック 2 – Type 40AS (PCへの給電は最大60W) |
〇 |
スタイラスペンは「HiPen H7」がオプションで選択可能。可もなく不可もなくといった感じで、普通に使えます。PCとペンはともにWindowsのスタイラスペン規格であるMPP(Microsoft Pen Protocol)に対応しているため、HiPen H7をSurfaceで使ったり、逆にSurfaceなどのペンを本機に使うこともできます。
筆圧検知は1024段階で、今ごろのスタイラスペンとしてはしょぼめではありますが、ノートを取るぐらいなら全くもって問題ありません。
ペンそのものは単6電池で駆動する方式で、最大180日間動作するとのこと。個人的にはType-C端子で充電するタイプよりかはこちらのほうが手間が少なくて好きですが、電池がペンの上部にあるために重心が相当上のほうに寄ってしまっているのが気になります。シャーペンとかであればたいてい重心はペン先側にあるものですが、それが真逆になっているわけですね。もし気になるのであればMPP規格のペンを他から購入しましょう。
スピーカーはまさに価格相応といった仕上がりで、露骨なコストカットを感じます。この価格帯を実現するにはやむなしといったところでしょうが、まず何よりもパワーが不足しているうえに低音域は弱く、全体的に表現力が乏しくなっています。
一応ステレオスピーカーではあり、多少の定位感を感じることができます。しかし本機はタブレットということもあり画面を回転させて使うことができますが、その状態でもスピーカーの鳴り方は連動しません。つまり、カメラのある辺を下に来るようにして使うとLRが逆転して聞こえるということです。
とはいえ、これはそこまで問題ないかもしれません。スピーカーは左右に1つずつのみらしく、縦持ちにすると左側か右側からかしか聞こえません。この状態でもお構いなしにステレオ再生されるのですが、上下のどちらから本来左右から聞こえる音が鳴っているというのは案外気になりませんでした。
そして横持ちでわざわざカメラを下にして使うユーザーがどれだけいる?という話になるので、一部のシチュエーションでスピーカーの左右反転を強いられる構造の「CHUWI MiniBook X」よりは断然マシです。

CHUWI MiniBook X。天板を回転させて自立させるテントモードを備えるが、この状態でもLRは反転しないのでHi10 Maxよりは問題になる
タブレットPCとしては大柄な13インチで、しかも冷却ファンも搭載。そんな製品に軽さを求めるのは筋違いですが、背面のスタンド用カバーを外せば意外と軽め。一人暮らしを始めたばかりでスケールが無くて実測値を紹介できないのが悔やまれますが、持つだけなら片手でもなんとかなる感じです。
総評
全体的にコストを抑えるだけ抑えながら、必要な箇所にしっかり拘って利便性を確保しているといった印象を受けました。
CHUWIの10インチでN150を採用、本機と画面サイズ以外ほぼ同スペックな「Hi10 X1 N150」と比較して、なぜこの製品を選ぶのか?という話になったときに一番にやり玉にあがるのがディスプレイだと思います。
そのディスプレイ関連の仕様がかなりしっかりしていたこと、粗さを全く感じさせない高精細な液晶、そしてノートを取りやすい大画面に、ちゃんとした仕様のスタイラスペンに対応。
よって、Hi10 Maxをオススメできるのは大画面かつペン対応を活かせる使い方、そうノート作成をタブレットで行いたいユーザーだと考えます。
これは筆者の持論ですが、「ノートを取るため」のタブレットは大きければ大きいほど良いですよ。たいてい授業資料はPDFなどでも配られるわけですが、それらを交互に眺めつつ書くにあたって、11インチでは狭すぎます。アプリを行ったり来たりするのは面倒ですし、画面分割をしようとした日にはノートにほとんど書き込めません。
そういう意味で、13インチの本機はかなりピッタリ。資料を見ながら書き写すのに十分なサイズを備えながら、学生でも試しやすい価格。
「ノートを取るならiPad」だとはよく聞きますが、筆者としては案外Windows端末もアリだと考えています。これまで2in1PC(HP Spectre)→Androidタブレット(Xiaomi Pad 5)→iPad Proとデバイスを変えつつOneNoteを使ってきた身からすると、OneNoteはWindowsが本家本元ということもあってかかなり機能が豊富であり、PCかスタイラスペンがしっかりしていれば結構便利に使えます。ただそこの品質がまちまちなこと、設定の複雑さを鑑みると、iPadをおススメしておいたほうが無難なのです。
しかしHi10 Max、何がうれしいかといえばその価格。本体5万円台という安さのみならず、ペン付きで5万5900円、キーボード+ペンのバンドルでも5万8900円と5万円台に収まっているというのは強烈な魅力です。
iPad無印11世代の学割適用価格が5万4800円、Apple Pencil(USB-C)が1万1800円、締めて学生向けで6万6600円。iPadにはゲームができるという利点はありますが、先述した通り画面のデカさは作業効率に大きな影響を与えます。
「快適にノートを取りたい学生」や「Windowsでしかできないことをどこでもやりたい中上級者」などにおススメできる機種だと思います。