受け継ぐROG魂?
ASUS Japanより一定期間Zenfone 12 Ultraをお借りできたのでレビューします。
本機はASUSが2025年2月にグローバル市場で発表したハイエンドスマートフォンとなります。日本国内での発売日は2025年5月30日です。
Zenfone 12 Ultraの筐体は、かなり高級感があります。アルミニウムフレームを採用しており、背面のマット仕上げのガラス背面との一体感が優れています。
背面ガラスは質感に問題はなく、すりガラス調。特に筆者がお借りした緑色は、男女兼用で大人に似合いそうな、艶やかで上品なカラー。イチオシです。
側面は電源ボタンと音量キーのオーソドックスな構成。
eSIMのほか、USB Type-Cを搭載。充電端子は中央ではなく左型に寄っています。ROG Phone 9と筐体を共通化することでコストダウンを図っています。3.5mmイヤホンジャックも搭載します。
寸法は高さ163.8mm、幅77mm、厚み8.9mm、質量は220gとかなり大型。大きいので片手操作は無理。単に保持するにおいては適度な厚みがあって十分です。電池容量は5500mAh。
4000mAh程度のZenfone 8~10辺りと比べて、Zenfone 11 Ultraは小型さを失ったのと引き換えに、電池容量が大幅に増えたという恩恵がありました。しかしZenfone 12 Ultraは電池容量は変わらず5500mAh。重量は4g程度軽くなった程度。前機種からの変化は小幅です。

左:Zenfone 12 Ultra, 5500mAh電池 8.9mm, 220g 右:REDMAGIC 10 Air 6000mAh, 厚さ7.85mm, 205g
最新のハイエンドスマートフォンはシリコンカーボン素材でエネルギー高密度な電池を積極的に採用するなど、大容量電池と軽量薄型筐体を実現するモデルも出てきているので、少し見劣りする部分があります。では、この機種の魅力は一体どこにあるのでしょうか。
それはROG譲りのゲーミングのポテンシャルでしょう。よくわからない端子配置も「充電中のケーブルが両手横持ち時に手の邪魔をしにくい」という恩恵があるので、充電しながらゲームを楽しめます。
Zenfone 12 Ultraは、SoCにSnapdragon 8 Elite(3nmプロセス、Adreno 830 GPU)を採用しています。ゲーム性能は高く、鳴潮を快適にプレイ可能。原神も高画質でほぼ60fps上限近くを推移。一時間近くゲームをプレイしたところで、背面温度はせいぜい40度台前半。ROGのようなL/Rトリガーや拡張性を望まないのであれば、Zenfone 12 Ultraでも快適なゲームプレイが行えて、妙味があるというわけです。

ROG譲りのゲーム制御で快適にプレイ可能。ただし後述の通り全機能がROGと同等ではない
- AnTuTu v10.4.9:279万9938点
- 3DMark Wild Life Unlimited Stress Test: Best 19449, lowest 17478, 89.9%
- 3DMark Steel Nomad: 1724, 12.77fps
- 3DMark Solar Bay: 7967, 30.30%
- Work 3.0 performance: 26051
- Geekbench 6 CPU: Single 3054, Multi 9560
- Geekbench 6 GPU: 20344
AnTuTuスコアもROG Phone 9無印とほとんど変わらず高得点。Androidスマートフォンの性能は、ゲームプレイにおいてカンストしつつあります。Android対応のゲームタイトルは、世の利用者の多くの端末に合わせて、120fpsまで開放されていないなど、画質面での制約があるのも一因です。なので、ROG Phone 9無印の外部冷却モジュール未装着状態でも、よほどヘビータイトルを長時間にわたってプレイするわけでもなければほぼ不満のない動作感を実現できています。
ただし完全にROG Phone 9同等というわけではなく、ROGの先端機能など一部機能はZenfone 12 Ultraでは利用できません。たとえばフレーム補間による疑似120fps機能などはZenfone 12 Ultraでは利用できません。このため、やはり最上のゲーム体験を求めるのであれば選ぶべきはROG Phoneです。
ディスプレイには、6.78インチのSamsung E6 LTPO AMOLEDパネルが搭載されています。解像度はFHD+(2400 × 1080ピクセル)です。ROG譲りで発色良く高輝度なので、日常利用からゲームの快適さにまで貢献します。
デュアルステレオスピーカーを搭載し、Dirac Virtuoに対応。音量も大きく、解像感の高い中高音域、厚みのある低音、存在感のある音の粒など、下支えする音圧の力強さを感じます。ただし低音はわずかにヴェールがあり、最大音量ではわずかに歪む感じもあります。音量はiPhone 16 Proの9割程度。Androidスマートフォンの中でも随一で、iPhone Pro/MaxやROG Phone 7とさえ比較しなければ最高峰に近い存在です。
バイブレーション・ハプティクスについては機敏に反応し、ハイエンドとしては十分ですが、全体に軽く振動が広がり、若干重厚感が物足りないと感じる部分もあります。
カメラは広角、超広角、望遠の三眼構成。設定から引き続き電源ボタン二度押しによるカメラ即時起動に対応します。
メインカメラはソニー製Lytia 700センサーを採用した5000万画素カメラを搭載し、6軸ジンバル光学式手ブレ補正(OIS)とf/1.9のレンズを備えます。
超広角カメラは1300万画素で画角は120度。色味は自然ですがダイナミックレンジは広くありません。望遠カメラは3200万画素で光学3倍望遠対応でとても便利で楽しいです。10倍近辺の画質はそれほどよくありませんが、Zenfone 10までの望遠を省いた機種では実用できなかった画角です。

1倍

0.7倍(超広角)

2倍

3倍(望遠)

10倍(望遠)

30倍(望遠)
飯撮りは得意ではありません。
Photo Vibeのリッチ&ウォームを適用して弄るといくらかマシにはできます。
以下夜景。左がオート、右が夜景。明示的に夜景モードに切り替える方が、明らかに色味やディテール、露出が良くなり、品質が上がります。手動で夜景モードを使いこなすのがおすすめ。
超広角や望遠ではあまり変わらず。そもそもメインと比べて光学的に不利すぎるので、オートでの夜景処理の発動閾値が低いためだと推定します。
やはり10倍は、夜景では尚更、作品としては厳しい感じですね。
OSにはAndroid 15をベースとしたZenUIを採用。大陸系のAndroidスキン・独自OSと比べれば、操作感やUIはAOSP寄りに近い操作感ですが、Zenfoneらしい独自機能が充実しているので、使いやすいと思います。
様々なAI機能が利用可能。かこって検索はもちろんのこと、音声通話をリアルタイムでテキスト化し翻訳してくれるAI通話翻訳やAI消しゴム、ピンボケ写真を補正できるAIピンボケ補正など。
このほかWebページの要約AIが利用可能。クラウドAIはそれなりに迅速ですが、プライバシーを重視したLlamaベースと思われるオンデバイスAIは事前に5GBほどのAIモデルのインストールが必要なので、自宅で事前にインストールしておく必要がある上に、生成から要約出力まで1分30秒程度かかったので、常用するのは全く現実的ではありません。まあPCでさえローカルでLlamaの精度なんてたかが知れているので、動かしたことのある人なら「そりゃそうだよね」程度のお遊び機能です。Gemma 3nで風向きが変わってきた部分もあるので、今後の進化に期待ではあります。
なので、基本的にはクラウドベースのAIを選択しましょう。生成から要約まで10秒もかからず、内容もわりとまともです。それほど内容の詳細まで気にならないWebサイトの簡単なチェックには、十分に選択肢になりえると思います。時短機能の一つとして覚えておいてもいいかもしれません。
インターフェースとして、USB Type-CポートはPD 65Wに対応。充電は20分で半分ほど。急速充電としては十分高速です。
生体認証は画面内指紋認証。顔による画面ロックの解錠にも対応するので、ロック解除は確実に行えると思います。
項目 | Zenfone 12 Ultra 16GB/512GB |
Zenfone 12 Ultra 12GB/256GB |
---|---|---|
プロセッサー | Qualcomm Snapdragon 8 Elite (オクタコア) | |
実行メモリ | 16GB LPDDR5X | 12GB LPDDR5X |
ストレージ | 512GB (UFS 4.0) | 256GB (UFS 4.0) |
画面 | 6.78インチ LTPO AMOLED 2400×1080 (フルHD+) 1-120Hz (ゲーム最大144Hz) Corning Gorilla Glass Victus 2 |
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アウトカメラ | 5000万画素 広角 (F1.9) 1300万画素 超広角 (F2.2) 3200万画素 望遠 (F2.4) |
|
インカメラ | 3200万画素 (F2.0) | |
バッテリー | 5500mAh デュアルバッテリー | |
充電 | 有線65W / ワイヤレス15W | |
サイズ | 163.8×77×8.9mm | |
重量 | 220g | |
防水・防塵 | IP65/IP68 | |
SIM | nanoSIM×2 / eSIM×1 | |
その他機能 | おサイフケータイ、指紋・顔認証 3.5mmイヤホンジャック |
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OS | Android 15 (ZenUI) | |
カラー | エボニーブラック、サクラホワイト、セージグリーン | |
価格 | 16万9800円 | 14万9800円 |
発売日 | 2025年5月30日 |
おサイフケータイ不要でIP54防滴防塵で十分であれば、明確に自分の必要な要素を吟味できる人はREDMAGIC 10 Airなどの方が価格含めて妙味があります。
おサイフケータイと防水防塵を重視するならZenfone 12 Ultraになるでしょう。オーディオビジュアルもZenfone 12 Ultraは優れています。Qi無線充電や望遠カメラもありますし、前面カメラにおいても、UDCではなく3200万画素RGBWのZenfone 12 Ultraの方が潰しが効くはずですので、買って後悔したくない全方位機種が欲しい人向け。