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dGPU搭載ミニPC ACEMAGIC TANK 03レビュー。型落ちかと思いきや、とんでもない化け物だった

 えっ、VRAM16GBもあるんですか?

 ACEMAGICより、ノブを備えたゲーミングミニPCである「ACEMAGIC M1A TANK 03」を提供していただきましたので、レビューしていきます。Core i9 12900HとRTX 4060あるいはモバイル版RTX3070を搭載しているという、ミニPCとしては比較的珍しいdGPUつきモデルです。

外観

 早速開封していきましょう。

 箱のフタを取り外すと、さっそくごついPC本体天面とご対面。PC本体にオレンジ要素はありませんが、箱のインナー部分がオレンジで縁取られてると、結構かっこよく見えますね。

 早速取り出します。まさにメタリックな正六面体!きっと重いんだろうと覚悟していましたが、意外とそうでもない。そして案外小さい。ぎりぎり片手で握れるようなサイズ感です。軽すぎて転落が不安になるようなレベルというわけではありません。これだけの性能とその性能を御しきれる装備をしていても、意外とこんなもんになるんですね。

 しかしその後、すぐに小ささの理由が分かってしまいました。それはACアダプターがついていること、そしてその圧倒的デカさ。優に本体幅を超えるサイズです。最大300Wを出すにはこれぐらい必要なのでしょう。

 なお、もともと付属している電源ケーブルは3ピンであり、大抵のコンセントには刺さらないのは注意。ただこれは普通に市販品を使いまわせばよいだけの話ではあります。

 デザインをよりしっかり見ていきましょう。まずは全体の質感から。本体のメインを占めるパーツの部分はプラスチックっぽい感じで、冷たくもありません。本体の側面はパネルとなっており、簡単に取り外せるようになっていますが、ここだけ金属を使っているのかなという感じです。

 ただ、筆者としては別にそこまで問題視しているものでもありません。というのも、背面は比較的複雑な造形のせいでプラスチック感が増してしまっていますが、プラスチックがそこまで悪目立ちしている感じではなく、塗装は結構頑張っている印象であるため、近くで見たらわかるかな?程度。それなりにシンプルな正面もあまり気になりません。

 次に本体正面。製品そのもののアイデンティティにもなっている動作モードを変更するためのノブがドドンと鎮座しています。このノブの質感はかなり良く、回し心地自体はしっかり抵抗感がありつつ、ある程度のところまで動かすと急に抵抗がなくなり、次のポイントまでカチッと移動してくれます。触って楽しく気分を上げてくれるいい品質です。

 一方筆者の個体が悪い可能性はありますが、ノブ表面に視認できるレベルの傷が無数にあったのは残念。ノブにまじまじ近づいて操作する人なんていませんが、品質についてケチは付けなくてはならないかもしれません。

 そしてその下には、正面にあると嬉しいSDカードスロットや3.5mmイヤホンジャックをはじめとする各種ポートが。

 ノブのデカさと対照的に、電源ボタンはかなり主張控えめ。しかも押せれば十分といったプラスチッキーな質感、さらにボタンの枠に対して気持ちナナメになっているというおまけ付き。電源ボタンはカッコつけた言い方をすればゲームの世界に没入するための第一歩でもあるわけなので、ここはもっとコストを掛けても良かったのではないか、とは思う点です。

 続いて背面。思っていたより各種インターフェースが多く、驚きました。USB 3.0以上のType-A端子が4つにHDMIが2基、DPが1つにLANが2つ。さらに背面にも3.5mmイヤホンジャックが。もはや普通のデスクトップと遜色ない品ぞろえです。

 左側面にはインテル入ってるのロゴとサポートセンターのQRコード。しかしカスタマーサポートにWhatsAppを要求するのは日本の実情に沿っていないですね……。

 右側面はデカデカとロゴと注意書きがあります。カスタマーサポートやCONTACT USのステッカーはそれなりにダサいですが、WARNINGの黄色背景に赤文字で注意を促すデザインのステッカーは、メカメカしい本機のデザインに良いアクセントになっている印象で好感が持てます。

 左右のパネルは工具いらずで簡単に着脱可能。左側にはメモリとファンが、右側にはM.2 SSDとWi-Fiチップが装着されています。メモリはコンパクトな形状のDDR5 SO-DIMMが2スロット。すでに16GBが2枚装着されています。M.2 SSDは1つ増設可能です。

 電源を付けると、もはや実家のような安心感すらあるゲーミングな光り方がお出迎え。しかし光るのはノブ周辺のみなため、派手さは控えめ。

起動

 OSにはWindows 11 Proを搭載。一部のミニPCで例のある「不正なライセンスを搭載している」という問題はProエディションで発生するので少し身構えていましたが、本機は問題ありませんでした。

 ACEMAGICはかつてアドウェア・不審なソフトウェアを搭載したモデルが出回っていた……、といった情報も市中に見受けられますが、筆者が眺めた限りだと特に不審な点は見つかりませんでした。

 CPUは先述の通りのIntel Core i9 12900Hを搭載。気持ち古めのモデルではありますが、そのおかげで以前まで世間を騒がせていた13/14世代の問題をスルー出来ます。高性能なPコアを6基、省電力性能に優れるEコアを8基、14コア20スレッドを搭載するモデルです。

 メモリはデフォルトで32GBと十分。32GBメモリ×2に換装し、最大64GBに対応します。一応SO-DIMMそのものは1枚当たり64GBのモデルもあるので、理論上は128GBに対応しそうなものではあります。

 グラフィックは内蔵のIntel Iris Xeと、モデルによってRTX 3070もしくはRTX 4060のモバイル版を搭載。筆者はRTX 3070でした。

 SSDはRaysonというメーカーのPCIe Gen 4、1TBモデルを搭載。お恥ずかしながらこのメーカーの名前を耳にしたことがありませんが、不安であるなら簡単に交換できるというのはポイント高いです。

 実測では4780MB/s程度を記録。PCIe Gen 4のSSDとして特段早いという印象はありませんが、これなら特に困ることはありません。

ベンチマーク

 それでは、ベンチマークからTANK M3Aの性能を紐解いていきます。まずはスマートフォンの性能測定でもおなじみGeekbench 6から。

 今回はせっかく動作モードを変更するノブがついているので、Geekbench 6に関してはこれらを切り替えた結果を紹介します。かなり分かりやすい仕組みになっていますが念のため紹介すると、ノブを回すことで順に「静音」「バランス」「パフォーマンス」モードに変更できます。もちろんノブの矢印の位置でも現在のモードは分かりますが、中央部がそれぞれ青/緑/赤に変わるという変化も。なおWindowsの電源プランの設定が変わるというわけではないようなので、その点は注意。

 Geekbench 6の結果は以下の表のとおり。

  シングル マルチ
静音 2313 8586
バランス 2368 10295
パフォーマンス 2319 10327

 ここは正直、最新出たばかりのミニPCに劣ってしまっています。Intel Core i9-12900Hが不満を感じるレベルで性能が低いということにはならないかと思いますが、ACEMAGICから新しく登場したF5Aが搭載するRyzen AI 9 HX 370はマルチで1.5倍程度のスコアを叩き出します。

 同じく、CPUベンチマークとして有名なCinebench 2024でもシングル103点、マルチ673点と、最新のCPUと比較すると控えめ。

 しかし、M1A TANK 03が本領を発揮するのはGPU分野。RTX 3070がブン回るGPUテストやゲームのベンチマークになると、途端に元気になり始めます。

 3DMARKのSteel Nomadでは2504を記録。i9-12900HとRTX 3070を搭載した端末の中ではおおよそ平均あたりという結果になりました。

 ミニPCの検証で主に用いられているであろうSteel Nomad Lightも併せて検証します。このスコアとSteel Nomadを混合してはいけません(一敗)。結果は1万1082点。平均スコア3201点のRyzen AI 9 HX 370+Radeon 890Mの構成をたやすく蹴散らしています。

 世間をいろいろとにぎわせていたモンハンワイルズも、かなり時代遅れ感が否めませんが検証してみました。ちなみに筆者のTANK M3Aのレビューが遅れたのは、モンハンワイルズ発売による急激な需要の高まりで国内在庫が枯渇し、レビュー機種がなかなか届かなかったから、という裏話があったりします。

 さて、グラフィック設定を「高」「中」の2段階で計測してみました。結果はこちら。「高」では平均fpsはギリギリ60に達しませんでした。しかもこれはfpsが高く出る料理シーンやカットシーンを含めた値であり、プレイシーンでは良くて60前半、悪くて40を割り込む場面があったため、残念ながら高設定ではプレイは厳しそう。なお、「中」設定でもところどころ50fps程度になっていました。これはモンハン恐るべし……。

 と思いきや、超解像をNVIDIA DLSSではなくAMD FSRにすることで、フレーム生成が利用可能に。快適なプレイと安定したリフレッシュレートが両立できます。DLSSではRTX 40シリーズ以上を要求してきますが、FSR 2ではハードウェアアクセラレーションを有効にしてさえいればOK。以下の記録は、それぞれ「高」と「中」からAMD FSR 2によるフレーム生成を有効しただけのものです。

 これであればフレーム生成による画質の低下はともかく、ある程度しっかり遊べるようになりそうです。

このGPU、なんか変……?

 ここまで検証してきて、とある点が気になりました。それは側面に「GPUドライバーはサードパーティのものを使うな」と書かれている点です。

 GPUドライバーなど、PCメーカーであるACEMAGICがどうこう言えるものでは無くない?と疑問に思い広報に質問してみたところ、なんと驚愕の答えが。

 それは、「ゲーム性能やAI性能の向上のため、RTX 3070のVRAMを16GBに換装・改造している」とのこと。……何を言ってるの???????????

 言われるまで全く気付きませんでした。正直どのグラボが何GBぐらいVRAMを載せているか、というのは朧げにしか覚えていなかったのもあり、完全にスルーしてしまっていました。

 いくら性能が良くなるからって魔改造グラボを乗っけるPCメーカーがいまだかつて存在したでしょうか。いいや存在しない。なお、RTX 40世代は「RTX 4090以外メモリ換装技術が開発されていないからやっていない」とのこと。つまり4060モデルは普通に8GB VRAMとなっています。

 このぶっ飛びすぎている魔改造によって多大なる恩恵を受けるものが存在します。それがVRAMドカ食いのAI。

AI性能

 記事の総評に入ろうとしていましたが予定変更、VRAMの量がものをいうAI性能の検証に入りましょう。LLMと画像生成AIを試してみましょう。

 LM Studioにて、OpenAIのgpt-oss-20bを動作させてみます。なお筆者はLLM自体はわりと触りますが、ローカルLLMはさほど詳しくないのでご承知おきください。

 結果はなんと35tok/secと、この価格じゃまるで出しえないような速度を実現。Ryzen AIシリーズのチップを搭載し、メモリ32GB以上を搭載することである程度性能の高いローカルLLMを動かすことのできるミニPCがここのところ急に増えていますが、最上位モデルで30万円はくだらないRyzen AI Max+ 395にある程度迫れるレベルの性能を実現しています。

 このPCの販売価格は15万円でした。15万円でgpt-oss-20bが35tok/sで動きます。しかもサイズを取らないミニPCで。おかしいよ……。

 ただし欠点が。それは「ある程度以上のサイズのLLMを動かすには普通に力不足」という点。Ryzen AI Max+はMacBookと同様にRAMとVRAMが共用だからこそ、RAMを128GBでも積めば強力なモデルも動作させることができますが、こちらはVRAMを換装する必要があり、それは本来ムリ(なぜかやってるPCがここにいますが)。なので快適に動かせる天井は結構低めになります。

 他にも画像生成AIと動画生成AIについても試してみました。文字を正確に描写できることで有名となったQwen-Imageも動画生成のWan 2.2もきちんと動作します。しかしそれなりに時間はかかるので、ここはやはり高級GPUとはどうしても差がつく部分にはなります。

 そのほかにもSDXLベースのモデルも、当然ながらきちんと動作します。筆者の比較対象がSDXLすらComfyUIじゃないと動かない化石GPUなので具体的にどう、とは言えませんが、結構素早く生成してくれる印象です。

 AIの他にも、VRChatもVRAM容量を要求しがちなので、真価を発揮する用途かもしれません。

総評

 ミニPCでは意外と珍しいdGPU搭載モデル、それにノブを付けた、ただそれだけだと思っていた時期が私にもありました。なんなら意外と静音性も高くノブを回すメリットがあまり感じられないだけに、せっかくの良さが活かせていないざんねんなPCかと思っていました。

 とんでもない化け物でした。Amazonで売っていたころは20万円ほど、公式サイトでは筆者の記憶では14~17万円というミニPCとしては安くない価格ながら、16GB VRAMを乗っけた唯一無二性。むしろ他のパーツのことを考えたらコスパが良いと言える逸品なまでありました。

 しかし、ここで非常に残念なお知らせです。現在M1A TANK 03はRTX 3070/RTX 4060モデルともに売り切れとなっていますが、ACEMAGIC広報担当に確認したところRTX 3070搭載モデルは再販の望みが薄いとのこと。理由は単純明快、GPUが生産終了してるから。

 しかしここで終わらないのがACEMAGIC。その代わりと言っては何ですがこの小さな筐体にデスクトップ版のグラボを詰め込んでいるというのです。これも結構すごいことだと思います、思うんですがVRAM換装のインパクトには負けてしまいます。

 正直なところ、ACEMAGICがここまで面白いことをやっているとは思っていませんでした。今後もオタクにバカ受けするような製品を出してほしいところ。ACEMAGIC先生の新作にご期待ください!

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