
BYDオーナーの方は、良いお茶でも淹れてからお読みください。
すまほん!!で自動車レビューが出てくるのはコレで2回目。テスラが「iPhoneに車輪をくっつけた」と形容され、GoogleのOSが入った車がそこらじゅうを走っています。これはもはやすまほん!!の守備範囲と言っても差し支えないでしょう。
今回は沖縄旅行のレンタカーとして、BYD Dolphin ロングレンジを2泊3日で借りてきました。結論から言うと、走りは文句なし。ソフトのほうは、「伸びしろを大切に育てていらっしゃる」印象でした。そういう車です。
はじめに
5月下旬のオフシーズン、筆者は「どこかにマイル」を利用しようとしていました。JALが提供する、提示された4択の行き先のうちの1か所への往復航空券がもらえる制度です。

通常価格は7000マイルであるものの、「JAL モバイル」や「JAL モバイル powered by ahamo」を契約すると、1500マイルで利用できるクーポンが特典として年に1度貰えます。
筆者は4択の中に実家最寄りの空港を出すまで再抽選を行い、あわよくばそれで実家へ帰る、外れれば普通に旅行するというダイナミック帰省を狙っていました。普通ならウン万円かかるところ、1500マイルなら安いもんです。
結果選ばれたのが、沖縄でした。沖縄といえばレンタカー王国。そもそも車が無いと話にならないので、折角ならと借りたのがBYD Dolphinでした。
そんなこんなでレビュー本編に移りますが、ここでレビューの根幹にかかわるお断りをさせていただきますと、まず旅行した時期の沖縄は梅雨真っ只中であり、外装はほとんど撮影できませんでした。また走行フィールに関しても路面状態が悪かったため、走行面でも参考になりません。
じゃあ何をレビューするんだい?という話ですが、今回のレビューでは主にインフォテイメントシステム、コックピット回りをお話しさせていただければと思います。
外装は個性的、でも中身の実用性は流石
まずは簡単に外観と装備だけでも。
……美醜は個人の感性によりますが、フロントは実に個性的なお顔立ちです。駐車場で見失う心配だけはありませんね。

前面左右の近接センサーは大抵こうなのでともかくして、車体前面のカメラを隠そうともしない、飾らない設計思想には感心します。レビューのために眺めていたら、だんだん愛嬌すら感じられてきました。この車、車名の通りイルカをイメージしているそうですが、どのあたりがイルカなのかは、見る側の想像力に委ねられています。

一方で、フロント以外はそれほど悪くもない印象を受けますね。複雑なブレーキランプの模様には感心します。

BYDの社名の由来であるBuild Your Dreamsをこうデカデカと掲げるあたり、夢に対して大変正直なメーカーです。奥ゆかしさとはまた別の美学をお持ちなのでしょう。最新車種では見かけなくなりましたが。

内装
器量より気立て、と申します。それでは内面の話をしていきましょうか。インテリア自体はそこそこ高評価です。この価格帯にしては十分質感も良いですし、ちゃんとドライブセレクターは物理で残しています。そして各所のデザインは遊び心があります。

さらに上位グレードにはパノラマサンルーフを搭載。後席にゆったり座り、沖縄北部の景観を堪能するにはピッタリですが、あいにく筆者には運転してくれる人はいませんので、無用の長物。晴れていれば運転者の視界も明るくなって気分も楽し気になったかもしれませんが、ず~っと曇りなのでそれすらありませんでした。梅雨の沖縄、恐るべし。

BYD Dolphinは思っていたより大きく、車内空間が広いのもGood。筆者は勝手に、ヤリスやアクア程度のサイズなのかな?と思っていましたが、それらよりは一回りだけ大きく、かといってトヨタカローラや日産リーフよりは短いという絶妙なバランスです。
リーフと比較すると、全長は20cm以上短いものの、車内空間の広さに直結するホイールベースなどそれ以外の数値はほぼ同等という寸法となっています。これはつまり、車内は広く使えるがサイズはそれなりに小さいので運転しやすい、という魅力を持つことに。見た目の華やかさより実用性を取ったパッケージングであることが読み取れます。そう考えると、あの個性的なフロントにも意味が……あるのでしょうか。
旅行あるあるだと思うのですが、安価なコンパクトカークラスで4~5人で旅行するのは狭くて非常に辛く、かといって広い上位クラスの車種を借りようとするとレンタル料が急激に跳ね上がります。そういう意味では、かなりありがたい存在かもしれません。
メーターとCID
次は運転者にとって大切なコックピットまわり。まず構成について簡単にご説明しておくと、中央のCID(センターインフォテイメントディスプレイ)は12.8インチとかなりデカい一方で、ハンドルの隙間から見えるデジタルメーターは5インチと小さめ。

警告灯なども含めたすべての情報を表示するメーターとしてはかなり小さいです。
メーターについてはバイザーすらなくステアリングへ取って付けたようなデザインになっている点はやはり賛否ありそうですし、シンプルな真四角の形状もライトテーマだと違和感が際立ちます。とはいえフルデジタルメーターとしては合理的な形状ではあるので、今後見慣れていくことになるのでしょうか。トヨタも日産も(ダークテーマオンリーとはいえ)長方形のメーターを採用しましたし。
デカいCIDのほうに話を戻しましょう。こちらもダッシュボードにデカい画面がドーンと浮かんでいるデザインですが、これに関してはもう見慣れました。

そしてBYDのCIDの大きな特徴が、「画面が電動で回転する」ということ。見た目のインパクトは凄いです。しかし画面が回転することにおける体験はさほど良くありません。詳しくは後述。
画面のフチ自体は4辺で統一されている、ということは特にありませんが、国産車に比べてベゼル幅は圧倒的に狭め。その分、四辺のベゼルがデカいメーターとの対比が目立つのですが……。
センターディスプレイ、触るたびに新しい発見がある
さてここからは、今回のレビューの根幹となるインフォテイメントシステムやコックピット関連の使い勝手についての評価です。ここから先はたいへん丁寧な「おほめの言葉」が続きます。BYDオーナーの方、お茶の準備はよろしいでしょうか。
日本で発売されているBYD車には、すべてDiLinkというシステムが搭載されていますが、このシステム、触るたびに新しい発見があり、まったく飽きさせてくれません。EV、デカい画面、一風変わったインテリアで先進性をアピールしていますが、このシステムだけは、ユーザーを退屈させない工夫に満ちすぎています。
まずこのシステム、触っていると誰しも「コレAndroidベースだな……」となるほど正直な作りです。素性を隠さないのは立派な姿勢ですが、素のまま表に出すのであれば、せめて身支度くらいは整えてあげてもよかったのではないでしょうか。
画面分割&回転という意欲作、安全性は?
例えば画面分割と回転。これらはデフォルトの状態で画面下部のナビゲーションバーに並んでいますが、ほとんどのアプリで利用できません。

利用できたアプリの中で画面分割に対応していたのはナビとSpotifyのみ。闇雲に全アプリで分割対応!とすると、不具合が起きていないか確認する工数が爆発するので対応アプリを限定するのは頷けますが、ちょっとさびしいですね。そしてなぜか、ディーラーのインスタグラムを確認すると、上位車種のBYD Sealion 7はもっと対応アプリが多そうなのも謎です。
どちらかといえば危ういのは画面回転のほうで、縦画面非対応のアプリ起動時は”勝手に”画面が回転しますが、ユーザーに一切断りを入れません。Android AutoやCarPlayはどんなアスペクト比にも対応している中、横画面のみで済ませる思い切りの良さには感心しますが、ユーザーはどのアプリが縦画面非対応なのか分からない中ハズレアプリを踏むと断りなく回り出すのは、思い切りが良すぎるというものでしょう。
結果、回転中に一度こうなりました。モーターに負担を掛けそうなので再現動画は取りませんでしたが、小物入れにスマホと財布を入れた状態で回転が始まってしまい、見事に引っかかる事態に。

幸いスマホにも財布にもダメージはなかったものの、この状態から自動で元に戻りません。自動ドアやスライドドアのように挟み込み検知したら戻る、といった小賢しい機能もありません。潔いことです。
ソフトのUIも個性豊か
操作体系はAndroidタブレットのそれを忠実に継承しています。画面を戻るには左右からスワイプ、最近使ったアプリを見るなら下から上にスワイプ、まさにジェスチャーナビゲーションのそれ。学習コストゼロと言えなくもありませんし、スマホネイティブ世代には直感的でわかりやすいかもしれません。
このUI、眺めるたびに考えさせられます。この設定画面を見てください。何か感じませんか?

多くのWebサイトやアプリがそうであるように、人間の視線は左上から右下へ向かいます。そのため、親となるカテゴリが左または上のほうに、子カテゴリが右側または下のほうにあるのが自然です。しかしこの画面では、親が右側に、子がタブとして上側にあります。
親となる階層が右側にある点については、運転者に近づけるためという意図が理解できますし、実際他メーカーも運転者側に寄せている例は多くあります。
問題なのは、小分類があることと、それを1画面に入れようとしていること。設定項目を探す際に、視線が非常に忙しいです。目の体操と思えば健康的かもしれませんが、子カテゴリを無くすか、グリッド形式にして親カテゴリをまとめて1画面とするべきと感じました。ちなみに、縦画面にすると視線が上から下へ流れるように項目が配置されるので、かなりマシです。

最後にもう一点。Android Autoを利用する際の導線には、独自の哲学があります。
例えば通話や設定画面からAndroid Auto画面へ戻りたい場合、一度ホーム画面を押し、左上にあるAndroid Autoのボタンを押さないといけません。シンプルに運転席から遠くて押しづらいです。

一度このホーム画面に戻ってから、画面左上のほうにある「Android Auto」を押下する必要があり、面倒。
国産メーカーであれば、Android AutoやApple CarPlay利用中、マップや音楽ボタンを押すと純正アプリの代わりにAndroid Auto/CarPlayへ遷移するものがあります。接続中の動作としては非常に合理的です。BYDにもナビゲーションバー上にナビボタンはありますが、いついかなる条件でも純正ナビへ案内してくれる一途さで、かなり面倒でした。
このほかにも、UIに起因するこまごまとした「発見」はありました。
車載UIには広すぎる可能性の扉、文字が流れるテキストポップアップ。スマホとつながった際に”接続に成功しました!”とビックリマークをつけてくる人懐っこさ。戻るボタンやUI自体に多様性を認める寛容さ、そして翻訳の自由な発想(説明がついているのは良いですが)。設定メニューの深層にはADBデバッグへの導線がそのまま残されていたりもして、開発チームの飾らない仕事ぶりが随所に顔を出します。


同じものを指しているはずの「カーテシライト」と「コーテシーライト」。表記に多様性を確保する姿勢。

味わい深い「AVMはステアリングに適応しました」。機能自体は狭い路地などを曲がるときに使えるもの。
個人的には、この翻訳のクオリティは予想外でした。欧米メーカーが対応しない右ウインカー・左ワイパーに合わせてきたうえに、今夏からEV軽自動車を導入するほど日本市場に本腰を入れてくれているのですから、日本語にも同じ熱意をいただけると、なお嬉しかったところです。
なお、純正ナビゲーションはゼンリン製の地図を搭載したアプリとなっていましたが、特にメーター内に情報を表示するといった純正ナビならではの利点があるわけでもなく、使い勝手や検索性も洗練されていなかったので、ついぞ使うことはありませんでした。
最後に、1点ちょっとヤバいかな?と思ったポイントをご紹介。期間内に詳しく検証できませんでしたが、Rレンジに入れた際のバックカメラの表示が、Androidアプリに依存しているように見えました。これの何が問題かと言えば、不安定なAndroidシステム側に映像表示を行わせることにより、状況によっては 後退時車両直後確認装置に係る基準(UN–R158)やアメリカのKT法に抵触する恐れがあること。
これらには「Rレンジに入れてから2秒以内にカメラ映像を表示しなければならない」とする条項が含まれており、違反するとリコール、場合によっては制裁金となります。
システムの劣化やソフトの実装でカメラ映像の表示が2秒を少しでも超えたり、表示できないとアウトです。ちなみにカメラボタンを連打していたところ、一度だけ「カメラ映像が取得できませんでした」と表示されて映像が出てこなかったこともあり、なかなか香ばしくて危なっかしい仕様・実装だな、とは思いました。
コックピットのUXにも「見どころ」あり
ソフトウェアだけでなく、コックピット全体のUXにも気になる点がいくつかありました。
まず、センターディスプレイの下にエアコンやドライブモード切替のボタンが並んでいるのですが、画面を操作しようと手を伸ばした際に肘がこのボタンに当たってしまうことがありました。運転者のポジションからすれば、手が当たるのはエアコン周りであるためさほど致命傷にはならないのですが、「肘で触ってしまった!」というだけでかなりヒヤッとします。画面の手前にそういった操作系を配置すべきではないのでは、と感じました。

次に、ステアリングスイッチの問題。ドルフィンでは音量調整とメーター内の表示項目切替が同じダイヤルに割り当てられています。ステアリングスイッチ上のメニューボタンを押すとメーター表示の切替モードに入りダイヤルによって表示する項目を操作し、通常時は音量調整になるという仕組みなのですが、これがとにかく厄介。
速度超過の警報、ワイパー操作の表示、後方車両の接近表示など、何かしらの割り込みが入るとメニュー操作が強制的にキャンセルされ、ダイヤルが音量モードに戻ってしまうのです。画像じゃ伝わりにくいです。


つまり「メーターの表示を切り替えようとしていたら、急に音量が爆上がりした」みたいなことが普通に起きます。筆者としては1つのボタンの機能は基本1つであるべきだと思っていますが、でなくても割り込みによって操作が中断されない設計にするなど、やりようはあるのではという感触です。
Claudeでこの状況を再現するシミュレーターを作ってみたので、試してみてください。
そしてADAS関連の警報音。速度超過時に警報が鳴ること自体は理解できますが、BYDのそれは実に面倒見が良い。何度でも、何度でも教えてくれます。しかもオフにしてもエンジン(システム)再起動後に設定が保持されず、元に戻ってしまいます。あるYouTuberも「BYDの日本法人は絶対に日本人に事故させたくないのだろう」と言われていますが、まさにその愛の深さです。
さらに厄介なのは、速度超過もADAS系の緊急警報もすべて同じ警報音であること。「今の音は何に対する警告なのか」が咄嗟に判断できません。トヨタ車であれば速度超過は表示のみで警告するのがデフォルトですし、警報の種類ごとに音を分けるのは安全設計の基本だと思います。
細かいところでは、ウィンカー音の作りも気になりました。左折時と右折時で音が異なるのですが、それ自体はまだしも、ウィンカーの点滅間隔と音のテンポが同期していません。急いで左右を切り替えた際の違和感は相当なもの。ハザード点灯時も同様で、光り方と音がズレています。ただこれは、「クラシック」と「ブランド」でサウンドを切り替えられるため、そこまで気になりませんでした。
オーディオの音量管理にも一家言あります。Bluetoothオーディオの音量こそ独立して管理されているものの、FM・Android Auto・YouTube・ローカル再生の音量はすべて共有されています。音量はひとつの家族、という思想なのでしょうか。Android Autoでちょうどいい音量にした後にYouTubeを開くと爆音、なんてことが普通に起きます。ソースごとに音量を記憶するのは珍しい機能ではないはずですが。
走りはさすがEV
筆者は自動車系YouTuberではないので、数多くの車を乗り比べてきたわけではありません。そのうえでの感想にはなりますが、ドルフィンの走行性能は快適です。
高規格道路で一気に踏み込むと、70〜80km/hまですぐ到達します。140馬力と聞くとスペック上は控えめに見えますが、EVならではのゼロ発進からのリニアなトルクは体感上の加速力が段違い。追い越し時も余裕があり、後ろからスピードの速いプリウスに詰められたときも一瞬で距離を開けられました。コンパクトカーサイズなので小回りも利きますし、運転しづらさを感じる場面はほぼありませんでした。
パノラマサンルーフも開放感があり、静粛性はさすがEV。システムが起動した状態でもこれだけ静かなのは、ガソリン車とは根本的に異なる体験です。急加速するとホイールスピンすることはありましたが、まあこれは天気と筆者が悪い。
一方、ACC(アダプティブクルーズコントロール)は白線の中央をきっちり走ろうとする挙動で、国産車に乗っている身としてはやや違和感がありました。国産車のACCは車線内でのポジショニングにもう少し余裕がある印象ですが、ドルフィンのそれはセンターを几帳面にトレースしてきます。危険ではないのですが、ちょっとむず痒いです。
回生ブレーキの強さは2段階で切り替えが可能でした。ただしこのボタン、走行中しかメーターに表示項目が出ない仕様なのか、停車中に操作しようとしたときは「このボタンは一体何なんだ」としばらく悩みました。しかも操作してもフィードバックが一切ないので、停車時にこれは何のボタンなのかさんざん悩みました。禅問答のようなボタンです。
バジェットレンタカーでBYDを借りるという選択
今回BYD Dolphinを手配したのはバジェットレンタカーで、2泊3日の料金は9500円。ヤリスなどのコンパクトカークラスは7500円でしたから、わずか2000円のプラスで3ナンバーサイズのEVに乗れる計算です。しかも充電カードが付属しており、充電は無料。返却時に満タン(満充電)にする必要もなく、充電しなかったからといってペナルティもありません。
ここまで至れり尽くせりであれば、中国車に嫌悪感がなければ乗らない手はありません。経済的でワンランク良い車を燃料代無料で乗り回せるのですから。
ただ、やはりというべきか人気はないようです。オドメーターはまだ1万km、新車の匂いもまだ若干残っており、ドルフィンを借りている利用者はあまり多くないのかもしれません。筆者は300km弱ほど走りましたが、2日間の走行中に同じバジェットレンタカーのドルフィンとすれ違ったのは1度だけ。高級レンタカーとして利用できるテスラなどのほうが多く見かけました。
実際のバッテリー消費ですが、那覇~宜野座村〜名護間の往復を含む2日間の走行で、ちょうど10%台まで使いました。高速道路を流れに乗った速度で走るとそれなりに消費しますが、2泊3日の沖縄旅行であれば無充電でも十分に持つ水準です。一応、美ら海水族館の駐車場には200Vの普通充電器があり無料で利用できましたが、その時の残量である68%から満充電まで約9時間かかる計算でした。水族館の滞在時間程度では焼け石に水でしょう。
総評:ハードは雄弁、ソフトは勉強中
BYDドルフィン ロングレンジに対する筆者の評価は、この一言に尽きます。「ハードは素晴らしい。ソフトはユーザビリティの勉強中」。
走行性能は文句なし。340万円台のコンパクトカーとしてはパワフルで、静粛性も高く、シートや足回りの質感も価格を考えれば十分以上。パノラマサンルーフにTPMS(タイヤ空気圧監視)まで備えているのは、同価格帯の国産車にはなかなかない装備です。EVとしてのガソリンスタンド不要のライフスタイルに対して、空気圧を車内から確認できる仕組みを用意しているのはすばらしい。
……と、ここまで言葉を選んで申し上げてきましたが、最後くらいは率直に言わせてください。ソフトウェアとUI/UXが、そのハードの良さを徹底的に打ち消してしまっています。メーターのUIはお世辞にもかっこいいとは言えず、設定画面の階層構造は大分類と小分類が画面の右と上から同時に迫ってくるという混乱的なレイアウト。
Android Autoを起動するにはアプリドロワーを開いてアイコンを探す必要があり、ナビゲーションバーから直接遷移することもできません。ウィンカー音は左右で異なるだけでなく点滅と音のテンポが同期しておらず、Bluetoothオーディオ以外のソース間で音量が共有されるなど、細部の作り込みが足りていません。
ジェスチャーナビゲーションに画面分割、そして設定画面にADBデバッグへの導線まで残しておいてくれる大らかさ。「車のシステム」というより、「Androidタブレットを車に載せた」と表現したほうが実情に近いでしょう。HarmonyOS搭載車がスマートコックピットとして高い評価を受けている中、同じ中国メーカーでもここまで差が出るのかと驚きました。
しかしそんなDiLinkも、いずれは改善するかもしれません。アップデートで改善するのがSDV(Software Defined Vehicle)の本質なのですが、筆者が言いたいのは残念ながらそれではなく、世代の進化です。
それは、最新の海外向けBYD車の一部では、Googleが開発したAndroid Automotive OS(AAOS)をベースとしたインフォテインメントシステムを搭載する車種が出始めているという点。同じDolphinという名を冠しつつ、PHEVなので中身は別物な欧州専売車のBYD Dolphin G DM-iなどが一例です。こっちは見た目かっこいいですね。

AAOSが搭載されると何がありがたいかと言えば、ある程度画一化されたUI/UXが提供されること。Google MapなどGoogleのサービスを利用し、AAOS搭載の恩恵を最大化するためには、GAS認証(Google Automotive Services)をメーカーがとる必要があるのですが、この際にGoogleのとんでもなく厳しいUX要件を通る必要があるのです。
例えば「車載向けアプリは5画面以内にタスクを完了させなければならない」とか「重たすぎるせいでドライバーの注視時間が長いと危険だからNG、頑張って軽くしろ」とか、「メッセージ表示でドライバーが画面注視したら危ないじゃん、合成音声と音声入力を用意しろ」とか。
認証を取得してGoogle Built-inと認められるには、「Google搭載」の看板を背負うに相応しいとGoogleが考えた性能やUX、そして車載システムに求められる信頼性と安定性、そのすべてを兼ね備える必要があります。
このため、GAS認証が通った結果Google Mapなどが利用できるのなら、ある程度使いやすく仕上がっている期待はあります。当然、Play Store上の無数のアプリである程度のカスタマイズもできますしね。
とはいえ、ステアリングスイッチ部分にまでGAS要件が口出してくるかまでは分からないので、結局コックピット側のUXは依然として改善しないかも。
話を今回のDolphinに戻します。レンタカーとしてのコスパは間違いなく高いです。Android Autoさえ使ってしまえばナビもオーディオもある程度マシになりますし、EVならではの加速や静粛性は純粋に楽しい体験です。同じ条件であればまた選びたいと思います。しかし「このシステムを毎日使いたいか」と問われたら、答えはノーです。
ハードの出来は素晴らしいのに、ソフトで何でもできるからと大きな風呂敷を広げ、その畳み方はこれから覚えていくどこかのガジェットのよう。BYDドルフィンは、そういう車でした。大変勉強になりました。











