ついに一線を越えた気がする……。
Googleは、「生成AIによる新しい検索体験(SGE)」機能の日本語版の試験運用を開始しました。Google検索の結果に基づいて、ふさわしい回答をAIが生成する機能であり、Microsoftが展開するBing AI Chatと似たような立ち位置です。
概要
SGEを利用するには、Search Labsに登録された18歳のGoogle アカウントと、PCであればChrome、Android/iOSであればGoogleアプリが必要。またSearch Labsはウェイトリスト制で、思い立ってすぐ利用できるわけではありません。
この機能は今年5月のGoogle I/Oで発表されたもので、日本は米国に続いて2番目のサービス展開となるようです。
Googleの生成AIである「Google Bard」はかなり早いタイミングで日本語(と韓国語)に対応したほか、Google Pixelシリーズでは日本と米国含めた数少ない国にしか投入していない端末も多く存在するなど、Googleは日本市場を非常に重要視しており、今回の動きもそれを裏付けるものであるといえます。
AI生成の概要についてのレビュー
さて、筆者はSearch Labsに以前から加入しており、すぐに試すことができたので、さっそく使ってみました。
SGE自体の使い方自体は至極単純で、任意のワードを検索した際に、ページの内容をもとにAI生成した結果が出現します。また、フィルタツールに新たに「会話」タブが表示されるようになり、AIによる概要に続いて質問を行えるようになります。
回答が生成される条件
AIによる概要は必ず表示されるといったわけではありません。筆者が少し触ったところ、たとえば例にあった「魚って寝るの?」など、質問文になっているものや、「姑」や「天上天下唯我独尊」というように単語の意味を調べていると推測されるものなどでは、ページを読み込んだ際にクリックなどせずとも自動的に返答が生成されます。
反面、「smhn」のように意味をなさず、単にページにたどり着くための検索や、「Radeon RX 6800」や「熊本城」のような固有名詞では自動生成されず、「AIによる概要を生成しますか?」と表示したり、そもそも概要生成を行わなかったりします。
こういった検索をする場合、たいてい商品やサイトへの到達を理由とした検索であるため、生成を行わないのはページの探しやすさという観点でかなりありがたいものです。生成AIの要約が欲しければ、「高千穂峡とは」といったように検索すればよいわけですし。
利便性
検索結果は引用元を提示することが可能で、右上のリストマークのボタンを押すと、ソースごとに回答が1~3文に分かれ、簡単に引用元にジャンプできます。
また、特筆すべきは生成速度の速さ。これは一度の生成で3つの回答を送り返してくるGoogle Bardにも同じことが言えるのですが、Bing Chat AIに同じ質問をすれば30秒はかかってしまう回答でも、長くて5秒程度で表示されてしまいます。
そもそもGoogle検索には、「iPhone 14 Pro MaxとGalaxy S23 Ultraはどちらが軽い?」などと質問すると、サイトの一部文言を抜粋して表示する「強調スニペット」機能がありますが、それと異なるのが「ある程度突飛な質問にも耐えられる」という点。
例えば「ビアンテとID.Buzzはどちらの価格が高いのか」という質問。マツダが2018年に生産終了したミニバンと、フォルクスワーゲンのレトロなミニバン型電気自動車を比較する数奇なサイトはさすがに存在しないでしょうが、それぞれの価格を調べたうえできちんと回答できています。
なお、ビアンテの価格について、生成ごとに異なる値が出てきたことがありましたが、これは価格の参照元サイトそのものに価格の差異があったためであるようです。また、一応はソースを提示しソース元の表現を積極的に変えないようにしているようで、今回のような情報の信ぴょう性は従来の生成AIより高いと評価できます。
「会話」タブ
軽く述べた通り、Search Labsの機能を有効化すると「会話」タブが出現します。これはBing Chat AIを模したような作りで、上部にはAIと会話できる欄が、下部には従来通りの検索結果を表示するページが現れます。
ユーザーは検索したのち、「会話」タブを押すと、生成AIとの会話が開始できます。
ただし、遊ぶ余地はガチガチに固められており、ChatGPTやBingに対して行えた「○○になりきってください。」といったロールプレイやプロンプトエンジニアリングの類は一切通用しません。これはベースとなっているであろうGoogle Bardも同様の傾向があります。
また、「あなたの身長は?」といったように、AIに語り掛けてみたとしても、私は検索エンジンですと言わんばかりに検索結果を表示するのみ。良くも悪くも、Googleの「会話」機能は検索ファースト、AIによる生成はその次であるという印象を受けます。
BingはAIが思考してから、必要であればネット検索を行う、といったプロセスを踏んでいるように見受けられます。Googleの味付けは、人間味のあるBingやChatGPTとは正反対です。
総評
生成速度の圧倒的な速さやアクセスのしやすさといった利便性、そしてそこそこ優秀な検索能力。検索エンジンの一強を崩させまいとするGoogleの本気が垣間見えました。
ただもちろん、依然として使い手側のリテラシーは必要です。例えば車の燃費情報を調べるにあたって、「何代目なのか」「何年モデルなのか」「ハイブリッドモデルかガソリン車か」といった情報が必要ですが、単に「●● 燃費」と調べただけではユーザーの求める情報は指定できません。一応存在しないデタラメな発言はしないようですが、逆に言えば「SOMYの画面なしスマホXparie 100!(すまほん!! – 4/1)」などといったネットに実在するデタラメな情報に引っかかってしまう恐れはあるわけです。過信は禁物、これはいつの時代でも守るべきルールですね。
日々の検索を少し便利にするウィジェットの延長、ととらえれば十分実用に足りうるものになると感じました。今後の成長が非常に楽しみです。