今回Amazonのみで販売されている4K HDR対応テレビ、LG UJ630Aを購入したので紹介します。
Index
LG UJ630Aとは
Amazon限定で販売されている4K HDRテレビです。筆者購入時54,800円で販売されており、更に10% OFFクーポンも配布され購入金額はなんと5万円を切る(!)普通の43インチテレビとしても激安な値段です。(執筆現在は10%オフクーポンは配布されていないようです)
そんなに激安なら、機能的に劣るのでは?と思いがちですが、UJ630Aは流行りの4K※、そしてHDRにも対応します。ハイエンドテレビによくある倍速機能、TrueMotion 120やLGのColor Master Engineという高画質エンジンも搭載、そしてフルHDの映像を4K相当にアップコンバートする機能も搭載しています。
※ただし疑似4K。液晶の項目に後述。
またOSに「WebOS 3.5」を搭載しています。必要なアプリをインストールすることにより、NetflixやAmazonプライムビデオ、YouTubeやSpotifyといった様々なサービスをテレビだけで視聴することができます。つまりChromecastやFire TV Stickを別途用意する必要がありません。
そして肝心のテレビ機能としてはHDDを接続することにより番組録画も可能な上、同時にHDDを2台接続することができます。そしてNHKの新サービス、ハイブリッドキャストにも対応しています。
端子は4K入力対応のHDMIが3つ、うち1箇所がARCに対応しています。コンポーネント/コンポジット入力が1箇所、デジタル光出力が1箇所、3.5mmミニプラグが1箇所、LANポートが1箇所、USBが2箇所と普通に使う分には十分な端子を備えています。こんなにたくさんの機能や端子を備えた43インチのテレビが54,800円。しかも10%オフと言われてしまえば注文する以外の選択肢はないですよね?しかし、使っててわかった注意点、問題点を紹介していきます。
開封
Amazonのみで販売されているのでAmazonで注文します。今回は自然故障に対応する5年保証も付けておきました。注文から翌日には届きましたが、仕事の都合で受け取れず翌日に変更。ようやく受け取ることができました。
内容物はテレビ本体、スタンド、操作用リモコン、ACケーブル、B-CASカード、取扱説明書です。同軸ケーブルは同梱されていないので別途用意する必要があります。
「4K」について
本機は4K HDRに対応しています。本機の4Kとは3840×2160(UHD)のことを指します。この4Kなのですが、一般的な4Kディスプレイと比較するとちょっと異なる作りになっているのです。俗に言う疑似4Kディスプレイです。
ざっくり説明すると、映像は基本的にRGB(赤緑青)の3色を1画素とし、それが横3840個、縦2160個あるものがきちんとした4Kディスプレイです。しかし本機はRGBに加えW(白)を足し、RGBもしくはWを含むWRG、GBW、BWRによって、連続した3つのサブピクセルを1画素とし4K相当の解像度を実現する技術です。
メリットとしては値段が安価であるということ。デメリットは黒の表現に劣り、やや明るくなるということ。洋画やホラーといった暗いシーン、色の表現にこだわるユーザには向いてません。
「なんでLGはそんなことをしているのか?騙すつもりか!」と、そうではないのです。PanasonicのEX600シリーズやハイセンス、フナイ、近年の激安4Kテレビはこのような疑似4Kと呼ばれるパネルを使っていたりします。安い4Kテレビにはこのような罠があったわけです。逆に色味にこだわらず、大画面でテレビが見れれば良い、とりあえず安価な4Kを試してみたいというユーザには安く手に届くディスプレイになること間違いなしです。
HDR
HDRはHigh Dynamic Rangeの略称です。最も明るいところと暗いところの差を細かく表現することができます。従来のSDRでは8bit(256段階)で明るさを表現していたのに対し、HDRでは10bit(1024段階)の4倍の情報量で表現することが可能です。HDRのほうが階調を細かく表現できるのでより肉眼に近い映像を視聴することができます。以下、HDR方式3種類を簡単に説明します。
HDR10
HDR10はPQ(Perceptual Quantization)方式の10bitのHDR映像を指します。主に映画やWeb動画で用いられます。採用されているサービス、機器としてはUHD BDやYouTubeなどで用いられており、最近のハイエンドスマートフォンやテレビが対応しています。
Dolby Vision
Dolby VisionはHDR10と同じくPQ方式を採用していますが、主に12bitのHDR映像を指します。NetflixやAmazonプライム・ビデオが対応していますが、対応しているデバイスがまだ少ないというのが現状ですが、その中でも先日発売されたAQUOS R2やLG G6が対応しています。
HLG
HLGとはHDRの方式の一つHybrid Log Gammaの略でNHKとイギリスBBCが中心になり開発されました。主に放送やライブ中継に向けて使われます。対応サービスではYouTubeがあります。再生・撮影機器としては東芝 レグザやSONY ブラビアやSONY RX100M6やα7M3などがあります。
そして本題に戻りますが、本機で対応しているのはHDR10とHLGです。ホームページには後日対応と記載されていますが、筆者がYouTubeで対応動画を再生したところ、HLGが有効になったとの通知を確認しました。
液晶と画像処理
何も設定せずに電源を入れて表示すると、すごく不満のある色でした。全体的に暗く、絵の具をバケツにつけたような汚い色のような感じです。
対処法としてはカラーバーを用いた色補正を行うことをオススメします。カラーバーはPremiere Proを用いることで簡単に作るとこができます。用意できない場合はARIB カラーバーなどで検索すると見つかるかもしれませんが、正確な色にならない場合があります、要注意です。
ちなみに、入力や映像モードごとに細かく色の設定はできるので、機種やサービスにより使い分けることが可能です。筆者の設定としては地上波ではTrueMotionを強、超解像・ノイズリダクションを中に。
この情報をそのままHDMI1につなげたPS4にも設定しました。そして別途映像モードを切り替えてゲームモードも設定します。ゲームモードでは低遅延でゲームをすることができるので、PS4のようなtorneやブルーレイを再生でき、かつゲーム機にもなる機種ではこのように設定を分けておくとスムーズに状況に応じた設定で利用することができます。オススメです。
疑似4Kにおいて気になる明るさや解像感ですが、明るさを100の最大値にしてもちょっと暗いかなと感じました。解像感は離れて見るためそれほど劣ると感じることはありませんでした。やはり43インチにもなればある程度離れてみるのでそれほどわからないのが実情だと思います。
今回購入した43インチモデルは直下型バックライトと値段の割にやるじゃん!と思ったのですが、部分制御には非対応。そして四隅が暗い。安い直下型テレビにありがちな問題。明るさを最大にしてごまかすものの、やはりエッジ付近が気になります。
WebOS
LGのテレビにはWebOSというOSが搭載されています。WebOSはスマートフォンやタブレット向けのOSとして開発されていましたが、2013年にHPから買収し翌年にスマートテレビ向けOSとして利用されました。テレビはスマホと違い数年は買い換えることはないデバイスです。そんなテレビに頻繁に更新するようなOSを搭載して大丈夫なのか?大きなメリットではなく、デメリットになるのでは?とスマートテレビには否定的な筆者でした。
事実、テレビを購入しようといろいろ選択肢を探したのですが、 SONYやSHARPはAndroid TVを採用、PanasonicはFirefox OSを採用しています。そのため採用していないモデルを避けるように探すのですが、4KモデルとなるとほぼそれらのOSが使われています。他のメーカーとなると、東芝になりますが、東芝は実家で利用したことがあるのですがTポイントや訳のわからない広告、ものすごく重たい動作のイメージが色濃く残っており、買うのを躊躇っていました。
ではLGはどうか。WebOSと日本では馴染みのない名前。そもそもLG自体、日本で販売されるテレビメーカーとしてあまりメジャーではないと思っていました。機能も劣り、動作も遅く大したことはできないんだろうな、という偏見を持っていました。
しかし、家電量販店で触ってみると、思いの外使えるのでは?と希望を持ったのです。理由として番組表は見やすく、操作はシンプル。フォントは丸ゴシックで親しみやすく、細すぎないフォントなので見やすいです。UIはLGらしいフラットなデザインですが、選択しているものはLGのメーカー色で表示されるのでわかりやすいです。またホーム画面では必要なメニューだけ表示されます。このメニューの並び順は自由に変更できる上、いらないアプリケーションはアンインストールすることができます。
初期ではU-NEXTやTSUTAYAのアプリなどがインストールされていましたが、全く使わないので削除し、Netflix、Amazon、YouTube、Spotifyのみ入れてホームにおいています。アプリケーションはLGが提供するマーケットからインストールできますが、このマーケットに公開されているアプリがとても少なく、20個程度しかないです。とはいえ、ストアにない大手のアプリといえばAbema TVくらいかなと思います。視聴する場合はChromecastやFireTV Stickなど別途ストリーミング端末が必要になってきます。
肝心の地上波は字幕放送や音声切替、データ放送など完璧に利用できます。なんならNHKのハイブリッドキャストにも対応しているくらい、ガラパゴスと言われる日本機能にしっかり対応しています。
機能も十分だし、操作もしやすい!WebOSいいじゃん!と思ったのもつかの間。店頭のハイエンドモデルでは快適だった操作も、本機の安価なモデルでは快適とは言い難い応答の遅さ。ソフトウェアが良くてもハードウェアがスペック不足では意味ありません。YouTubeで4K HDR動画を10分ほど再生していると“メモリが不足しているのでアプリを再起動します”との表記が。またブラウザーを利用した時も同様。これらのソフトウェアに対し、明らかなスペック不足なのです。テレビを見ている時に落ちる、ということはありませんが、ネットワークサービスを利用していると、このような事案がまれにありました。
そして地上波を視聴中に気になったのが画面のノイズ。横長のブロックノイズが視聴中に入ることが稀にありました。対策を調べたところ、Amazonのレビューに『倍速機能(TrueMotion)を強にしていると、視聴時にノイズが乗る。そのため効果を弱くすれば解決できる』という情報を発見。試しに行って見ると改善が見られました。なーんじゃそりゃ。
せっかくソフトウェアが使いやすくても、ハードウェアのスペック不足ではまともに使えないのは大変残念です。とは言え値段を考慮すれば、妥当なレベルだと思います。これでは試しにLGを買ってみたユーザが次モデルでは敬遠しがちになる原因の一つになりかねないので、最低限のスペックは欲しかった、と思います。
リモコン
LGのテレビといえばWiiリモコンのようにポインターがあり、手首を動かすだけで操作できるマジックリモコンが有名です。ボタンをカチカチ何度も押して選択するより直感的で楽なのですが、それはそれで腕が疲れてしまいます。しかしUJ630Aはマジックリモコンではなく、通常の赤外線リモコンのみ同梱されています。
レイアウトはこんな感じです。文字がデカすぎてダサいということもなく、誰でも簡単に使えるシンプルなレイアウト。
通常のリモコンだと操作が面倒かなと思ってマジックリモコンの購入を考えたのですが、WebOSが操作性よく作られているおかげか、日常の利用で苦労するなあと感じたことはありませんでした。
またスマートフォンにWebOS TVのアプリをいれるとタッチパッドのように使えるので、マジックリモコンはなくても問題ないなと感じました。もしマジックリモコンが欲しい場合、同梱モデルを選ぶか、個別販売(値段3,000円~)を選びましょう。
リモコンにはNetflixとAmazonプライム・ビデオのボタンがあります。これらのボタンを押すことによりそれらのサービスをワンプッシュで起動することができます。2つのサービスへ加入している人へは便利な機能ですが、加入していない人にとっては邪魔なボタンになります。せめて他サービスに割当変更できたら便利なのにな……と思います。
スピーカー
テレビ内蔵のスピーカーですが、筆者は別途スピーカーを購入してつないで利用しています。理由としてはやはり迫力に欠けるから。低音はきちんと出ない、スカスカした印象です。それほど迫力求めなければ良いのかな、と思います。
別途スピーカーをつなげる場合は3.5mmミニプラグ端子や光デジタル出力、HDMI(ARC)、Bluetoothに対応しているので様々なスピーカーをつなげることができます。
TrueMotion 120
本機において倍速機能と言われるTrueMotionですが、やはり強にしていると処理が追いつかずブロックノイズが表示されることがあります。テロップも処理が追いつかず、文字がダブる、遅れる、というあまりみたことのない映像表現が見れます。過度な期待はご用心。
遅延に関して
初め、PS4をつなげて某FPSゲームをしていたときに遅延が酷くて遊べないなコレ!と思ったのですが、TrueMotionをオフにする、映像モードをゲームモードにすると遅延が少なく遊ぶことができます。以前まで遅延の少ないディスプレイでプレイしていたのでこれでもうーん?あるかな?と感じる程度まで減らすことはできました。
無線に関して
本機はWi-Fi搭載なので無線でインターネットへ繋げることができます。しかしこのWi-Fi機能、いざ繋ぐとスピードが2Mbpsも出ないので、4KどころかフルHDの動画再生でもまれに止まる程度という酷さです。LANケーブルを使って有線接続が可能なので有線で繋いだところ、95Mbps前後出るようになりYouTubeやAmazonの4K動画を再生すると、即4Kで再生されます。そのため、無線ではなく有線での接続を強くオススメします。
Nature Remoを用いた音声操作
リモコンは赤外線で操作するタイプなので、Nature Remoを初めとした赤外線信号を登録するスマートリモコンに対応しています。電源のオンオフはもちろん、IFTTTで連携させるとチャンネルや番組表などをGoogle Assistantで操作できます。
総評:万人向けに非ず。ギークには楽しいテレビ
総評としては、初心者に厳しい値段相応の4K HDRテレビ。厳しい条件を理解した人のみが買う変態向けであると思いました。
機能や性能を見る限りこの値段では破格の商品だと思います。しかしそれらの機能を快適に使うためには多くの設定や機能を理解する必要がある故に、初心者には厳しい面が多すぎます。色調整やメモリ不足、ノイズ問題など、普通にテレビを買って繋いで見るというところで、遭遇することがない問題へ直面します。それらの問題に解決できる能力がある人が遊び目的で購入するテレビではないでしょうか。万人向けではない、と感じました。
逆に自分は調整できる自身がある!それほど気にしないけど大画面テレビが欲しい!というユーザでしたらかなり楽しんで使うことができると思います。入門には厳しいモデルですが、夏のボーナスが余りそうなギークな方へ。夏のおもちゃには最適ではないでしょうか。