中国メーカーOPPOのサブブランドRealmeは、インド向けに「Realme Smart TV SLED 4K」を正式発表しました。
Realme Smart TV SLED 4K 発表
Realme Smart TV SLED 4Kは、「世界初」のSLED 4K スマートTV。NTSC比は108%。彩度を強調する機能である「Chroma Boost picture engine」を本製品にも搭載。前モデルでは非対応であった、HDR10+規格にも対応。ディスプレイサイズは55インチ。ベゼルは非常に狭く、画面占有率は94.6%となります。フレーム部分はメタルで高級感もあります。
OSはAndroid TV、SoCはMediaTek製、実行メモリは1.5GB、ストレージは16GB。スピーカーは24Wのクアッドステレオスピーカー。その他、100Wのサウンドバーも別売で購入できます。
10月16日より、公式サイトRealme.com等を通じ予約開始。本体価格はINR39,999、日本円で約5万7700円。
「世界初」?Realmeの「SLED」とは何か
つまり液晶テレビ
Realmeは「新開発のSLEDは、QLED(量子ドットテレビ)よりも良い!」と主張しています。さて、OLED(自発光素子の有機EL)でもないSLEDとは何なのか?まさか最新のマイクロLED?
QLEDも、そしてどうやらSLEDも、要は液晶テレビです。どれも後ろからバックライトで照らして表示しているという基本原理は同じです。
一般的な液晶では、青色LED(発光ダイオード)に黄色の蛍光体組み合わせて白色の光を作る「白色LED」、この光をRGBフィルターに通して色を表現しています。この原理上、コストは安く済ませられるものの、純度の高い赤や緑は取り出しにくい欠点があります。
サムスンのQLEDは、青色LEDの光を、量子ドットフィルムで吸収して赤や緑を作ります。
Realmeによると、SLEDは「RGBバックライトを採用」としており、自発光素子ではなく、あくまで従来の一般的な液晶方式でバックライトを赤・緑・青の3色のLEDに置き換えていると推察されます。
Realme曰く「自然界では白色はRGB原色で表現する。QLEDと違って、ブルーライトの悪影響を軽減し目に優しい、色域も広い」などとSLEDを持ち上げています。
宣伝文句はともかく、少なくともこの方式自体は「世界初」ではなさそうです。
日本メーカーが十数年前から投入済み
RGB-LEDバックライトのテレビは、かつて日本メーカーも開発・販売していました。SHARPの「AQUOS XS1(2008)」、RGB-LEDトリルミナス技術を採用したSonyの「BRAVIA XR1(2008)」「QUALIA 005(2004)」がそれです。
一般的な液晶テレビとは異なり、RGB-LEDバックライトのテレビの場合、純度の高いRGB各色を取り出しやすく、優れた色域を発揮。これこそが液晶テレビの主流方式になるだろうとの見方もありました。
一方で、RGB-LEDバックライトのテレビは、必要な電流の増加や制御のための熱、部品コストといった課題を抱えていたことから、結局、主流になったのは低コストの白色LEDバックライトの液晶テレビでした。当時のBT.709で求められる色域では、それで十分だったということでしょう。
ところが、高解像度化だけでなく広色域な新放送規格BT.2020が定められた4K8K放送が国内で開始された今、RGB-LEDバックライトのテレビが中国メーカーOPPOのサブブランドRealmeにて蘇ってきたのは、純粋に面白いところ。
あくまで世界初の枕詞には「SLEDという『ブランディング』を用いたテレビとして」というトリックがあることは、注意しておく必要があるでしょう。
LCD TVに対するLED TV、OLED TVに対するQLED TVといった具合に、マーケティングの上手さはSamsungの十八番。追う立場から追われる立場になったSamsungに、マーケティングで食いつき始めた中国メーカーといった構図でもあるかもしれません。少し感慨深くなります。
(編集・校閲: ・SLED解説部分: ivara )