欧州委員会は、Appleに対する予備調査を実施し、同社がiOSを搭載する端末上でのモバイル決済事業において優越的地位を濫用したとする見解を通知しました。
iPhoneには、2014年に発売されたiPhone 6シリーズから、NFCチップが搭載されています。当時から、決済においてNFCチップにアクセスできるのはApple Payのみであり、サードパーティアプリによる、決済のためのNFCチップへのアクセスはできなくなっています。
欧州委員会は、NFCチップのアクセス制限による「競合他社の排除」が、消費者の選択肢を制限していると判断したため、今回のAppleへの異議申し立てに至りました。
Appleは、今後欧州委員会の異議申し立てに対して回答を作成する必要があります。対応によっては、欧州委員会の対応が大きく変わる可能性も。EUの独占禁止法に違反していると判断された場合には、最大でもAppleの年間売り上げ10%相当に当たる、約365億ドル(約4兆7342億円)にも及ぶ罰金が課される場合もあるとのこと。
この件に関して、Appleは「ユーザーがクレジットカードをデジタルで利用し、銀行などの決済機関が顧客に非接触決済を提供するための簡単かつ安全な方法としてApple Payを開発した。」との声明を発表。その上で、トップレベルのプライバシー保護とセキュリティを保ちながら、Apple Payの中で、NFCへの平等なアクセスを提供していると主張しました。
Appleは、以前からApp Storeで公開されているアプリにおけるサードパーティ決済システム導入の制限、高すぎる手数料など、多くの制限に対して様々な国から独占禁止法違反の疑いで調査を受けています。
同社はこれらの制限を「ユーザーの安全のため」としています。ただ、App Storeは、業界内でも非常に厳しい審査を行うストアの一つ。決済を目的としてNFCチップにアクセスしたり、アプリ内決済を行う上で、セキュリティの懸念が残るサードパーティ製決済サービスを導入したアプリを審査に通すことは考えにくく、「ユーザーの安全のため」は言い訳でしかないようにも感じます。
「安全」の謳い文句にもそろそろ限界がきており、Appleは多くのサービスにおいてユーザーの選択肢をより広げる必要が出てきそうです。