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「スマホ勢に惨敗」「市場縮小」中国テレビメーカーのヤバすぎる苦境

 最近、家電量販店やカメラ量販店に行くと、テレビ売場の扱いを見て少し寂しくなります。かつて、テレビ売場は店舗の花形、1階でなくとも2階にはあったものですが、ヨドバシカメラ新宿西口本店でも調理家電よりも上の階へと追いやられてしまいました。

 NEC、パイオニア、日立は撤退、東芝のカラーテレビ事業はハイセンス、シャープは丸ごと鴻海へ身売りと、かつて栄華を誇った日本のテレビメーカーも、姿を消しつつあります

 家電メーカー競争といえば勝者は中国、という印象がありますが、「テレビそのものが売れない」という現象は中国でも発生しており、しかも、テレビメインでやってきた老舗メーカーは、更に小米のようなスマホメーカー参入というダブルパンチに見舞われているようです。

 中国「鳳凰網科技」に掲載されていた論評記事をご紹介します。

テレビメーカーの「王者」に走る激震

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 四川長虹が発表した2021年決算報告によると、同年度の営業収入996.32億元に大して株主に帰属する当期純利益は僅か2.85億元。営業利益率も前年比2.32%減の9.97%となりました。長虹といえばカラーテレビメーカーとして有名ですが、カラーテレビ業務の営業収入シェアは14.12%と、エアコン、冷蔵庫を下回りました。

 1980年代から90年代、テレビはもっとも重要な家電で、ニーズが不断に膨張していく中、長虹、康佳、創維は伝統家電メーカーのトップブランドになりました。

 中でも、四川長虹こそ伝統的家電ブランドの代表の一つ。

 軍工廠から転換した長虹カラーテレビは1970年にテレビの開発、生産を開始。(文化大革命が否定された)1978年からの改革の波に乗り、長虹ブランドを形成していくことに。

 1989年から、長虹は様々な経済指標でテレビメーカー全国トップの座を20年間守り続けました

「テレビ」そのものへの猛烈な逆風

 2013年頃からスマートフォンが大幅に普及したことで、カラーテレビ業界全体に影響がありました。2016年頃、中国のテレビ視聴率は70%前後あったのに対し、3年後には30%以下まで暴落

 テレビ視聴率はカラーテレビの販売台数にも影響しています。2020年、中国のテレビ販売台数は4,450万台、前年比9.1%減、販売額1209億元、前年比11.7%減。 2021年の販売台数は3,835万台、ここ12年での最低記録。

 スマホ、PCの大量普及により、生活リズムが加速し、消費者の映像コンテンツ視聴方式はテレビからモバイル端末へ移り、娯楽方式や情報を取得する方式もますます多元化して、いつでもどこでもコンテンツを取得できるところ、「テレビを観る」から「スマホをいじる」の時代へと、あっというまに移行しました。

 小型ディスプレイから大型ディスプレイへ、かつて機能的な家電であったカラーテレビは「インテリア」へと転換し、多くの若年層はテレビを買ったあと、1、2ヶ月に1回つけるかどうかといった具合。同時に、若者はプロジェクターのような、より大画面、より持ち運びのしやすい、より場所をとらない代替品を好むようになっています。

衰退するカラーテレビ市場に「スマホ勢」が殴り込み

 カラーテレビ市場は成長点がみつからないばかりか、インターネットの時代により、新たなプレイヤーが出現しています。

 2013年9月、小米は初めてのテレビ製品を発表、カラーテレビ市場へ参入することになりました。

 当時、小米最初のモデルとなった47インチ3Dスマートテレビの製品ポジションは「若者が1台目に買うテレビ」で、価格は2999元。当時、この価格は伝統的テレビメーカーだと40インチしか買えませんでした。「コスパ最強」を武器として小米テレビは急速に消費者を獲得し、とくに小米ファンから強く支持されました。

 ここ数年、大手スマホメーカー各社がAIoT分野で激しい競争を展開しており、小米だけではなく栄耀、華為、OPPOがテレビに進出し、スマートエコシステムの核心製品と位置づけて価格戦争、技術力勝負、ハイエンド製品といった方向でそれぞれ争っているところ。

 ほかにも、Realme、一加、ノキア、モトローラといった老舗スマホブランドも(中国の)海外でスマートテレビ新製品を投入しています。

 長虹、康佳、創維といった伝統的テレビメーカーに比べて、スマホメーカーは消費者に刺さるところを理解しており、技術優勢、ユーザー優勢、ブランド影響力を生かして家庭エンタメコンテンツをつくるビジネスモデルで消費者に受け入れられていると同時に、伝統的テレビメーカーを引き離しています。

 2021年、小米は900万台近い出荷台数で、中国テレビ市場の首位を維持しました。大手スマホメーカーが次々とカラーテレビ業界に参入することにより、伝統的家電ブランドが打撃を受けると同時に、新たな激烈な競争、業界再編が始まろうとしています。

生き残りの道を模索するテレビメーカーたち

 悪化する市場環境のもとで、十分な開発能力の成長点や先頭集団と競争する営業販売能力がなければ、転換していくしかありません。長虹らはとっくにこれに気づき、厳しい転換の道を歩み始めています。とはいえ、どう転換するかが問題となりますが、伝統的テレビメーカーらは、いまだ明確な答えが出せていません。

 長虹は00年代から多元化の道を開拓しようとしていました。電池、エアコン、さらに05年には携帯電話、IT製品にも進出。2008年には激アツ不動産業界にも突撃。2017年にはスマート家庭を提案し、スマート制御、安全、メディア、エネルギー、ヘルスケアと5つの事業を展開。

 しかし、長虹による多元化への道は、見事にズッコケました

 決算報告によると、2021年上半期に長虹ICT(情報通信技術)の営業収入は187.64元となり、四川長虹でトップの数字となりましたが、営業利益率は僅か大媒体と、全セグメントのなかで最低の数字に。ほかにエアコン、冷蔵庫、テレビといった伝統的家電の営業利益率もいまいち振るわず、不動産28.75%、特殊業務31.34%、システムエンジニア31.93%が稼ぎどころになりました。

 長虹と同様に、「没落貴族」康佳もこの十年間、「多元化」の転換路線、カラーテレビ製品一本足打法からの脱却を図っていました。不動産、スマート製造、新エネルギー、ヘルスケアなど、関係する事業は多岐にわたります。

 2018年に設立した康芯威公司は半導体チップの研究開発を開始、2019年には10.82億元を投じて江蘇省塩城にOST工場を開設、同年12月には量産を開始しましたが、高価格というわけにはいかず、あまり収入に貢献できていません。2021年の半導体事業は営業収入3.22億元、全体の1%にも届きませんでした。

 康佳は研究開発費を大して投入もしないのに半導体でショートカットしようとしたものの、これは非現実的であり、他の新事業も似たりよったり、業界内で規模の優勢を形成することもできず、利潤率は低い水準にとどまっています。

 長虹、康佳だけでなく、カラーテレビ市場の情勢危うしと見た創維も新たな食い扶持を求め、マルチメディア事業、スマート電器、スマートシステム技術、現代サービス業と4つのセグメントを立ち上げています。そのうち、スマート電器とサービス業の収入を合わせても営業収入の20%にも満たず、成功しているとはいい難いところ。

 マルチメディア事業に属する太陽光発電サプライチェーンは、ずっと市場の注目をつけ続けている分野であるものの、政府からの補助金詐取が横行していたり、莫大な資本投下が必要などの問題も多い業界で、創維がここから転換に成功できるかは、いまのところはなんともいい難いところ。

 創維は電気自動車も注目のポイント。プレゼンだけに登場するパワポ車ではなく、本当に作っているばかりか上場もしています。ただ、2021年の販売台数は4088台。この悲惨な数字の根本的な原因は製品力にあり、デザインにしろ、航続距離にしろ、創維の自動車は見るべきところがありませんでした。

論評記事のまとめ

 もちろん、これらかつてのカラーテレビ業界大手たちによる転換の努力は誰も否定できないが、多元化発展の道の中で、どのように新たなコースをしき、新たなイメージを形成していくか、いずれにしても、近年多くの伝統的製造業メーカーが模索してきた他分野横断的な発展はいずれも成功しておらず、今に至るも成功例がほとんどない。かつてのトップランナー、長虹たちは泥沼の転換の道から抜け出せないようだ。

 とにかく、技術革命は毎回産業構造のアップデートをともない、かつて輝いていた企業が淘汰されるものだ。「長寿」企業は時代とともにイノベーションと改変を維持しなければならない。

総評

 「テレビが売れない時代」への突入と同時に、若者に人気のスマホメーカーがハイコスパスマートテレビで参入、老舗メーカーにとって恐ろしい展開ですね。80年代、90年代にブイブイいわせていた大手テレビメーカー、日本に限らず中国もダメなんだというのは、少し新しい発見かもしれません。

 ただ、「テレビ自体がダメ」はどうしようもないにせよ、スマホメーカーのスマートテレビが取って代わる流れになっているのは、少し面白いところ。日本もそういう流れがあればもう少しは面白かったのではと思いましたが、そういえば日本はテレビメーカーがスマホ作っていましたね。

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