2014年現在、携帯電話の月額利用料金は各社いくらかの違いはあれど、ほぼ横並びの額となっています。ほとんど料金の違いがないからこそ、問題視されるほどの高額なキャッシュバックなどによって乗り換えでの契約獲得を目指しているとも言えます。
しかし一方で、一部の利用者にしか恩恵のない割引サービス…すなわち、障碍者向けの割引サービスに関しては、各社でかなり条件が異なります。筆者は昨年に身体にトラブルを抱えた結果、身体障がい者手帳の交付を受けました。そこで、携帯電話の支払いを見直すいい機会と考えて各社の施策を調べたのですが、会社ごとの違いがかなり大きいことに驚きました。
携帯電話の障碍者向け割引サービスとは?
日本の携帯電話大手3社は、以下のいずれかの交付を受けている方を対象とした割引サービスを行っています。
- 身体障がい者手帳
- 療育手帳
- 精神障がい者保健福祉手帳
- 特定疾患医療受給者証
- 特定疾患登録者証
この割引を、NTTドコモは「ハーティ割引」、ソフトバンクは「ハートフレンド割引」、auは「スマイルハート割引」と呼んでおり、各社その程度に差はあれど通常の料金プランより若干メリットが大きくなっています。本記事では、各社の割引サービスの内容を簡潔にまとめてみましたので、対象となる方はぜひ参考にしてみてください。
これらのサービスを受けるには、上記のいずれかの証明書を提示した上での申し込みが必要です。新規契約や機種変更を伴わず割引だけを申し込む場合は、キャリアショップへ行く必要があります(NTTドコモは電話などで書類を取り寄せて申し込むことも可能)。オプションサービスの申し込みやプランの変更と同じですね。また、各社とも割引を受けられるのは1人1回線のみですので、ご注意下さい。
NTTドコモ – ハーティ割引
- 基本料金が割引(割引率はプランにより異なる)
- 所定の各種サービスの料金が60%割引
- テレビ電話の通話料が音声電話の通話料と同額まで割引
- 新規契約および名義変更の手数料が無料(ハーティ割引との同時申し込みのみ)
- 契約変更および機種変更の手数料が無料
- 「104」番号案内が無料
基本料金の割引は、FOMAおよびXiの総合プラン(通話と通信ができる通常の携帯電話のプラン)は60%割引となります。おそらくほとんどの方は「タイプXi にねん」「ファミ割MAX50」「ひとりでも割」などですでに50%割引を受けているはずで、それらとの併用はできませんので、50%割引が60%割引に変わる、つまり「ハーティ割引」なしより20%安くなるということになります。
spモードなどの各種サービスについても割引になります。対象となるサービスの一覧はNTTドコモのウェブサイトをご覧ください。多くの方が恩恵を受けるのは「iモード」「spモード」「mopera U」でしょう。これらの料金もすべて60%割引となります。ただし「ISPセット割」は対象外となっています(下表参照)。
ハーティ割引なし | ハーティ割引あり | |
spモード | 300円 | 120円 |
ISPセット割(spモード) | -150円 | なし |
mopera U スタンダード | 500円 | 200円 |
ISPセット割(mopera U) | -150円 | なし |
計 | 500円/月 | 320円/月 |
現在、テレビ電話を利用される方は多くないと思いますので、主に料金に影響するのは基本料金割引と各種サービス料金割引でしょう。Xiスマートフォンとパケット定額サービスと「spモード」のみの契約の場合、-327円/月の割引を受けられます。大幅な値引きではないものの、長い目で見ればそれなりに恩恵はあります。
なお、「タイプXi にねん」などの2年縛りがついたプランからハーティ割引に変更する際の解約金は免除されます。また、「ハーティ割引」には解約金は発生しません。要は、いつでも「ハーティ割引」に切り替えが可能で、「ハーティ割引」ならいつでも回線を解約できるということですね。
ソフトバンク – ハートフレンド割引
- ホワイトプランの基本料金が無料
- パケット定額サービスの下限額が0円
- TVコールの国内通話料が半額
- 「104」番号案内が無料(別途条件及び申し込みの必要あり)
「ホワイトプラン」の基本料金934円/月が無料となります。シンプルでわかりやすく、かつ非常に値下げ幅が大きいです。
また、毎月それなりにパケット通信をする方には無意味ですが、「パケットし放題」などのいわゆる2段階制パケット定額サービスの下限額が0円となります。上記の基本料金無料と合わせれば、「S!ベーシックパック」の300円/月とユニバーサルサービス料だけでスマートフォン含む携帯電話が維持できてしまうことになります。
一般的な利用法ではパケット通信なしということはないと思いますので、多くの方にとっては合計の割引額は「ホワイトプラン」の無料分、-934円/月のみということになります。それだけでもかなり優遇されていますね。また、回線解約時の「ホワイトプラン」の契約解除料も免除されます。
なお、ブループラン(NTTドコモへの対抗プラン)およびオレンジプラン(auへの対抗プラン)にも類似の割引が提供されています。詳細は割愛しますが、オレンジプランは後述の「スマイルハート割引」にかなり近く、ブループランは「ハーティ割引」と比較するとやや見劣りするものになっています。
au – スマイルハート割引
- 基本使用料が50%割引
- au電話への音声およびテレビ電話通話料、固定電話への通話料が50%割引
- au以外の携帯電話・PHSへの音声およびテレビ電話通話料が20%割引
- au電話へのSMS送信料が50%割引、au以外の携帯電話・PHSへのSMS送信料が20%割引
- 「104」番号案内が無料
基本使用料に関して最も恩恵が少ないのがauです。基本使用料が50%割引になる「誰でも割」との併用ができないため、実質的には基本使用料の割引がありません。更に他社と異なり、スマイルハート割引には1年間の継続利用の縛りがあります。「誰でも割」の2年縛りを軽減する以外に恩恵がありません。
音声通話料やSMS送信料にも割引がつくのがauの特徴です。しかし、現在多くの方が契約しているであろう「LTEプラン」や「プランZシンプル」は、もともと午前1時から午後9時までの20時間はau同士の通話料が無料ですし、au同士のSMS送信料は24時間無料です。他社への通話料が安いのはメリットですが、他社への通話が多いのであれば、スマートフォンなら「LaLa Call」「050 plus」といった各種IP電話や「G-Call」「楽天でんわ」といった選択肢もあります。利用状況次第ではありますが、こちらもあまりメリットは大きくなさそうです。かなり昔の料金プランを想定した割引のまま、改訂がなされていないように見受けられます。
通常の2年縛りと違って1年縛りで契約ができ、解約金も安いというのは「スマイルハート割引」のメリットではありますが、他社はそもそも解約金はかからないわけで…。auを利用する前提なら契約して損はありませんが、これを目当てにauと契約する意味はあまりないと言っていいでしょう。なお、NTTドコモと同様に「誰でも割」から「スマイルハート割引」への切り替えの際に契約解除料は発生しません。
合計の月額料金はどうなる?
では、各社の割引を受けられる前提で試しにiPhoneを契約してみましょう。スマートフォンですので、パケット定額はフラットにします。
NTTドコモ | ソフトバンク | au | |
基本料金 | タイプXi | ホワイトプラン(i) | LTEプラン |
1,486円 → 596円 | 934円 → 0円 | 1868円 → 934円 | |
インターネット接続料金 | spモード | S!ベーシックパック(i) | LTE NET |
300円 → 120円 | 300円 | 300円 | |
パケット定額料金 | Xiパケ・ホーダイ for iPhone | パケットし放題フラット for 4G LTE | LTEフラット |
5,200円 | 5,700円 | 5,700円 |
|
計 | 5,916円/月 | 6000円/月 | 6,934円/月 |
※別途ユニバーサルサービス料が必要
※ソフトバンクおよびauは午前1時から午後9時まで同一キャリア内の通話無料、NTTドコモは「Xiカケ・ホーダイ」(667円/月)の申し込みで同一キャリア内の通話が24時間無料
※NTTドコモはテザリング永年無料、ソフトバンクおよびauは500円/月(2年間無料)
※ソフトバンクおよびauはiPhoneの場合、上表の額からパケット定額料金が2年間500円/月割引となる
期間限定の割引サービスを適用しない場合、一番安く済ませられるのはNTTドコモです。通話料の条件が他社とは変わってきますが、テザリング料金も必要なく使い勝手がいいです。また、例ではiPhoneを契約していますが、Androidスマートフォンも同額となります。あまり機種変更をしない方やAndroid派にはオススメです。
ソフトバンクも安いです。表ではドコモよりわずかに高額ですが、iPhoneの契約であれば2年間は「4G LTE定額プログラム」により「パケットし放題フラット for 4G LTE」が5,200円/月で利用できますので、ドコモよりも安くなります。2年毎(あるいはそれより短期)にiPhoneを買い換える方にオススメです。
auは「スマイルハート割引」だけではあまりメリットがありません。「auスマートバリュー」などの他の割引サービスが受けられる方や、au携帯電話との通話が多い方ならauがいいでしょう。
余談と注記
結局、筆者のメイン回線は以前から利用していたNTTドコモのままです。通話はほとんどせず、しかしテザリングは使いたいことや、SIMフリーのスマートフォンを利用する際に使い勝手がよいことから、NTTドコモが最適だと判断しました。
各々の利用形態によってどこのサービスがよいかは変わってくると思いますので、割引の対象となる方は、これらの割引も踏まえた上で一度通信キャリアを検討し直してみてはいかがでしょうか。
(本記事に記載されている料金は2014年3月20日現在の税抜き価格です)
(編集・校閲: 高橋ノゾム)