総務省「SIMロック解除」の解説:法制化は留保。ただし事実上の義務化へ

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 総務省は、「モバイル創世プラン」を発表しました。

モバイル創世プランとは

 これは携帯電話が国民生活の必需品となり、スマートフォンやウェアラブルデバイスが今後も広く浸透することを鑑み、モバイルを我が国創世の切り札に位置付けた上で、「自由に」「身近で」「速く」「便利に」をテーマに、SIMロック解除や環境整備、規制緩和などを進めていくもの。

 国民負担(通信費)の軽減を目指しており、携帯3社の横並びの料金に対して、低廉なMVNOを促進する施策を、総務省は展開していくことになります。

 モバイル創世プランの取り組みの一つとして、総務省はSIMロック解除を挙げています。

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SIMロック解除が必要な理由

 携帯キャリア、つまりNTT docomo、KDDI、SoftBankは、SIMロックをかけた上で端末販売を牛耳っています。SIMロックがかかっていると、端末をそのまま他社に乗り換えたり、海外で利用することができません。

 携帯キャリアがその上で端末を一括0円+キャッシュバック付きでばらまいているため、資金力のない通信事業者、Y! mobileやMVNOは大手3社に太刀打ちできず、健全な競争環境とは言えません。そのため、各社の販売する端末にSIMロックを解除させよう、立法措置をとってでも強制しよう、という流れになっていました。

ガイドラインの強制力

 SIMロック解除については、ガイドラインの改正を本年度中に実施します。改正ガイドラインにおいて、2015年5月以降発売のモデルについて、原則無料でSIMロック解除を行うことを各事業者に求めています。

 ただし今回、総務省はSIMロック解除について、法制化を「留保」しており、ガイドラインは強制ではなく、あくまで事業者主体の努めるべき取り組みに過ぎません。

SIMロック解除を求めるガイドラインを無視してきた携帯キャリア

 もちろん自由競争の観点において、総務省があくまで強制力を発揮しないことは望ましいところですが、2010年にもSIMロック解除を求めるガイドラインを総務省が出していました。

 しかし皆さんもご存知の通り、各携帯キャリアは、様々な言い訳をしながら(NTT docomoのAndroid端末やSoftBankのごく一部の機種を除き)SIMロック解除に応じず、事実上ガイドラインを無視してきました。今回、立法措置を見送り、あくまでガイドラインの改正にとどめたのは不思議に思ってしまいます。

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携帯キャリアの言い分

 各携帯キャリアがガイドラインを無視し続けた理由、つまりSIMロック解除に反対する理由として挙げているものは、以下の通り。いずれも総務省資料より。

1, 端末が必ずしも他の事業者のサービスに十分対応していない点について利用者に混乱が生じるおそれがあること

2, SIMロックを設定した場合と比較して販売促進費を抑制せざるを得ないことにより、端末の価格が現状よりも高くなるおそれがあること

3, 端末・通信サービスについて事業者独自のブランド戦略を進めるインセンティブが失われるおそれがあること

総務省による反論:SIMロックは利便性を害し、競争を阻害している

 これらの携帯キャリア側の1, 2, 3の意見に対する、総務省の反論はそれぞれ以下の通り。

1, 利用者に対し適切な説明をした上でその選択に委ねることが適当であると考えられる。

2, 端末の価格相当分が毎月の通信料から割り引かれることが一般的な状況においては、利用者にとって大きな問題にならないと考えられる。なお、端末購入時のキャッシュバックの多寡との関係とすれば、まさに行き過ぎた多額のキャッシュバックについては利用者間の公平性や公正競争の観点から問題であるとの指摘があったものであり、SIMロック解除によりこれに対し一定の抑制効果があることはむしろ望ましいと考えられる。

3, 事業者独自のブランド戦略は、SIMロックという手段で利用者を強制的に囲い込むことによってではなく、端末の魅力を最大限引き出す通信サービスの開発・提供によって進めるべきものと考えられる。

いずれの懸念点についてもSIMロック解除に応じないことの適正性・合理性の根拠とは認められない。

 このように総務省は、携帯キャリアのSIMロックは適正性・合理性はなく、利用者の利便性を妨げ、競争を阻害する要因であると一刀両断しています。その上で、改正ガイドラインに携帯キャリアが従わない場合、以下の様な強制力を用意するとしています。

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SIMロック維持は業務改善命令の対象に

 電気通信事業法第29条では、強制力のある「業務改善命令」について定めており、発動要件として、携帯キャリアのやっていることが「適正かつ合理的でないため、電気通信の健全な発達又は国民の利便の確保に支障が生ずるおそれがある」場合が該当します。つまりSIMロックを携帯キャリアが掛けていることは、これに該当します。

 この条文に基づき、改正ガイドラインのSIMロック解除を携帯キャリアが履行しない場合、総務省は業務改善命令を発動します。このため、少なくとも各社の2015年夏モデル以降の機種が、SIMロック解除サービスの対象になることは法的な実効性が担保されているものと考えられます。

ただしキャリア側に裁量はある

 ただ、各キャリアが実際にどのようなSIMロック解除サービスを提供するのか、具体的な細かい部分はまだわかりません。SIMロック解除を行えるようになるまでの最低期間を設定したり、分割金の残債がある場合はSIMロック解除サービス適用を個別に断ることなどは、ガイドライン上にも認められています。この場合、購入直後に海外渡航が必要になると、現地SIMカードを契約して利用することができなくなりますので、最低期間は短く設定されるべきでしょう。

 個人的な予測ですが、SIMロック解除サービスを適用後は、携帯キャリアが月々の通信料からの割引(月々サポート/毎月割/月月割)を減額するといった措置をとることで、SIMロック解除サービスを利用しづらくするのではと懸念します。ただ上記の携帯キャリアと総務省の問答にもあるように、総務省は月々の割引を、SIMロック解除後に端末代が高騰してもユーザーが困らないようにするためのものとして肯定していますから、SIMロック解除後にこうした割引を無くすことは、主旨に反するものだと考えられます。また、既にNTT docomoはSIMロック解除サービスを提供していますが、サービス利用後も割引は維持されますから、単なる杞憂に終わることを願います。

 また、総務省は通信契約の自動更新について、契約解除料不要な期間の延長や、更新月が近づいた場合に契約者に通知することを徹底することを求めていくものとしています。

まとめ

 これまでのまとめとして、SIMロック解除を法律で定めることは見送られました。しかし改正ガイドラインに従わない場合に、総務省が法律に基づく業務改善命令を出すため、実効性があります。その他に関しては、キャリアの自助努力が尊重されることになり、どのような形になるかは今後も続報に注視していく必要があります。

 総務省はモバイル創世プラン、SIMロック解除に関する意見募集を行っており、意見がある場合はこちらのURLを参考に、意見を送ってみるのもいいと思います。

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