コミュニケーションツールの「Discord」上で動作するBotを制作するためのAPIラッパーのうちの一つ、discord.pyの開発者がGitHub Gist上で開発の終了を表明しました。
制作していたRapptz(Danny)氏は趣味でdiscord.pyをおよそ6年間制作しており、本業は医療関係者。Discordの運営の態度について積み重なった不満を示し、本日限りで開発を終了することを表明しました。
同氏によると、2016年ごろにはDiscordが公式APIを発表、多くの機能について実装を約束しましたが、そのほとんどはDiscord側の開発リソースの不足により実現しなかったとのこと。
Discordは2015年5月にサービスを開始した新参者であったためRapptz自身も当時は仕方ないと考えていたようですが、3年後、Discord側でのAPIの制作の優先順位はさらに衰退。
Discord側がようやくBot関連に多くの開発リソースをつぎ込んだのは2019年11月ごろ、その後、悪意のあるbotを規制するためにDiscordが行った政策はRapptzをはじめとした多くの開発者はその意義について反発していたようです。
さらにDiscordはユーザーがBotを呼び出すコマンドの接頭辞を統一するスラッシュコマンドの普及をを急速に進めようとしており、将来的には75以上のサーバーに接続するBotは今までの主流の方法が禁止されるなどとしている点も、Rapptzのモチベーションを低下させているようです。
今後、discord.pyは開発を終了しますが、プロジェクト自体は読み取り専用で利用可能とのこと。また、discord.pyにはかなり動作状態が良好であるver2.0のベータ版も用意されてますが、Discordは新機能などの実装ペースが非常に速いため、このままの状態であれば新機能に追従ができなかったり、正常なBotの動作ができなくなる可能性が高くなります。
Rapptz氏はdiscord.pyを引き継いで制作するのは許可しないものの、discord.pyのデータをもとに改良を加えるフォークプロジェクトについては許可しています。しかし先述のスラッシュコマンドを実装する必要があるなど、道は険しいものとなりそうです。
現在、APIラッパーの半数がスラッシュコマンドに非対応。discord.pyを用いてBotを制作していた開発者は、ほかの言語にプログラムをすべて書き直して乗り換えるか、discord.pyのフォークプロジェクトの登場を待つ必要がありそうです。
また、筆者が参加しているコミュニティでは、同氏が開発を終了した理由がDiscordおよびその運営の対応への不満のため、同様の不満を抱えていてもおかしくないdiscord.jsなどほかのAPIラッパーも何らかの発表を行うのではないかと今後のDiscordの環境について不安視する声も上がっています。
余談ですが、筆者はRapptz氏が開発終了を表明する1時間前に、Discordにて本格的なBotを制作するためpythonの勉強を始めており、非常に複雑な心境に至りました。