安価なノートパソコンやタブレット、超小型デスクトップPCなどを販売する中国CHUWIは、Androidタブレット「HiPad Pro」の新モデルを発売しました。価格はAliExpressで299.99ドル(約3万4000円)から。
本機は買わない方がいいでしょう。しばらく様子見することを推奨します。
Index
SoCは大幅強化、国内初のHelio G95
従来のHiPad ProはSoCにSnapdragon 662を搭載するエントリークラスのタブレットでしたが、新生のHiPad ProはHelio G95を採用。
Helio G95は非常に安い価格でできる限りのゲーム性能を提供すると謳うプロセッサで、インドで14999ルピー(2万円)台で販売中のrealme 7に搭載されています。CHUWI計測のAnTuTuベンチマークでは31万点強を記録しているとのこと。
なお前モデルのSnapdragon 662を搭載するスマホとして、筆者が所持するOPPO A73でAnTuTuベンチマークを計測すると19万点台なので、かなり大幅な強化となっていることが伺えます。またRealme測定のデータですが、realme 7も同様の30万点台を記録しているため、一定の信憑性はありそうです。
顧客欺いた前モデル画面仕様、またやらかすのか
HiPad Pro新モデルのディスプレイは「画質を大幅に底上げ」したと謳うWQXGA(2560×1600)解像度の高精細な液晶ディスプレイを採用。画素数は4万円台なかばのXiaomi Pad 5と同等にもかかわらず画面サイズはやや小さめ。
日本語プレスリリースではHiPad ProがWidevine L1に対応しており、さもAmazon Prime VideoがHD画質で視聴できそうな文言が書かれています。しかしAliExpressではAmazon Prime Video対応は記載されていません。ここは疑ってかかるべきでしょう。
なぜなら、CHUWIはHiPad Pro前モデルにおいて、解像度をWQXGA(2560×1600)と表記していたにも関わらず、実際はフルHD+(1940×1212)であることが判明。さらに画面への出力までの段階で何らかの問題があるのか「画面が霞がかる、滲む」といった症状も複数報告。
しかも対応を謳っていたはずのAmazon Prime VideoのHD画質は、実は非対応。480pの低画質での再生しかできなかったのです。
画面の品質と表記は完全に顧客を欺くものであったと言えます。
この問題については国内ブログ「ChinaR(ちなーる)」が詳しいのでご参考までに。(記事)CHUWIはWQXGAでなかったこととPrime Video HD非対応だった問題については一旦謝罪するも、謝罪は削除済みで閲覧できません。(魚拓)
新モデルで特に気になるのが日本語リリースのこの部分。
また、Widevine L1対応ですので、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Disney+などのサイトで動画を視聴可能です。
「Widevine L1対応」は即ちSVOD高画質再生であることを意味しません。特にAmazon Prime Videoはサービス側の認証が必要。それがあやふやだったのも前モデルの失敗の大きな一因です。その点を真摯に反省しているなら、今回のリリースのような表記にはならないはずです。
「メーカーとしてSVODに認証を通しているから、Widevine L1のDRMレベルに相応しい動画画質で視聴可能です」といった書き方をしなければ、信頼してもらうことはできません。
注意しなければならないのは、よく見ると「高画質で」視聴可能とは書いていないのです。逃げの余地を確保しているように見えてしまいます。
しかしそもそもこの記述は変なのです。なぜなら、もしWidevine L1どころかL3ですらなく、Widevine自体に非対応であったとしても、Amazon Prime Videoは再生不能にはならず、SD画質で再生可能なはずだからです。
それを考えると「Widevine L1対応ですので、Amazonプライム・ビデオを視聴可能です」という文章は成立していません。Widevine L1対応ですのでと書く以上は、当然HD画質で再生できると考えた方が、まっとうなメーカーの機種ならまだ自然なのです。前モデルでやらかしたのはまさにそこ。なぜ再び同じ部分で顧客に不信感を抱かせるのか、意味がわかりません。失った信用を取り戻すための機種ではないのですか?
寸法が違うはずなのにレンダリング画像を使い回し
そして気になるのが筐体寸法。先代と比較して、本体のサイズは厚みを除いて変わっておらず、重量は480gから455gへと軽量化。
厚みに関しては先代が6.9mm、カメラ部の盛り上がりまで含まれているであろう仕様上のサイズで7.2mmだったのが、今回それぞれ、7.5mmと7.4mmへと変更されています。計測方法が変わったのでしょうか。
これだけならまだよいものの、AliExpressに掲載されていたHiPad Proの薄さをアピールする画像が、新旧モデルでノイズまで完全一致。
6.9mmというタブレットとしてはかなり薄い部類の先代のほうがスペック詐称していたということでもなければ、明らかな使いまわし。どこまでもやる気や誠意がありません。
アプリ表示しきれず「死に領域」
クアッドスピーカーを備え、4096段階のスタイラスペンに対応しているあたりはまだ評価できますが、HiPad Proが優れているように見える点として狭額縁があります。パンチホール式のインカメラと相まって画面占有率は90%を超えていると主張、ベゼルは4.5mmとこの価格帯のタブレットとしてはかなり優秀に見えます。
ですがプレスリリースを流した当日にはなかったはずの画像を、AliExpress上の公式ストアにしれっと追加掲載。なんと画面左にデッドスペースが発生しています。あきらかに最適化不足ではないでしょうか。
邪魔な巨大パンチホールでステータスバーが無駄に大きくなったarrows 5GやBALMUDA Phoneのような劣悪機種をもさらに下回ってきた衝撃。日本語リリースではこういう重大な事実は隠匿されているわけで、出来が悪い上に顧客に不誠実というのはいかがなものでしょうか。
「LDDR4X」メモリ8GBに接点なし極太キーボード
メモリは「LDDR4X」を8GB。LPDDR4Xと似て非なる聞いたことのない規格ですが、先代HiPad Proも採用していたようです。誤字かとも疑いましたがすべてがLDDR4X。
バッテリーは7000mAhでポートは当然USB Type-C。まるでキーボードに置くだけで接点にて接続できるのか?と一瞬思ってしまうような演出がなされていますが、こちらはBluetooth接続が必要なことは注意が必要。
そのほか、ストレージは128GBでmicroSDカードスロットを備えます。LTEに対応していると謳ってはいますが、バンドは1/2/3/4/5/6/7/8/17/20/38/40と、かろうじてSoftBankのみ使える程度の対応状況。そりゃこの程度のやる気ならローカライズはしないですよね……。
もはや今更なOSと価格
OSは「最新の」Android 11。Android 12はもちろん、大画面デバイス向けのAndroid 12Lが出そうな状況で何を言っているという印象です。本体色はシルバーとブルーの二色。
総評
価格はAliExpress上のCHUWI Official Storeにて3万5000円から。もちろんお届けには数週間を要します。
4万円台でiPad Air級の体験を実現できるXiaomi Pad 5が登場した現在、低品質なだけならいざ知らず、前モデルの不祥事と謝罪削除、相変わらず怪しい公式記載で不誠実など、HiPad Proをわざわざ選ぶ価値があるのか、大いに疑問です。HiPadとCHUWIのブランドの汚名返上、名誉挽回をはかる重要な機種であるはずが、なぜこんなにも雑なのか理解し難いところです。
スペック表
OS | Android 11 |
---|---|
SoC | MediaTek Helio G95 |
メモリ | 8GB |
容量 | 128GB(microSDカードスロットあり) |
画面 | 10.8型 (2560×1600) IPS |
カメラ | 800万画素 |
インカメラ | 500万画素 |
電池 | 7000mAh |
寸法 | 245×157.7×7.4mm,455g |
5G | 非対応 |
LTE | 1/2/3/4/5/6/7/8/17/20/38/40 |
3G | B1/B2/B4/B5/B8 |
その他 | スタイラスペン対応 |
2022年1月20日15時44分追記:SVOD画質部分に関する追記を中心に加筆、全体をブラッシュアップしました。
(編集・校閲: 會原(あいばら))