「ドコモは高品質」神話の終焉。
2010年発売のXperia SO-01B発売から使ってきたNTTドコモを解約しました。
自由にできる通信に見た夢から、そのあっけない没落まで。「高品質」だったドコモ回線を13年間使ってきたことを振り返ります。
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スマートフォンデビュー、通信の自由さに驚き
高校生の当時、携帯電話としてはauのガラケー、Sony Ericsson S001を利用していました。Twitterが少しずつ流行の兆しを見せてきた当時、デジタルガジェットが好きな自分は飛びつくようにXperia SO-01Bを購入し、ドコモに乗り換えました。
当時のモバイルネットワークはまだ3G。通信規格としてはauがCDMA2000、ドコモ・ソフトバンクがW-CDMAを採用しており、当然のようにすべてのデバイスがSIMロックされていました。
特にCDMA2000は通信方式の都合上様々な制約を受けており、通信速度が遅い、通話と通信が同時に行えないという欠点がありました。特にauでは通信量の増加を抑えるためか、ガラケーでもオープンアプリプレイヤーの一日の通信量を制限するなど、通信に関しても非常に自由度が低い状況でした。そんな状況下での真に自由な通信が行えるスマートフォンの登場は非常に印象的で、未来を感じさせるものでした。
当時、ドコモのネットワーク品質は非常に高く、基本的に高速なHSPAで通信できる状況でした。カバーエリアも広く、通信面での不満は全くありませんでした。一方、後発のソフトバンクは周波数帯の獲得やエリア展開の遅れで伸び悩み、特に地方では使い物にならない状況が続きました。
Xi(LTE)の時代へ、夢と野望に溢れたドコモ
2010年の年末頃、FOMAの後継となるLTEサービス、Xi(クロッシィ)が開始されます。
サービス開始当初は非常に限られたエリアでしか利用できず、スマートフォンに搭載されるモデムも大型で消費電力が大きく、大きく普及するのはチップセットにLTEモデムが統合されたQualcomm Snapdragon MSM8960搭載のデバイスの登場を待つこととなりますが、音声・動画のストリーミング再生が実用的になるXi(LTE)は概ね好評に受け入れられました。
ドコモはLTE技術の策定の上で非常に大きな役割を担いました。LTEは元々ドコモがSuper 3Gとして提唱したものが標準化された技術であり、規格が制定されてから導入する他社と比べ、大幅なアドバンテージがありました。
ドコモはその強みを活かし基地局の整備を行うだけでなく、デバイスに搭載するLTEモデムを富士通と共同で開発したり、真の4GとなるLTE-Advancedの投入も先駆けて行うなど、通信キャリアとしての優位性を発揮していました。今思えば、ドコモの通信回線への信頼はこの頃築き上げられたといえるでしょう。
一方で、この頃からドコモの回線品質に疑問を呈する声もいくつか上がるようになってきました。
具体的には、上りの速度が出ない、ping値(応答速度)が悪いというもので、当時はまだ上り速度やレイテンシを重視するようなサービスが少なかったからかあまり問題になることはなく、回線品質の計測を趣味としている人くらいしか認識していなかったように思います。
その傍ら、競合他社もLTEの整備には全力を尽くしてきました。auは制約が多いCDMA2000を廃するべくLTEの整備を加速させ、早々に完全移行を行いました。ソフトバンクも念願である900MHz帯の免許取得や事業者の買収を経て確実に改善を進めてきました。
あまりドコモを使い続ける理由もなくなってきた昨今、自分をドコモに引きとどまらせた理由は新料金プラン ahamoの登場でした。月額費用を抑えつつも帯域制限のないMNO回線を利用できるのは大きな魅力でした。
5G戦略を間違えたドコモ
2020年、各社は4Gの後継となる次世代の通信サービス、5Gのサービスを続々と開始していきます。現時点で5Gのメリットが活きそうなサービスが少ないことや新料金プランによる収益悪化の影響もあってか、各社4Gのときほど積極的な投資を行わず、徐々に普及させていく戦略を取りました。
一方、エリア整備の面で、ドコモは他社と違った選択を取りました。5Gエリアは新たに割り当てられた周波数帯で行い、既存4Gの周波数転用は将来的には行うものの、積極的には行わない、という戦略です。
ドコモは、4Gの周波数帯で提供される5Gは4Gと比べ速度面でのメリットがなく既存の4G対応デバイスの接続性が悪化するなどと主張し、既存4G周波数の転用を行うことは優良誤認に繋がるとまで言い切り、強い言葉を持って他社を牽制していました。
ドコモはその広いサービスエリアを活用すべく、ドコモ通信モジュール・ユビキタスモジュール・テレマティクスモジュールという形で組み込み向けのデバイスを販売しており、これらのモジュールは自動販売機などでも活用されています。転用5Gはこれらのモジュールへの悪影響を及ぼしかねねいため、ある意味では妥当な選択だと言えたのかもしれません。
しかし転用5Gを導入しないということは、5Gエリアが途切れ途切れになり、5Gから4Gへのフォールバックが多発するという問題を引き起こすことになります。5Gエリア外に移動した際に一時的に通信ができなくなることから、利用者の間で端末の設定で5Gを無効にする、という元も子もない方法での対策が図られる状況となってしまいました。
筆者も5Gエリアに入ると通信ができなくなる現象が多発することから端末設定から5Gを常にオフにしていました。速度面で困ることはありませんでしたが、周りのドコモユーザーも同様の設定をしており、5Gを普及させていく中でこのような対処が一般的になってしまうことには少々疑問が残る状況でした。
4Gも「パケ詰まり」、品質神話崩壊へ
2023年、パンデミックによる自粛ムードも徐々に収まり街に活気が戻ってきた頃、SNS等でも「ドコモ回線が繋がらない」という声が数多く見られるようになってきました。
特に電車内や人が密集する駅など、アンテナは立つものの通信が行えない(パケットが流れない)状況が多発するようになりました。
筆者も例に漏れず、東京駅や六本木駅、秋葉原駅で通信ができなくなる状況が多発し、あまりにも使い物にならないことからauのMVNOプランであるpovo 2.0をeSIMで契約し、デュアルSIM運用を行うようになりました。
ここでふと、povo 2.0の方がドコモより快適なことに気づいてしまいました。povo 2.0はMNVOとして提供されている以上、MNOのauより速度的には不利なはずなのに、です。当然ながら通信が詰まることもなく、速度は常にドコモより出ています。何より上り速度があまりにも違います。
そろそろドコモをやめることを、真面目に考えるようになりました。
home 5Gまでも通信品質が悪化
話は少々変わりますが、筆者は家のネットワーク回線としてドコモのhome 5Gを利用していました。home 5Gはドコモのモバイルネットワークを利用して家庭向けにインターネット接続提供するホームルータです。理論値 100Mbps しか出ないVDSLしか利用できない家に住んでいるので、こちらのほうがマシということで契約していました。
導入当初は下り 200Mbps 程度常に出ており、それなりに快適に使えていました。しかしドコモの回線品質が低下してくるとついにhome 5G まで「パケ詰まり」が発生するようになってしまいました。速度は出るものの、定期的に通信ができなくなってしまうのです。
できることはすべて試しました。home 5Gの設定から5G接続をオフにしてみたり、自動で再起動するようにしたりなどです。しかし結局解決には至りませんでした。
建物へのG.fast導入を期にauへ出戻りへ
そんな中、ある日自宅をKDDIの営業が訪ねてきました。「住んでいる建物にG.Fastが導入されたのでauひかりを契約しませんか?」というものでした。
G.fastはより高速化したVDSLで、NTT東日本のVDSLでは理論値として100Mbpsしか出ないところを、下り最大664Mbps/上り最大166Mbpsまで出るようにしたものです。家のインターネットが不安定すぎて困っていた筆者には朗報でした。
auひかりを利用するということは、スマートフォンもauにしたほうがセット割で月額費用が抑えられることになります。いい機会ということで、メインで利用しているドコモ回線をauにMNPしました。乗り換えた直後に秋葉原で速度計測した結果がこちらです。
一方、8月頃に秋葉原で計測したドコモの5Gの結果はこちらです。もはや比較にならないほど違います。
おわりに
もはや現状、ドコモに戻るという選択肢は私の中にはありませんが、LTEの規格制定など、日本を代表する通信キャリアとして業界をリードしてきたことは事実だと思います。
一方で現状、品質面に大きな問題を抱えているのもまた、元利用者として否定しようのない事実だと感じます。何が根本的原因かはドコモ側から発表がない以上想像の域を出ませんが、何にせよ通信品質のドコモが帰ってきてくれることを祈りたいと思います。