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シャープさんはなぜフラッグシップモデルを作るんですか?老舗ブランド浮気相手「あのライバル」をどう見てる?

シャープ通信事業本部パーソナル通信事業部中江優晃事業部長

 シャープは新製品発表会を開催、「AQUOS R9 pro」と「AQUOS sense9」を正式発表しました。

 特に注目が、夏モデルには見えなかったフラッグシップモデル「AQUOS R9 Pro」が発表されたことです。なぜ夏恒例のはずのハイエンド、proがないのか……失意の声が聞かれていましたので、ユーザーにとっては待望のpro登場となります。

シャープ通信事業本部小林繁本部長

 AQUOS R9 proは最上位のハイエンドだけあって、価格は19万円台となっています。

 昨今は国内市場が販売方式などの制約もあって、海外と比べてもASP(平均販売価格)が下がっているそうです。数が出にくい状況下でも、シャープがフラッグシップモデルを出す理由は何なのでしょうか?

 それはずばり、最先端のカメラ技術を追求することが、スタンダード・廉価帯の製品開発にも不可欠であるとシャープは説明します。つまりフラッグシップでの技術開発が、ラインナップの牽引に必要というわけです。

 それはSoC選定にもあらわれています。AQUOS R9 Proはハイエンド帯のSnapdragon 8s Gen 3を選択。処理性能こそ少し控えめにはなっているものの、カメラ画質処理に重要なISPはほとんど上位のSnapdragon 8 Gen 3譲りです。

 ちなみに夏ではなく、冬の投入タイミングになったことについて。R9/sense9/wish4といった定番ラインナップは季節ごとに安定的に出す方が顧客のためである一方、あくまでproを冠した最上位モデルを求めるのは、最も良いものを欲しい顧客であるためだと説明します。それだけ長い開発期間で、自信をもって作っているということでしょう。カメラソフトウェア等も作り込むことを考えると、OryonチップのSnapdragon 8 Elite搭載ではないのも致し方ないところでしょうか。

 世界のトップ集団とも競争するために必要な製品という位置づけの旗艦。一時期はシャープのカメラが劣後していた時期もあったことを認めつつ、近年、Leicaとの協業により評価が向上。シャープのベストを尽くせる製品として、ブランド効果も重視しているそうです。

 気になるのが、同じ老舗カメラブランドを提携相手を持つ「あの好敵手」との競争についてどう思っているのか?

 2021年にシャープと老舗ブランドLeicaが提携、当初は日本国内ではシャープが独占的提携だったと思いきや、今年からXiaomi 14 Ultraを皮切りに、Xiaomi 14TシリーズもLeicaありで日本市場に投入しています。

2022年にLeicaと提携したXiaomiは、2024年からLeicaブランドの端末を続々と日本投入。Xiaomi発表会にて筆者撮影

左からXiaomi 14 Ultra、Xiaomi 14T Xiaomi発表会にて筆者撮影

 これについてシャープは、Xiaomi対して、あくまでAIで作ってしまうのではなく、写実性に富んだ撮影といった価値観を共有して広げていく、ライバルでありながらパートナーでもあると語ります。

 なおXiaomi 14 Ultraはカメラグリップアクセサリーを使うことでシャッターボタンを備えることができますが、AQUOS R9 proは本体にシャッターキーを備えていることで、アクセサリー無しでも楽しめる部分を強みとして挙げました。

 さて、AIに関しては、「代行して時短する効率性」と「生成して提案する創造性」の2つの価値を軸にするといいます。AQUOS R9から取り組み始めた電話を再発明するAI電話アシスタントは、内容を聞き取って備忘録を作成してくれるように。さらに中国語とインドネシア語にも対応します。これはAQUOSが日本のみならず台湾、インドネシア、シンガポールへと積極的に市場を拡大しているため。

 シャープはそんなAIへと、今後どのように取り組んでいくのでしょうか?

 AI自体には以前から取り組んでいたシャープ。最近始めた電話を便利にするAIよりも前から、既にエモパーやAIライブストーリー機能がありました。その両者から新しい価値を生み出したいと、今後の進化をにおわせました。もっと気の利いた会話のできるエモパー、ちょっと見てみたいですね。

 ただし、Androidスマホを作るうえでGoogleのGeminiと争っても、顧客から見ると同じ機能のアプリは2つもいらないとし、競合せず、あくまでシャープならではのAI機能の提供をしていく方針を示しました。確かに、Geminiには自分から話しかけて家電を制御するなど、利用者が能動的にならねばならないのに対し、エモパーはAIがお節介に天気や世間話をしてくれるという真逆の発想なので、お互いに食い合う性質ではありません。

 最近では、iPhoneの「ライブ留守電」Pixelの「通話スクリーニング」といった電話の書き起こしをはじめとして、電話をAIで楽にする機能が流行りです。たとえば端末本体側での留守電機能も、元々はコールセンター側で行うもので、端末側でやるのはかつての日本独自のニーズで、チップセットベンダーに言っても「そんな機能はない」と言われたのでシャープは自分たちで無理やり作ったぐらいとのエピソードを披露。つまり、それと同じように、グローバルに広がっていくようなシャープならではのAIを活用した機能を提供したいということでしょう。

 なおAQUOS R9は同じ期間で前モデルと比較して「3倍売れている」とのこと。その要因として、「AI松田優作」CMは意外とブランドの平均年齢が下がった効果やリブランドの成功、雰囲気の変わったデザイン、価格性能バランスの良さを挙げました。

 以上、シャープ発表会取材からお届けしました。AQUOS R9 pro、これだけ気合入れて作ったものが出てきたのは本当に嬉しいですね。圧倒的なグローバルメーカーの最上位モデルに対抗するモデルがシャープから登場したというのは興味深いです。

 強力なR9 proがブランド最上位に来たことで、一気にラインナップが引き締まりました。三宅デザインの特異な外観も、6色展開のAQUOS sense9を見て「なるほど、こういうことか」と感心しました。より幅広い一般層にもターゲットを広げる上で欠かせない多色展開は、おそらく仰々しいカメラデザインが足かせになるはずです。ゆるキャラみたいなカメラ突起もあってか、各カラバリどれも可愛くて素敵だなと思いました。

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