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キャリアの「テザリングAPN」に批判集まる 総務省は静観の構え

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 総務省は、SIMロック解除に関する改正ガイドラインを公表しました。これにより携帯キャリアは、2015年5月1日以降発売の機種について、SIMロック解除のサービスを提供する義務が生じています。

 一方で、SIMロック解除以外のロックについては、今回の義務化の対象とはなっていません。

 現在、携帯キャリアから販売されている端末は、テザリングのAPNがロックされています。そのため、MVNOでの利用時にも、MVNOからは繋ぐことのできないテザリングAPNへ、無理やり接続されてしまうので、テザリングを利用できないことが多いのです。

 この問題について、NTT docomoのMVNOである日本通信や、インターネットプロバイダー協会、テレコムサービス協会、そして多数の個人ユーザーから、総務省にたくさんの声が寄せられていることがわかりました。掲載されたのは「『SIMロック解除ガイドライン』改正案に対する意見及び総務省の考え方」の別紙4。意見の総数は、実に22件にものぼっています。

 それらの意見の内容としては、NTT docomoの端末のテザリングAPNが固定されていることで不便を被っているとの訴えや、SIMロック解除時にテザリングAPNのロックも解除すべきである、というものです。

 これに対して、総務省の回答は以下。

■ 本改正案の「6.その他」で示す「端末に設定された SIM ロック以外の機能制限」は、例えば MVNO 等の他社の SIM カードが差し込まれた場合にテザリングができなくなるといった機能制限等を想定しており、基本的に本改正案に賛同の御意見として承る。なお、今後、総務省においても、事業者による取組を注視するとともに、必要に応じ適切な措置を講じることを検討してまいりたい。

御指摘のテザリングに関する一部機能制限は、本改正案「5.(1)利用者への説明」で示した「他の事業者のSIMカードが差し込まれた場合の一部制限」であり、利用者へ説明すべき事項に含まれており、特段の修正は不要と考える。

 つまり総務省としては、テザリングAPNのロックが掛かっている問題は、SIMロック解除後に他社で利用できる周波数帯が異なる問題と同じような文脈で捉えられており、あまり重要視はしていないことがわかります。まずはキャリアの自主努力を注視しようという姿勢です。

 しかしNTT docomoは、テザリングAPNに対して以下のように意見を述べており、現時点ではAPNロックの解除をする気はなさそうです。

■ 弊社が提供する端末は、弊社ユーザが利用することを想定して提供しているものであり、ユーザ保護やユーザ利便性の確保、端末の仕様等の観点から端末に一定の制限をかけざるを得ない場合もあるものと考えております。
したがって、SIMロックが解除された場合にSIMロック以外の機能制限についても
解除することを求めるとしているのは適当ではないと考えます。

 これに対する総務省の回答は以下の通り。

■ 機能制限の目的が自社の利用者保護である場合においても、事業者においてはその手段の必要性や利用者のニーズも踏まえつつ、利便性とのバランスを考慮して適切な対応に努めることが必要と考える。

 あくまで利用者のニーズを踏まえるべきとの立場ではあるものの、やはり具体的にロックを解除するようには言及していません。

 SIMロック解除は義務化となったものの、やはり携帯キャリアは、「自社網・自社サービスで、そのまま端末を使ったほうが便利」という方向に、少しでも持って行きたいものでしょう。つまりSIMロック以外の囲い込む手段が必要となります。そうなると、テザリングAPNのロックの問題などは、ますます軽視されることになるでしょう。総務省が言わないのであれば尚更です。

 こうしたSIMロック以外での囲い込みについて、以下の個人ユーザーの言及は面白い予測です。

SIM ロックの解除義務化によって、各キャリアが SIM ロック以外の方法で他社で端末を使えなくする可能性があります。具体的には、端末の対応周波数帯の中で自社が対応していないものをすべて削除してしまうなどをされてしまう可能性があります。その結果、今まで発売していた機種よりも対応周波数帯が少なくなる可能性があるかと思います。

 確かに、SIMロックでユーザー流出を防止できなくなるなら、端末の利用可能な周波数を削ってしまえ、というのは、実際にその作戦を取るかどうかは別として、決してありえない話ではありません。これについて総務省の回答は以下。

■ 総務省においては今後、必要に応じガイドラインを見直すとともに所要の対応を行うこととしており、御指摘の点についても留意してまいりたい。

 こうしたやりとりを見るように、ガイドラインの改正を待っても、問題は山積していることがわかります。改正ガイドラインはあくまで事業者に対する制約・指針であり、それを元に事業者がどのようなプラン・サービスを展開するのか、具体的な内容は2015年5月1日が近づかなければわからないことです。引き続き注視していく必要がありそうです。

情報元総務省
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