「NHKが契約を申し込めば2週間で受信料契約が自動成立」というNHKニュースは正しいか?

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 NHKが、放送受信料の契約をしていない「未契約世帯」を簡易裁判所で訴え、勝訴し、NHKが契約を求めてから2週間経てば自動で契約が成立するとの判決が下ったと、NHKニュースが報じました。

26日の判決で堺簡易裁判所は「受信契約に応じない場合でもNHKが契約締結を求めて2週間たてば契約が成立しているというべきだ」という判断を示しました。
そのうえでテレビの設置が確認されたあとの平成17年6月からことし3月までの受信料27万円余りを支払うよう命じました。

大阪の未契約世帯に受信料支払い命じる判決 NHKニュース

 一見、NHK集金人がやってきたら、その2週間後に勝手に契約が成立してしまうのではないか、との不安を抱いてしまうニュースであり、ネット上でも話題となりました。

 実際は、あくまでこれは堺簡易裁判所での判決であり、本人の承諾なく2週間で自動契約成立という判決が出たのが関西初というだけの話で、既に東京高等裁判所で2013年10月に同様の判決が出ています。一方で2013年12月には、同じく東京高等裁判所で別の裁判長が、放送法や受信規約からはNHK単独の意思で契約が成立するということは伺えないとの判決を下しています。最高裁判例はまだなく、司法の判断は別れている案件です。(以下、東京高裁下田裁判長の判決では『承諾を命じる判決が確定した段階』ならば受信契約が成立するとしていますが、これらの裁判は視聴者がNHKを見ている証拠がある特殊例です。これについては後述)

下田裁判長は「放送法には『申し込みと承諾が一致する以外の方法でも契約が成立する』とうかがわせるような規定はない」と指摘。総務相が認可しているNHKの受信規約でも、NHK単独の意思表示で契約が成立する方法は定めていないとして「契約は受信者に契約の承諾を命じる判決が確定した段階で成立する」と判断した。

NHK受信契約「相手の承諾必要」 高裁判決分かれる :日本経済新聞

 さらに、これらの件について、単にテレビがあるからというだけで裁判が起こされたわけではありません。何らかの証拠が必要です。また、NHK集金人が部屋内を無断で覗き見たような例は証拠とはならないでしょう。(そもそもNHKには捜査権はありませんし、無断で覗き見たり、無理やり家の中を確認したりといった行為は刑法に触れる可能性もあります。退去勧告に応じず居座る場合、不退去罪となります。)NHK集金人が来てから2週間後ではなく、NHKが何らかの証拠に基づいて受信機設置を認定し、内容証明郵便を未契約世帯に送り、そこから2週間後に自動契約となる、というのが今回の簡裁の判決です。

 では、NHKは何を証拠にして裁判に勝てたのか?未契約者が、放送法64条に定められたNHK放送用の「受信機(テレビ)」を所持している証拠となり得るものを、NHKが確認できる手段は以下の通り。

  1. 「テレビ設置状況調査票」に、受信機ありと回答してNHKに送付した場合
  2. NHK-BS放送に表示されるNHKとの契約を促すテロップに従い、住所氏名とB-CASカード番号をNHKに教えた場合
  3. NHKが法令に基づいて弁護士を通じてスカパーに個人情報を照会した場合

 ジャーナリストにして現市議会議員の立花孝志氏いわく、NHKは未契約の個人世帯に対して100件以上裁判を起こしてきているようですが、全て2に当てはまるようです。つまり、NHKのBS放送を見ていることを自ら申告した、明白な証拠がある世帯にのみ、訴訟を起こしているわけです。(個人的には、NHKの放送を見ている世帯は当然、受信契約を交わすべきだと思いますが)

 NHKは、NHK側が勝った裁判だけ、都合のいい部分だけを伝えています。実際は契約が自動的に交わされるかどうかについて、まだ司法判断も別れているもの。テレビを持っている未契約世帯はNHKと契約が自動成立するのが確定的かのような印象を受けるNHKの発表は、正確ではありません。プレスリリースならまだしも、そうではなく、公共放送の本義であるNHKニュース内で、さも中立的な報道かのように織り交ぜるのは公共放送としていかがなものでしょうか。そのような印象を広めることで、集金人のトークや恫喝を後押しし、契約者を増やしたいということでしょうか。普段、公共放送としての建前上、特定の企業名や製品名を出すのを極力避け、一般名称に置き換えているのがNHKです。最近では、IP電話乗っ取り事件では、むしろ企業名や製品名を明かして注意喚起すべきところを、隠して報道していました。そこまで徹底していたはずのNHKにしては、公共放送としての詰めが甘いと言わざるを得ません。

 最近ではテレビを持っている千葉県の男性が、NHKに訴えられ、男性の身に覚えのない受信料契約書について筆跡が一致せず、NHKが敗訴するといった事件も起きています。現状の「契約者から受信料を集め、その受信料を集金人周回や訴訟費用に突っ込み、契約者を増やす」という制度は不健全であり、限界がきていると思います。NHKは受信料の支払い率は75%と発表していますが、これも事業者契約で水増しされた数字であり、実際の個人契約に試算し直すと約50%程度であると立花孝志氏は指摘しています。このままいけば、真面目に払っている視聴者の方が少ない、という時代も到来するかもしれません。監督官庁である総務省はこのようないびつな現状を放置すべきではないと思います。英BBCのようにスクランブルを掛けるなど、きちんとお金を払っている視聴者だけが放送を適正に見られる仕組みを、真剣に検討すべき段階がきているのではないでしょうか。

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