サプライチェーン筋に精通した台湾メディア「DIGITIMES」は、任天堂の最新ゲームハード「Nintendo Switch」の増産について報じました。
Nintendo Switchの生産不足はDRAMを含む主要部品の供給不足に起因するため、ハードウェアの問題や欠陥ではないとしました。製造はFoxconn(ホンハイ)と日本のHosidenによって行われており、半分以上がFoxconnによって担当されているとのこと。Pegatron TechnologyやWistronも製造に加わろうと交渉活動を行っているそうです。
大きな需要に応えるべく、月間200万台を生産。2017年の年間出荷目標は2000万台に設定されているとのこと。
さらにDIGITIMES曰く、2018年初頭には、ついに中国市場でNintendo Switchの販売を開始する予定であるとのこと。このため来年の出荷数はこれを大きく上回るものと見られます。
中国は6億人のゲームプレイヤーを抱えた世界最大のゲーム市場である一方、その大半がPCゲームやスマートフォン向けのゲームであるため、PlayStation 4もまだまだ普及しておらず、家庭用ゲームハードは未開拓、言い換えれば開拓余地の大きい市場とも言えます。そこに任天堂がNintendo Switchで切り込むという噂は以前からありましたが、DIGITIMESにおいても同様の内容が報じられたのは興味深いところです。しかし任天堂の中国進出には、中国当局による表現規制という障壁もあると言われています。検閲をクリアするのには海外企業は相当な時間と労力を要します。
Nintendo Switchに関する動きで注目すべきは、中国Tencent(騰訊)です。Tencentは、Nintendo Switch向けのMOBA「Arena of Valor」を、今冬βテスト開始予定であることを明らかにしています。
TencentとはメッセージングアプリWeChat(微信)を展開するテクノロジー企業であり、eスポーツの代名詞ともなっているPC用MOBA「League of Legends(LoL)」を開発する米Riot Gamesを傘下に収めています。そのLoLを模倣したかのようなスマホ向けMOBA「王者栄耀(おうじゃえいよう:Honor of Kings)」を基本無料で展開しています。
王者栄耀は、MOBAという本来コアゲーマー向けのジャンルでありながら、2億のユーザーのうち半数が女性で、しかも世界で最も大きな利益を上げるゲームタイトルとなっています。今やTencentはソニーや任天堂よりも利益を出す巨大企業であり、任天堂とはある種のライバルでもあります。
「Arena of Valor」は、ゲーム内容を見る限り、キャラクターや服装、UIなどの違いはあれど、ほぼNintendo Switch版「王者栄耀」です。PC、スマホに続き、家庭用ゲーム機に進出したいTencentと、中国市場に進出したい任天堂の思惑が一致したのではないか、というのが投資家筋の反応です。現地でTencentが協力すれば、任天堂の中国市場進出は容易となるでしょう。今後の動向に注目です。