Valve社は、「Steam Link App」と「Steam Video App」を5月21日に配信開始しました。
Steam Linkアプリは、SteamをインストールしたPCのゲームを、スマートフォンから無線経由でストリーミングプレイできるというもの。遅延なく、PCゲームをスマホから遊べるのは圧巻。
このアプリは当初、App StoreとGoogle Playで配信される予定でした。Apple Insiderは、iOS版Steam Linkをテストする動画を公開していました。
しかし現在において配信が行われているのは、Android版のみです。
Valveの公式発表によれば、Appleは5月7日には、Steam Linkアプリを一旦は承認。このため、ValveはSteam Linkアプリのニュースアプリを大々的に打ち、これはすまほんでも記事にしています。
ところが話題になった後、Appleは改めてこのアプリをリジェクト。Appleの審査チームは「ビジネス上の競合」を理由とし、Steam Linkアプリを承認を取り消したとのことです。
Valveは、「Steam Linkアプリは、既にApp Storeで利用可能な数多くのリモートデスクトップアプリと変わらない。にも関わらずAppleはその魅力を拒否、ブロックしたままだ。ValveはiOS版リリースのために多くの時間を費やしてきており、はっきり言って失望している。Appleの再考を願う」と、怒りを表明しています。
iOSのシェアは海外では低いですが、日米においてはシェアも高く、こういう案件には公取委が独禁法の観点から介入してもいいのでは、と常々思うところ。
ただし、ArsTechnicaは、Steam Linkアプリで接続中、ユーザーがスマートフォンから、ビッグピクチャーモードのインターフェイスを介して、Steam内のゲーム購入に辿り着けてしまうのがガイドライン抵触の原因ではと推測しています。Appleは、iOSアプリ内の購入に、30%の収益配分を要求しているからです。この件についてのArs Technicaからの照会に、Apple広報部は沈黙しています。
確かに、ゲーム購入も可能ですね。
おそらくValve社としてもAppleに対して収益分配に従うつもりはないでしょうし、Valveに理がないとは全く思いません。事実、Valve社の説明通り、Steam Linkアプリはリモートデスクトップアプリとよく似た挙動をしています。マルチモニター環境で、PC側からマウスカーソルで、別のモニターをアクティブにした場合、スマートフォン側にはSteamではなくサブモニターのデスクトップ画面が出力されるからです。PCから様々なものを購入できるからと言って、一般的なリモートデスクトップアプリがAppleに収益を払っているわけがありませんし。
とはいえ、Appleの機嫌を損ねてしまったのも事実。Valve社は、「iOS専用のビッグピクチャーモード」を用意しない限り、App StoreでSteam Linkアプリを配信するのは難しいのではないでしょうか。iOS版Steam Linkからは購入機能を制限することで、問題は解決できます。
予告通り配信されず、しかも今後配信があったとしても購入機能が制限されている可能性が高そうだとなると、割りを食うのはiPhone使いのPCゲーマーということになります。
大体、スマホから一般的なリモートデスクトップアプリでPCのSteamを開いて、ゲームを購入すれば同じ話です。そんな無駄なことでリジェクトして、Valveに無駄な開発リソースを強いるというのは、実にしょうもない話だなぁ、と思います。iPhone使いのゲーマーの皆さんは、サブにAndroid端末は一台持っておくのが良いですね。