ソフトバンクの新製品発表会があった今日、何より業界に衝撃を与えたのは、放射線測定機能付きスマートフォンPANTONE 5 107SHだろう。
東日本大震災が引き金となって起きた原子力発電機事故によって、多くの人たちが目に見えない「放射線」という恐怖と闘いながら生きている。
放射線測定器としての性能
- * 検出器:シリコン半導体 測定対象:ガンマ(γ)線 測定範囲:0.05μSv/h~9.99μSv/h(誤差 ±20%)
- * 本アプリケーションは慶應義塾大学の地球環境スキャニングプロジェクトにより監修されています。
- * 放射線測定機能については、開発中の内容であり最終的に画面や仕様が変更になる可能性があります。
- * 本製品に搭載された放射線測定機能は、家庭において身のまわりの空間の放射線量(ガンマ線)を簡易的に把握する目的のものです。それ以外の目的で使用しないで下さい。
- * 食料品や水に含まれる放射性物質の測定はできません。
- * 本製品に搭載された放射線測定機能の故障による損害、測定された数値による損害、その他本機能を使用することによって生じた損害について、シャープ株式会社およびソフトバンクモバイル株式会社は一切その責任を負いかねます。
- * 免責事項および詳細につきましては発売日以降に、シャープSH DASHサポートページをご覧ください。
引用元:PANTONE® 5 SoftBank 107SHトップ|SoftBankラインアップ :SH DASH
放射線測定器の大衆普及機か?
製品の発表を聞いて、私は強い憤りを感じていた。その感情をTwitterでグチグチとツイートしていたら、とある方から考えさせられるリプライをいただいた。
「放射線量が気になる人は、このスマートフォンでなくても、いずれにせよ(性能が定かではない)測定器を購入している。だとしたら、ちゃんとしたメーカーが作っているものが流通するほうがいいのではないか」
といった内容だ。(かなりの意訳だが)
私は納得してしまった。素性のわからない、性能も定かでは無い詐欺まがいな会社の測定器を購入しデタラメな値を見たり、値段のつり上げられた測定器を買うよりは、一定の品質が担保されており、社会的に認知されているシャープというメーカーの製品のほうがよっぽど安心できるからだ。
判断する知識
しかし、そうは問屋が卸さない。
たとえば、上に記した測定器の性能を理解し、検出される結果をどこまでの人たちが正確に把握できるかがわからないからだ。
事実、どこで買ったかもわからない測定器を使い、通常生活するなかで当たり前のように被爆する放射線量(自然放射線量)を「危ない!!」「異常だ!!」とわめき散らしている人もいる。
つまり、示される値が正常なのか、異常なのか、何が原因で発生している放射線なのか……。そういったことがわからない消費者にもこの商品が行き渡ることになる。知識の無い人たちに、その情報はどう解釈されるのだろうか、それらのリテラシー(与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力)が、一般人にあるのだろうか。
もしも私がこのスマートフォンを持ったとしよう。私の住んでいる近辺(私は岐阜在住だが)の放射線量を測定したとしよう。
0.07μシーベルト/h(毎時0.07μシーベルト)
と表示されたとしても、それが正常なのか異常なのか、はたまた緊急なのか、判断できないのだ。
(なお、この値は産総研:つくばセンター放射線測定結果を参考にさせていただいた)
私が放射線について詳しいというつもりは全く無いが、放射線について勉強はしたし、事情に明るい教授に話しを伺い、学びを深めたつもりの私でも、パッと表示された数値の判断に困るのだ。
ソフトバンクとシャープの社会的責任と義務
これらの製品を販売するに踏み切ったソフトバンクと製造を行うシャープは、この端末を一般社会に販売することへの社会的責任と義務を負うことになる。
端末が使いづらくて「使いづらい端末だ」となるだけでは済まされない。社会的に問題視されており、多くの人が過敏になっている「放射線量」を可視化するのだ。そして、それを毎日持ち歩く携帯電話に搭載するのだ。その責任は非常に重たい。
少なくとも、機種のパンフレットには測定された値が、正常であるのか異常であるのか判断をする方法を明記し、売りにしている「簡単に放射線量が見られるウィジェット」には、正常か異常かを判断できる表示、異常ならばパニックを防ぐため出来うる対処を表示する必要があるだろう。
後は防水端末のように、起動するごとにしっかりと免責事項を表示、製品の仕様(空気中の線量しか計測できないことであったり)、判断基準を表示するべきだ。107SHに目をやるたびに「ああ、もうわかってるってそんなこと」と思わせる仕様にしなければならない。
そうでなければ、放射測定器なんていうものを、一般人の手に届く場においてはいけない。私はそう考える。