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Android 5.0とは:使いやすく多機能に、そして開発しやすく

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 先日正式に発表され、いよいよリリースされるAndroid 5.0 Lollipopは、Android 4.0 ICS以来の大型アップデートとなり、最新のデザインと機能を取り込んだモバイルOSとなります。また、Android 4.4 KitKatから続く流れとしてローエンドの端末でも動作するよう配慮されており、キャリアやメーカーの対応次第では多くの端末がアップデート対象となることが予想されます。多くの方が恩恵を受けるであろうLollipopの新機能や変更点をまとめて紹介します。

マテリアルデザインの採用

 まず、最も注目を集めているであろうポイントとして「マテリアルデザイン」と呼ばれる新たなデザインが採用されます。「デザイン」と書くと単なる見た目の話のようですが、実際はユーザーインターフェースのフレームワークから設計されています。つまり「新しいデザインを考えた」のではなく、「新しいデザインの規則やアイデアを考え、それに基づいてデザインした」ものなのですね。デザインに一貫性が生まれると共に、その枠組みが物理的なものの動きを参考に考えられているため、自然な操作ができるように作られています。

 実際のデザインを見ると、平面的なフラットデザインを元に奥行きや動きを駆使し、見るべき箇所、操作すべき箇所を見失わないよう工夫されています。パッと見て「あ、わかりやすい!」と感動するデザインではなく、そもそもわかりやすいということを意識させないデザインかと思います。

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 この枠組みはスマートフォンやタブレットのみならず、WebページやAndroid Wear、果てはAndroid Autoなど、Googleのインターフェースに広がっていくことになります。これにより、アプリ間だけではなくデバイス間でも一貫性が生まれ、より操作がわかりやすくなります。

ART(Android Runtime)の採用

 Android 4.4 KitKatでは開発者向けオプションとして提供されていたランタイム「ART」が正式に採用されました。これにより、アプリのコンパイルが動作中ではなくインストール時に行われるようになるため、アプリの実行速度とバッテリー消費の改善に繋がります。

 よくわからない!という方は、今までアプリの実行中にその都度おこなっていた準備動作をインストール時に全部まとめてやってしまうので動作が早くなる、と考えて頂ければわかりやすいのではないかと思います。ちなみに、その代償としてインストールにかかる時間が少し伸びるのと、アプリに必要な容量が少し多くなります。

64bitへの対応

 iPhone 5sとiOS 7から遅れること1年、Android 5.0も64bitアーキテクチャに対応しました。同時に発表されたNexus 9が64bit対応CPUであるNVIDIA Tegra K1を搭載しています。また、これまでも64bit対応CPUを搭載したスマートフォンはいくつか発売されており、アップデートによって対応する可能性があります。

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64bit対応CPUとAndroid 5.0を搭載するNexus 9

 64bitであることの主なメリットは「64bitに対応した処理ならばこれまでの32bitより早い」ことと、「メモリ4GB以上にも対応できる」ことですね。すぐさま大きなメリットがあるわけではありませんが、長期的に見て動作速度の改善などが期待できます。

通知機能の改善

 通知機能が改善され、ロックを解除することなく様々な情報にアクセスできるようになります。もちろん、どの通知をロック画面に表示するかを選択することができるので、プライバシー面にも配慮されています。

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 また、電話着信などの優先度の高い通知を前面に表示する機能が追加されました。これまでは電話着信があると自動的に応答画面に遷移していましたが、前面に重ねる形で表示できるようになります。それまで見ていた画面を電話などで邪魔されずに済むようになります。

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 スマートフォンでゲームをプレイする方には特に重宝しそうですね。

マルチタスク機能の改善

 これまでアプリ履歴画面はひとつのアプリをひとつのタスクとして表示されていましたが、ひとつのアプリを複数のタスクとして扱うことができるようになります。例えばChromeブラウザで複数のウェブページを開いていた場合、これまでは「アプリ履歴ボタンをタップしてアプリ履歴の一覧からChromeを開き、Chromeのタブ一覧画面から目当てのウェブページに切り替える」という操作が必要でしたが、Android 5.0では「アプリ履歴ボタンをタップしてアプリ履歴の一覧から目当てのウェブページに直接切り替える」という操作ができるようになります。 

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 この機能の利用は強制ではなく、Chromeの場合はこれまでと同じ切り替え方法を選択することもできるようです。 

Bluetooth関連機能の強化

 Bluetooth関連のAPIが強化され、セントラルモードに加えてペリフェラルモードの利用が可能になりました。

 Bluetooth接続は、2つの機器が親機と子機のような(厳密には違うのですが)関係になります。例えばパソコンが親機ならBluetoothマウスが子機にあたるのですが、これまでAndroidは親機に相当するモードしか利用することができませんでした。Android 5.0はAndroid端末が親機側と子機側、両方の仕組みを利用できるようになります。これによって、例えばAndroid端末同士をBluetooth接続するような機能も開発できるようになります。アプリや端末を作る人たちがより柔軟にBluetoothを使えるようになった、と考えておけばよいと思います。

 ちなみに、iOSには「iBeacon」や「AirDrop」という機能がありますが、この機能はBluetoothのペリフェラルモードを利用しています。iOS 6以降、iOS搭載端末はペリフェラルモードに対応しています。iBeaconのような機能も今後Androidに登場してくるものと思われます。

グラフィックス機能の強化

 OpenGL ES 3.1をサポートし、更にAndroid Extension Packの導入により2Dと3Dのグラフィックスパフォーマンスが飛躍的に向上しています。それぞれの細かい機能はさておき、結果としてゲームの映像がモバイルらしからぬ凄いものになりそうです。以前、Android “L”として発表された際に公開されたデモ映像がこちら。

 あくまでもデモ映像ですが、Nexus 9にも搭載されているTegra K1を利用しているとのことなので、Android 5.0搭載端末でこのレベルのゲームがプレイできるようになる日も近いのかもしれません。 

カメラとビデオ機能の強化

 カメラ機能の強化、というよりは、カメラAPIの強化でしょうか。アプリがカメラのDNGイメージ、HDR+パラメータ、シャッタースピード、ISO感度、焦点距離にアクセスできるようになり云々…つまり、普通のデジカメでは調整できていたパラメータをAndroidのカメラアプリでも調整できるようになる、より多機能なカメラアプリが登場する、ということです。

 また、新たにRAWフォーマットでの記録に対応しています。一眼カメラでは当たり前の機能で、最近では高級コンバクトデジタルカメラにも対応製品が増えてきたので馴染みのある方も多いと思いますが、端的に言えば「この形式で保存しておけば撮影後に写真のより細かい調整ができる」ものです。端末に搭載されているカメラモジュールが進化してきたからこそ有用な機能です。

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こういった端末を想定している?

 ビデオ撮影も強化され、非圧縮フル解像度のYUV映像を30fpsで撮影できるようになります。映像処理というのはかなり端末の能力を酷使するので、高性能なカメラがついているだけで綺麗な映像を撮影することができるわけではないのですが(Xperia Z2の4K撮影が温度上昇のため数分で止まってしまうのも、放熱が追いつかないほどの処理能力を発揮する必要があるからだと思われます)、そのあたりもこれまでより改善されているようです。

 ネットワークストリーミング時のビデオエンコードに、H.265が利用できるようになりました。Ustreamやニコニコ生放送のような映像配信に利用する際に、より高画質な映像を送ることができるようになると思われます。もちろんサービス側の対応が必要ですが…。

 カメラ撮影周りの強化はかなり力が入っていますね。上の写真のような極端な端末が独自仕様で対応してきたであろう部分がAndroid標準の機能として提供されるようになっているので、開発費用の圧縮や端末の安定動作にも役立つかもしれません。

WebViewの更新とOSからの分離

 地味な更新ですが、WebViewがGoogle Playから更新できるようになりました。

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 WebViewはAndroidアプリからウェブサイトなどを開く時に使うコンポーネントで、簡単に言えば「アプリの中でウェブサイトを表示したい時にはこれ使えばいいよ!」とAndroid側が用意しているセットです。今まではこれがAndroidそのものに組み込まれていたので、Androidのアップデートがない限りはずっと古いままでした。GoogleはChromeブラウザはかなり頻繁にセキュリティなどをアップデートしていますが、WebViewはAndroidのアップデートがあるまで放置せざるをえない状態でした。

 今回、晴れてOSから独立したことにより、Androidそのもののアップデートを待たなくてもWebViewがアップデートされるようになりました。WebViewを利用したアプリ(2chブラウザや、ブラウザ系ソーシャルゲームのアプリ版などは多くがそうかと思われます)の動作速度やセキュリティの改善などが早くなる可能性が高いです。

バッテリー持続時間の改善

 バッテリーの持続時間を最大90分改善する…とのことですが、これに関しては謎です。バッテリーの持ちを改善するモードがあるのか、それともAndroid 4.4と比較して最大90分バッテリーの持ちが良いのか、その90分というのは待受時間なのか、はたまた使用時間なのか…。少なくとも改善であることは確かです。

 また、満充電までの残り時間がわかるようになります。充電が切れるまでの時間を表示することも可能です。

 アプリ開発者がよりバッテリー消費の少ないアプリを開発するためのSDKとAPIが追加されます。これはバッテリー消費のタイミングや原因を分析したり、バッテリーの残量に応じてアプリの動作を変化させることができるかなり高度なもののようで、ユーザーが恩恵を受けるのもそう先の話ではないかと思います。

セキュリティの改善

 これまではオプションで提供されていた端末の暗号化がデフォルトになります。盗難や紛失に遭った際に、ストレージからデータを抜き出すことができなくなります(これまではツールを使えば可能でした。ご存知でしたか?)。

 また、新しく「スマートロック」が利用できるようになります。この機能で、BluetoothやNFCを利用してロック画面認証をスキップすることができます。Android WearやBluetoothヘッドセットなどと接続している間だけはロック画面を無効化し、何らかの理由で離れて接続が切れたらロック画面を有効化する、といった設定ができます。特に画面が大きい端末ではパスコードやパターンロックの解除は面倒なので、ありがたい機能です。

 ちなみに、Xperia Z3にはほぼ同じ機能が独自に実装されています。

デバイス共有機能の追加

 スマートフォン向けのマルチアカウント機能が追加されます。これまでタブレットで利用することができた通常の追加ユーザーに加えてゲストユーザーという機能が追加され、一時的に端末を貸し出す際に利用することができます。置き忘れるなどして自分のスマートフォンが手元になくても、他のスマートフォンからアクセスして電話やメッセージを利用することができます。(…とあるんですが、通話料とかどうなるんですかね?)

 スクリーンのピン留め機能が追加されます。例えば他の人に自分のスマートフォンを渡して今の画面を見てもらいたい時に、他のアプリまで見られたりしないようあらかじめ固定しておくことができます。地味に役に立ちそうな機能です。

クイックセッティングパネルの改善

 画面上から引っ張りだすクイックセッティングパネルが改良されます。iPhoneには搭載されており、Androidでも端末メーカーが独自に実装していることも多いフラッシュライトなどが追加され、またWi-FiやBluetooth、GPSのON/OFFが簡単になります。 

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  個人的に、フラッシュライトはあまり使う場面がなくてもついていてほしい機能なのでありがたいです。アーミーナイフみたいな感じで、使わなくてもついてると嬉しい機能ってありますよね。

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ネットワーク機能の改善

  ネットワークの切り替えが改善され、シームレスな接続が可能になります。YouTubeなどのムービーを見たり、SkypeやLINEなどで通話しながらWi-Fiの圏外に出てネットワークがモバイルに切り替わった時でも問題なく通信を続けることができます。これまでならWi-Fiの電波が弱くなってモバイルに切り替わる前に通信できないタイミングが発生していましたが、Lollipopはうまく処理してくれます。これまた地味に嬉しい機能ですね。Wi-Fiスポットを利用する時にも便利そうです。

 また、Wi-Fi接続時にそのWi-Fiが問題なくネットワークに繋がっているかを判断してネットワークを切り替えてくれます。Androidデバイスとルーターの間が問題なく接続されていても、何らかの原因でルーターがネットワークから切断されていることもありますよね。そういった場合でも問題なくモバイルネットワークに自動で切り替わって通信できます。

画面OFFの状態からでも”OK, Google”

 すでに一部の端末ではサポートされていた機能ですが、画面がオフの状態からでも”OK, Google”と発声することでGoogle Nowが起動し、音声入力を受け付ける状態になります。キーワードが少々異なりますが、この機能が搭載されたMoto Xの映像がこちら。

 ただし、この機能を利用するにはハードウェア側の対応が必要です。Nexus 6とNexus 9は対応しています。

アクセシビリティの改善

 弱視や色弱のユーザーでも使いやすいように、テキストのコントラストを強調したり色を反転したり、色差をわかりやすく調整したりすることができます。フラットデザインの流れをくむマテリアルデザインはあまり文字のコントラストが強調されたデザインではありませんが、見づらいと感じるユーザーは設定でより見やすく調整することが可能です。

NFCで初期設定の移行が可能に

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 それまで利用していたAndroid端末から新しいAndroid端末にNFC経由で初期設定を移行することができるようになりました。 端末同士をタッチさせれば移行ができます。Playストアからダウンロードしたアプリも簡単に引き継ぐことができます。

その他

 その他にも、Android 4.4で追加された「Android Printing」が改良されて印刷プレビューが利用できるようになるなど、多数の変更点があります。また、Android 5.0のリリースに合わせてGoogleが提供するAndroidアプリにもすでに少しずつ改良がなされており、マテリアルデザインの採用や機能の追加が行われています。

 Android 5.0は11月3日(日本では11月4日)に発売されるNexus 9に初めて搭載され、また同日からいくつかのNexusデバイスに配信されるとも予想されています。誰もが驚くような新機能が搭載されるわけではありませんが、Androidがユーザーにも開発者にも目を向けた存在となるための重要なバージョンアップだと思います。正式リリースが非常に楽しみです。

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