学校でのスマホ使用の規制はよくある話ですが、中国の軍隊、人民解放軍ではどのようにスマホの使用を管理しているのでしょうか。中央軍事委員会お墨付き、解放軍報社の運営する中国軍網に、新疆(ウイグル)軍区の某師(「師」は日本の「師団」に相当)での、新条例にもとづくスマホ使用管理に関する記事が掲載されていたので、ご紹介します。
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新疆の人民解放軍兵士のスマホはどのように管理されていた?
プライバシー侵害は日常茶飯事
まず、この師団の指揮連(本部中隊、中国の「連隊」は日本の「中隊」に相当)での、これまでのスマホ管理について。
張くんは入隊前、スマホでゲームをしたり、ネット動画を観たり、WeChatのタイムラインを見るのが好きな「スマホ中毒」だったといいます。部隊へ来てから、スマホの使用は管理が厳格になったばかりか、頻繁に検査されるようになりました。
連隊ではスマホの集中管理を実施しており、週末休日に、全連隊の兵士が順番にスマホを受け取り、毎回手続きをすることになっており、往々にして3, 40分かかる上に、使い終わって返す際にも同じ手間がかかるのだとか。週末にやっとの思いでスマホを手にした張くん、ゲームにログインして遊ぼうとしたら、機関監督検査人員がスマホの検査にやって来ました。
本来機関の正常な検査は何でもないことですが、以前は上級によるスマホ検査の窓口が統一されておらず、機関各部門が順番に検査を実施、しかも検査の時期がたいてい週末の休みに設定されていたのだとか。次々と検査に来られては、たまったものではありませんね。
彼女とのチャットもアダルト動画サイト視聴も検閲される
張くんが耐えられなかったのは、毎回の検査でスマホのパスワードを入力し、スマホにインストールしているアプリ、保存ファイルの内容、閲覧履歴などが検閲されることだといいます。彼女とのチャット記録まで、検査されるのだとか。張くん、「この種の検査は徹底しているが、兵士のプライバシーを侵害している」と、キッパリ言ったそうです。この記事、人民解放軍の公式メディアに掲載されているものなのですが、そう考えると緩いのだか厳しいのだかわかりませんね。
もっとひどい例もあるようです。ある時、連隊の兵士がスマホを使用して「格調の高くない内容」を閲覧している状況が発生、上級に報告後、張くんの連隊では兵士のスマホにライブアプリをインストールすることが禁止され、動画サイトでのアカウント登録ができなくなったそうです。「格調の高くない内容」、要はエロ動画でしょうか。
スマホを持つことすらやめる兵士も
この面倒に耐えられなくなった張くん、勢いでいっそのことと、スマホを実家へ郵送してスマホを持つのをやめたそうです。
張くんのようにスマホを家へ送る兵士の他にも、スマホの使用をあきらめて、電話とメールしかできない「古い携帯電話」を購入する場合もあるのだとか。これなら、上級による検査で絶対に問題がでないといいます。
管理する側の意見
兵士らの意見に対し、師の機関では兵士らの視点から問題を見て、スマホ管理の中での非合理的、非合法的な種々の現象について分析し、原因を探ったといいます。「兵士らの意見」、よっぽと苦情が殺到したのでしょうか。
なお、部隊ではほかにも、電波が弱い上に兵士らが一斉にスマホを使うと回線速度が極めて遅くなり、彼女と通話ができずにケンカのもととなった件も紹介されていました。
「スマホには普通、撮影、位置情報、インターネットと情報通信などの機能があり、もし管理が厳格でなければ、容易に機密漏洩の温床になる」と、師の機関組織での座談中、少なからぬ幹部が懸念を表明したそうです。
一方で、スマホ管理措置は過剰なところがあり、兵士がスマホの使用を控える状況が発生している、これは管理側からすると心配事は減るが、兵士のスマホ利用の自由度を束縛し、兵士の「ユーザー体験」も損なっているとの意見も出たとか。人民解放軍、そんなところに目を向けるのかと少し驚きます。
新条例で兵士のプライバシー重視に
さて、「新条例」実施後、この師では条例規定に従ってスマホの管理方式を改めたといいます。師団の機密保持委員会による統一管理となり、実際の必要に応じて不定期に検査を行い、可能な限り兵士の休日や課業外時間のスマホ利用に影響を及ぼさないようにし、検査時にも兵士のプライバシー権の尊重に注意、好き勝手に兵士のインストールするアプリを制限しない、ということになったそうです。また、従来の集中管理から、各班での管理に改め、利用を便利にしたといいます。
また、兵士のスマホアプリ使用環境改善のために、機関は各単位にスマホの充電器の設置を指導、地方通信部門と協力して、各連隊に無線ルーターを設置し、ネット回線の問題も解決したとか。
急速に近代化が進む人民解放軍ですが、兵士の日常生活も、だいぶん進歩しているようです。