米・トランプ政権に続き、豪政府も次世代通信規格5G整備からの華為(Huawei)締め出しを表明。米政府は「国家の安全を脅かす」、豪政府は「通信の安全が守れない」ことをそれぞれ理由として挙げていますが、果たして理由はそれだけなのでしょうか。
中国HUALADY新聞に、トランプが華為を恐れる理由について、原則論と具体的なエピソード両方を説いた記事が掲載されていました。紛争地帯にもドンドン入っていき、全世界に張り巡らされる華為のネットワークに驚かされる記事です。
華為と中国政府の関係
華為による米国市場での活動が、中国政府を支援して米国の利益に損害を与えるというもの。トランプは1,000件以上の米企業リストを作って中国資本による投資を制限する可能性がある、といいます。敏感な技術を獲得し、中国政府に利益をもたらすことで、米国の安全に影響を与えることを心配している、といいます。これはよくある話ですね。
「推定有罪」
華為以外の中国企業は米国の関連法律を順守しているわけではなく、例えば少し前に爆発したZTEとイランの交易は明らかに米国の利益を損ねており、それがその他の中国企業に波及しているというもの。米国会はこれによって騒ぎ立てており、華為を含む多くの企業に対し合法性の調査を実施しているといいます。
いずれも政治問題
一つ目は政治的な安全、二つ目は経済と法律問題から論じているものの、本質的にはいずれも政治的問題であると指摘します。なんといっても米国の関連法律の一部は国際法と抵触するものであり、根本的には米国の政治利益を守るためであると言います。
例えばイラン制裁は、本質的には中国政府にとって公平なものではない、しかし米国は強大であり、こう決めたのだ、よってこう審査するのだと言われれば、米国市場を放棄しない限り、そうするしかないと言います。この指摘は間違っていないと思いますが、中国政府の姿勢も似たり寄ったりな印象があります。
また、米国はいつも国家安全を理由として中国企業に制限を設けているが、中国の発展への反応が過剰だと言います。米国人は知っている筈だ、華為のような中国企業が今日のように発展したのは中国政府の意思ではなく、企業努力の結果だとも言います。トランプは何故こんなにも華為を恐れるのか?それには具体的な理由があるそうです。
「第二の在外公館」Huaweiはパキスタンで大活躍
華為の通信業務、特に基地局の建設は、全世界で先頭を走っていると言います。華為は多くの紛争地帯にも事務所を置いているそうです。ある時には華為は「第二公館」の連絡作用をするのだとか。昔の日本商社みたいですね。外国でなにか危険があれば、華為の海外事務所が、非公式の連絡所になる、例えばアフガンがそうだといいます。
アフガンの華為代表への取材によると、タリバン武装勢力支配地域へ入った時、スパイだと疑われ、頭に銃口を突きつけられたそうです。そりゃそうだろうというか、本当によく行きますね。
パキスタンでも華為は活躍しているそうです。
2016年、パキスタン首都・イスラマバードで抗議活動があり、筆者も現地の友人に連絡をとろうとしたものの、電話もWeChatもつながらなくなったといいます。後から判明するに、パキスタン警察が通信網を切断したそうですが、現地では「よくあること」であり、抗議デモ活動があると、警察は簡単にこのような強硬手段に出るのだとか。日本人に言わせると中国も大概ですが、それは気にせずに次へ進みましょう。
そんなわけで、小米などの中国スマホメーカーも現地に入っていけないのだとか、何故ならしょっちゅう通信が切れる地域、衛星電話でも売るのかという話だと言います。ところが、パキスタンで最も有名な中国企業は華為だそうです。まさに現地の通信状況がよくないからこそ、華為にとっては通信網を整備する市場がある、というわけなのだとか。
ほかにも、元記事筆者の華為の友人は、以前西アフリカの紛争地帯、リベリアとセネガルに何年もいたと言います。当時筆者は記者をしており、内戦について現地の中国人に電話取材していたことから知り合ったそうです。好奇心から「こんな小国、しかも統治に失敗した国で、華為はどんな業務があるのか」と尋ねたと言います。
すると返ってきた答えは、華為は現地で基地局整備などの通信業務をしている、戦乱はいつかは終わるものであり、もし終息しなかったとしても、通信は必ず需要がある、これが華為の存在している理由であるというものだったとか。
この類の紛争地帯に、米国などの西側諸国の企業は、ほとんど業務を開設しておらず、これも多くの企業が華為を尊敬、ひいては恐れ、嫉妬する原因だといいます。確かに、「凄い」の一言ですね。
また、筆者は、もし自分が華為の経営者だとすれば、こんな決定はできないと言います。もちろん彼ら海外職員の待遇は悪くないが、命がけの仕事だと。
技術漏洩体質という偏見?
ほかに、民営企業の全体的な環境も、トランプが恐れるところだと指摘します。これについては、実は華為とあまり関係がないといいます。少なからぬ外国人は、中国は国営であろうが民営であろうが、みな政府と密接な連携があるものと考えており、中国には完全に独立した民営企業はなく、政府が要求さえすれば民営企業はなんでも提供する、外国から買った技術もそれに含まれると見ている、と言います。確かに、日本でも完全にそういうイメージですね。
彼ら外国人による中国へのこのような誤解と浅薄な認識が、華為のような有名民営企業にまで累を及ぼした、よって華為が調査されるのも、他国から恐れられるのもいいが、ある程度は「とばっちり」或は「濡れ衣」だといいます。
以上、最後の部分は、こうは言いますが、やはり身構えたくところという感想ですね。それと、華為の紛争地帯へ突っ込んでいく姿勢、こればっかりは、確かに凄いですが「日本企業も見習え」とは言いにくいところ。
中国政府と華為の関係は知りませんが、やはり華為が「恐るべき企業」なのは間違いないようです。