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カウントフリー禁止に非ず。総務省、ネット中立性に関する研究会中間報告書案を公表

 総務省はネットワーク中立性に関する研究会中間報告書案を発表しました。

ネットワーク中立性

ネット中立性、一歩踏み込む

 インターネットは誰もが活動できる共通基盤として、通信手段・表現・イノベーションの場としてオープンに提供されてきたとし、これを維持するため通信事業者がトラフィックを公平に扱うネットワーク中立性が非常に重要、必要な措置を講ずるべきとしました。

 アメリカやEUでもネット中立性を何らかの形で規定。日本においては、2007年にネットワーク中立性に関する懇談会が「ネットワークの中立性を確保するための三原則」を発表しており、これまでネット中立性に関する大きな問題は発生してこなかったとする一方、内外を巡る状況が大きく変わっていることから、原則を新たに「インターネットの利用に関する利用者の権利」として明確に位置付けるとしました。まず原則から権利へと踏み込んで再規定することで、電気通信事業者などがより尊重して対応することを期待するとしています。

ネット中立性に関するルールが必要な分野は?

 ネットワーク中立性に関するルールが必要な具体的事項としては以下を挙げました

  • (A)一部のトラヒックの通信帯域を制限する「帯域制御」
  • (B)一部のトラヒックを優先的に取り扱う「優先制御」
  • (C)一部のトラヒックを使用データ通信量にカウントしない「ゼロレーティング」や「スポンサードデータ」

ゼロレーティングに指針

ゼロレーティングは「萌芽的なサービス」、一律禁止はしない

 前日、大手メディアは「動画SNS放題などゼロレーティングが規制される」と大々的に報じていました。ユーザーからは「えっ、カウントフリー無くなっちゃうの?」と不安の声が聞かれました。

 しかし実際の報告書案を読むと、ゼロレーティングやスポンサードデータは萌芽的なサービスであり、一律禁止ではなく予見性を確保する観点から一定の判断基準を示し、ケースバイケースで事例を検証・分析し、問題のある事例があれば電気通信事業法等に基づき事後的に対応すべきという、ごく真っ当な方針を示しています。

ゼロレーティング解釈指針

 各事業者や消費者団体と連携して、年内を目処に「ゼロレーティングの提供に関する電気通信事業法の規律の適用についての解釈指針」として取りまとめて、運用していくことが適当であるとしました。法律解釈上何がダメなのか、線引きを明らかにしないと、事業者側も困るでしょう。明示してくれるのは助かりますね。

 その内容は以下の通り。要は「ライバルの不当な排除はダメ」というものが中心。

  • 電気通信事業者がゼロレーティングの対象となるコンテンツ事業者に対し、他の電気通信事業者による同等のサービス提供を困難にするような契約の締結を求めることは、ネットワークレイヤーにおける競争確保の観点から、不適切ではないか。
  • 市場支配力を有する電気通信事業者(MNO)が自己の特定関係事業者のコンテンツのみをゼロレーティングの対象とすることは、コンテンツ・プラットフォームレイヤーにおける競争確保の観点から不適切ではないか。
  • MNOによるゼロレーティングの提供に関しては、自社ネットワークを活用するMVNOによる同等のサービス提供が不可能な条件で、ゼロレーティングサービスを提供していないか監視が必要ではないか。
  • 支配的コンテンツ事業者(プラットフォーム事業者である場合もある)が電気通信事業者に対し、競合コンテンツをゼロレーティング対象とすることを困難にするような契約の締結を求めることは、他のコンテンツ事業者(プラットフォーム事業者を含む)にとって、コンテンツ・プラットフォームレイヤーにおける競争確保の観点や、当該電気通信事業者の電気通信サービスの利用の公平性の観点から不適切ではないか。
  • 電気通信事業者がコンテンツ事業者を不当に差別的に取り扱わないよう、ゼロレーティング対象コンテンツの選定に関する条件等の公開を電気通信事業者(最終利用者市場において一定のシェア・支配力を有する者)に対し求める必要があるのではないか。
  • 一定のシェア・支配力を有する電気通信事業者については、ゼロレーティングの普及に伴うトラヒック増加に対応可能となるようなネットワーク整備(設備投資等)が確保されていることが必要ではないか。
  • 十分な情報に基づく消費者による選択を確保するため、電気通信事業者はゼロレーティング対象コンテンツに関する条件(料金等)やパケットのカウントの実態を利用者に対し適切に情報提供する必要があるのではないか。

 「MNOが自社の動画サービスだけを優遇する形でのゼロレーティング(例:dTVだけ容量消費しないドコモ)なんてものができたら、さすがにマズイだろう」といった、当たり前のものも含みます。(が、『広く受け入れる』建前のウルトラギガモンスター+が直ちに規制されるようなものではない)

透明性確保が必要

 総務省は、ゼロレーティングを提供する事業者から提供条件等に関する情報を収集し、提供条件の公平性・適正性が確保されているかを検証した結果を公表する取組が必要であるとしました。取組を通じて、電気通信事業法違反となる事例・ならない事例を具体的に明示していくことが望ましいとしています。

 また、ゼロレーティング実施に当たり、通信の秘密の侵害に当たらない要件についても整理する必要があるとしました。

 SoftBankはゼロレーティングを提供する「ウルトラギガモンスター+」の開始にあたって、ゼロレーティング対象のサービスを「広く受け入れる」という建前を掲げ、帯域制御ガイドライン等の問題をクリアしている、という形をとっています。それで総務省に相談をして了解を得て、サービスが開始され、消費者にも受け入れられ始めています。

 しかし、もし仮にその「広く受け入れる」というのが嘘で、SoftBankの基準が本当は滅茶苦茶だったら、SoftBankに敵対的なサービスや新規事業者のサービスが対象に事実上加われないものだったら、どうでしょうか。それはライバルの不当な排除ですよね。新たな面白いサービスが発展しにくくなる可能性もあり、公平競争を実現する上で極めて問題でしょう。そういうことを防ぐため、透明性確保を行う必要があるわけですね。

総評

 MNO・MVNOのカウントフリーサービスを納得して既に利用しているユーザーにとって、事前報道は不安に思うところがありましたが、今回の総務省の中間報告書案を読む限り、拙速に禁止するわけでもなく、それなりに真っ当な印象です。

 いくらカウントフリーサービスが便利でも、ネットユーザーの権利を不当に侵害したり、競争停滞を招くことがあれば、それは消費者の利益にならないため、しっかり見ていくというのは、大切なことだろうと思います。

情報元総務省
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