中国「IT之家」報道によれば、中国の大手ECサイト京東から、神舟(HASEE)製品の出品が停止されていることが2月24日にわかりました。また、神舟の総経理・史俞馨は「Tech星球」のインタビューに応じ、京東との「不平等条約」について語るとともに、「こんな小銭のために争うことないじゃないの」と呼びかけました。
神舟の総経理が語る京東との関係も、「大手販売チャネルとメーカーの関係」ということで興味深いので、あわせてご紹介します。
Index
PCメーカー「神舟(HASEE)」VS「京東」
神舟電脳「京東が売掛金を支払わず」場外乱闘に発展
今回の出品停止の原因はなんと、神舟電脳と京東との間の「売り掛け金」トラブル。今月20日、神舟電脳は京東が3.383億元(約50億円)の売り掛け金を支払っていないとして、北京の裁判所へ訴えを起こしたと発表。
同時に、神舟電脳董事長呉海軍は自身の微博アカウントで、京東と京東の董事長である劉強東に「カネを返すのは当然のこと。我々は正式に京東を訴える!」と直接@リプを飛ばしました。
「有名企業の経営者がガチな宣戦布告リプライって……」と驚くかもしれませんが、中国だとよくあることです、多分。
京東「神舟の契約違反が原因」、裁判へ
これに対し京東は同20日、神舟電脳が製品販売契約に違反していることが、売り掛け金を精算せず支払いを中止している理由であると反応。
同日夜、神舟は違約について否定すると同時に、京東の声明は売り掛け金未払いを認めたことに他ならず、神舟が再三京東に督促しても支払われない状況においては、裁判所への訴えは完全に合理的、合法的な解決ルートであると声明。
21日午後、神舟電脳は微博公式アカウントで、京東は売り掛け金から1,559万元の支払を強要し、神舟電脳に「製品検索での降格」、「イベント参加停止」、「製品取扱停止」などの「五大酷刑」を課したと公表。
「五大酷刑」画像まで作っていますが、お気づきのように、これは「神舟電脳にユニークな微博担当者がいる」、というわけではなく、中国企業の広報というのは、こういうものなところがあります。
京東は「双方の争議について、我々は法により公正な裁決がなされると信ずる」と声明。どうやら裁判戦に突入するようです。
神舟電脳の総経理語る「神舟と京東のこれまで」
なお、神舟電脳の総経理・史俞馨が「Tech星球」のインタビューに応じ、京東との関係や、これまでに経緯について詳しく語っています。
「神舟と京東の付き合いは古く、もう10年になる。京東の初期、DELLやHPが京東に出荷したがらなかった頃、神舟は公式アカウントで最初に参加した。その後、2012年に神舟はゲーム向けノートPCをやるようになり、京東のゲームノーパソページは、神舟が京東へ提案したもの。発売当初、神舟のゲームノーパソは京東の同ジャンルのうち60~70%のシェアがあり、昨年も30%となった。神舟は京東のゲームノーパソ・ジャンルを支えていたと言っていい」
売り掛け金の支払期日について
「当初、支払期日というものはなく、後に支払期日がどんどん長くなっていき、今では45日になっている。しかし実際のところ、我々が出荷してから売り掛け金を回収するまで、京東が滞納しなくても60~70日なら幸運な方で、70~80日かかることもざらにある」
「原因は、出荷時間は京東がパソコンに入力してから起算され、我々はそれ以前に出荷しなければならず、その間の時間を京東は計算に入れない。決まりの45日が過ぎてから、我々は精算を申請することができ、京東での手続きに入る。京東の運営・仕入れ担当者が帳面を確認し、請求書を発行、経理の処理に行列し、その後経理副総裁の署名をとって、ようやく支払われる」
「昨年から、京東は多くのメーカーに対して、支払い期日をこれまでの45日から60日へ引き伸ばし、供給側の資金繰り圧力が大きくなった。ここ1,2年、我々は何度も京東とやりとりし、京東に即金支払或いは1~2週間の期日短縮を要求しているが拒否されている」
大手の決済プロセスのご都合に合わせないといけないのは、何処も同じなのですね。
今回の争議について
「京東は我々メーカーに対して、すべての在庫は出品後、20日以内に販売しなければならず、売れなければ不良在庫と見做すと要求しており、したがって通常は20日、早ければ2週間で売り切っている」
「我々と京東の今回の売り掛け金争議は、昨年10月に我々は出荷し、これは昨年の『双十一』キャンペーンのときに売り切ったもので、現在の物流速度から言えば、代金引換としても3-4日で京東は代金を受け取っているはずで、つまり11月15日以前には、これらの売り掛け金は京東の懐に入っているはずだ」
「頭にくるのは、既に120日くらいになるが、いまだに売り掛け金を受け取っていない。我々は2月10日になってようやく催促状を出した」
京東の主張する「神舟による契約違反」についてはよくわかりませんが、おそらく次の事柄を、なにかの条項にひっかけているのでしょうか。
「去年の『双十一』の際、『天猫』(大手ECサイト)が割引クーポンを消費者に配り、我々もこのイベントに参加した。京東は我々に天猫でのイベントに参加しないよう要求、我々は拒否した。すると京東は、もし神舟が天猫のイベントに参加するなら、同様の割引クーポンを京東でも実施し、その費用は神舟が負担するよう要求してきた」
「もし京東が自分で消費者への割引を負担するなら同意したが、京東が負担すべき割引をメーカーに負担させようとしてきたので、我々は断固として拒否した」
最近、楽天が公正取引委員会から怒られていましたが、なんか似たようなものを感じますね。京東は神舟に対して売り掛け金から1,559万元の差し引きを要求していますが、どういうことでしょうか。
京東が天猫でのクーポン適用販売価格に合わせて神舟の製品を強制的に値下げし、11月下旬に京東は神舟へ2,500万元の差し引きを要求した、と史俞馨は答えており、おそらく神舟は売り掛け金として「クーポンを適用していない金額」を請求し、京東はクーポン適用後の売り掛け金しか支払わないと主張、その差額が2,500万元だかで、京東がその後やや譲歩して1,559万元という話になっていると思われます。
なお、史俞馨総経理は双方の董事長が同郷であることに触れ、次のように述べています。
「うちの呉董事長と(京東の)劉董事長は江蘇人で、蘇北の同郷。ふたりとも農村から出てきていて、起業初期の経歴も似ている。呉董事長は、『こんな小銭のために、兄弟で争うことないじゃないの』と言いたいことだろう」
総評
以上、主に神舟側による主張ですが、これを信じるとつまり「競合ECサービスのキャンペーンへの不参加要求」「販売価格を競合ECサイトと同一にさせ、費用はメーカーに負担させる」「売り掛け金を人質化」というところでしょうか。
もし仮に京東が契約で縛っていても反壟断法(独占禁止法)抵触で負けるんじゃ……な案件のようです。京東は「法廷で会いましょう」というスタンスなので、どんな判決が出るのか見ものですね。
君はHASEEを知っているか
— すまほん!! (@sm_hn) February 29, 2020