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絶好調アフリカ携帯電話王「中国伝音」!爆益で世界富豪番付入りの創業者、竺兆江伝説

 スマホのグローバル出荷台数、世界1位はサムスン、2位華為(Huawei)、3位アップルまではガジェットフリークならスラスラ出てくるかと思いますが、世界第4位の中国伝音科技(Transsion Holdings, 传音控股)は知名度がかなり低いかと思います。

 すまほん!!でも何度かご紹介したこのメーカーは、競争の激しい中国市場を放棄してアフリカを主とした発展途上国市場に打って出て、「TECNO(テクノ)」などのブランドを展開し、アフリカでシェア1位をとっています。

 2019年9月30日、伝音は上海証券交易所での上場を果たし、初日に64%上昇。2020年2月25日に伝音HDが発表した年次業績速報によると、会社所有者に帰属する当期純利益は162%の増益となり、2月26日に発表された胡潤世界富豪ランキングで、同社創始者の竺兆江が初めてランクインしました。中国「e公司」と「電商報」よりお伝えします。

アフリカ携帯電話王「伝音」創業者、竺兆江とは何者か

「第二の雷軍」!? 国営通信企業に配属

(画像出典:huiji321

 中国「e公司」によると中国伝音を立ち上げた竺兆江は、今年47歳、100億元の財産により世界富豪ランキング入りし、「第二の雷軍」とも目されているといいます。(雷軍は言わずとしれたXiaomi創業者兼CEO)

 ちなみに一応言っておきますと、「竺」は単体では見慣れない字ですが、唐代に三蔵法師がお経を取りに行った「天竺(インド)」の「竺(じく)」ですね。

 竺兆江の「伝説」は1996年夏に始まりました。南昌航空大学を卒業後にポケベルも製造していた国営通信設備企業の「波導(BIRD)」へ「配属」(当時の中国はまだ「社会主義」感が強かったそうです)。

(画像出典:pingwest

 営業部門へ配属された竺兆江は3年で華北地区の首席代表までスピード出世し、市場調査に駆け回って経験と能力を蓄積しつつ、常務副経理(社長)まで一気に駆け上がりました。

人の嫌がるアフリカこそ竺兆江のチャンス

 そんなモーレツ営業マン竺兆江に持ち上がってきた「チャンス」こそ、波導のアフリカ進出。国内でよろしくやっている幹部連中に「条件劣悪」なアフリカへ行きたい、という変人は他にいませんでした。

 竺兆江が覚えているお話として「二人の社員がアフリカに靴を売りに行き、アフリカ人はみな裸足だと発見。一人はアフリカ人は靴を履かないから市場がないといい、もう一人は、アフリカ人は履く靴がないから巨大な市場があると言った」というものがあるそうです。

 竺兆江はもちろん後者の人間。アフリカ市場開拓業務に邁進すると同時に、ついでに欧州事業も会社から任されました。「欧州がついで」というのも面白いですね。

 竺兆江はこの機会を利用して数十カ国の市場を研究、とくにアフリカに力を入れ、最終的にアフリカこそ最も潜在力のある市場の一つであると結論づけました。これから先、アフリカ通信事業の勢力図が彼の頭の中に描かれていくこととなります。

 2000年代前半当時、日本企業が「次は中国市場だ」と言っていた頃、竺兆江は「アフリカが熱い」と言っていた、しかも結果から言えば中国の中間所得層が爆発的に増加して中国経済が「離陸」モードに入ったのは2008年北京五輪以降、と思えば「凄い」の一言ですね。

会社がアフリカ市場をやらないなら自分がやる

 アフリカから帰国後、竺兆江は会社に「アフリカ市場を発展させるべし」と献策したものの、これが認められることはありませんでした。無理もないとは思います。

 竺兆江が会社にアフリカ市場重視を献策して却下されたとき、中国国産携帯電話が発展し、国内通信業界も爆発的に成長、他にアフリカ市場へ手を伸ばそうとしている人もある状態でした。

独立起業、アフリカに「クアッドSIMスロット携帯」で突撃!

 2006年、既に若くして国営大企業の幹部だった竺兆江は決然と退職して、中国最大の電子市場である深圳の華北強で起業。「俺はアフリカ市場に賭ける」と決めた彼の周囲は「惜しい人材をなくした」とささやきましたが、竺兆江は「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや(小物に大物の考え方がわかるものか)」と我道を突き進みます。

 2007年に竺兆江はアフリカ市場へ本格参入、「アフリカは通信キャリアが乱立している」ことから、ダブルSIMスロット機を開発し、総攻撃をかけました。

 さらに竺は史上初の「4SIMスロット機」まで投入、アフリカ市場を席巻しました。

大躍進、伝音のスマホは「アフリカ徹底ローカライズ」

伝音設立、携帯からスマホに柔軟転換

 2009年に魅族が初の中国国産スマホをリリース、2011年に小米が台頭、中国はスマホ黄金時代を迎えることになります。

 「変わらないことは死を意味する」と理解している竺兆江は、スマホへのシフトを開始しました。「イノベーションこそ企業生存の本」こそ、竺兆江をして富豪ランキング入りせしめた「必殺技」だそうです。

 スマホの開発には深い研究基礎が必要であり、竺兆江はここから製品の研究開発に注力することとなりました。2013年、複数の資本家を引き入れて「伝音ホールディングス」を設立、伝音はスマホのイノベーションを目指すことになります。

「ミサイル充電」「美黒自撮り」……独自機能で「アフリカ人の2人に1人が使うスマホ」に

 伝音によるイノベーションは、アフリカ市場の課題を解決するものばかりです。

  • 停電が頻発するため「ミサイル高速充電」機能を開発
  • 黒人は歌とダンスを好むため「爆音オクタスピーカー」と「音楽ストリーミング再生」を導入
  • 黒人の皮膚の色に合った撮影技術を開発、「チョコレート色の美肌」を実現

 その後、中国政府による「一帯一路」政策も追い風となり、竺兆江の中国伝音はアフリカ市場で不動の地位を確立。IDCの統計によると2018年に伝音は全世界携帯電話市場の占有率7.04%を獲得、アフリカ市場の占有率は48.71%に。アフリカの「二人に一人は使っている」レベルの圧倒的な首位で、名実ともに「アフリカ携帯電話王」に輝きました。

上場後の業績も絶好調

 中国「電商報」によると、2月25日夜、伝音HDは上場後初の業績速報を発表。2019年の業績は営業収入253億元(約3780億円)、前年同期比11.78%の増収となり、会社所有者に帰属する利益17.25億元はなんと前年同期比162.45%の増益、1株あたり利益2.33元は前年同期比156.04%の増益の快進撃となりました。

 伝音はハイエンド・ミドルレンジのTECNO、大衆ブランドのitel、ハイテクブランドのInfinixと3ブランドを展開しており、いずれもアフリカ市場に深く浸透。

 「AfricanBusiness」が2019年6月に発表した「アフリカ人気ブランドトップ100」に伝音の3ブランドはそれぞれ5位、17位、26位にランクイン。

 IDCの統計及び予測によれば、2010年から2018年まで新興市場スマホ出荷台数の伸びは比較的早く、年成長率は30.81%に達し、アフリカ、インド、バングラディッシュをはじめとする市場で今後スマホ市場の高速成長が見込まれます。

総評

 スマホ誕生前に「中国国内よりアフリカ市場」と目をつけ、スマホ誕生後もアフリカ市場に特化したローカライズ版スマホをいち早く投入することで、ついに「世界富豪トップ100」入りを果たした竺兆江。

 おそらく同社の製品を日本国内で目にすることはないかと思いますが、このような「立志伝中の人物」が中国からアフリカへ飛び出している、というのは励みになるかと思います。そろそろ日本からアフリカへ飛び出した人物……というのが出てきてもいいのではないでしょうか。

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