中国国内スマホメーカーの成長と、バッテリー連続爆発事件が重なってしまったこともあり、世界最大のスマホ市場である中国でのシェア1%未満と壊滅的な状況(それでグローバルシェアトップなんだから流石って感じですが)にありながらも、「絶対に中国からの撤退はない」と言われていたサムスン。
どうやら、ついに中国市場での「復活」に向けて動き出すようです。
12月20日の海外報道と業界関係者の話によると、副会長兼CEO韓鐘熙(日本では「韓宗熙」と表記)の直接監督下に、サムスンは新たな中国部門を設置、これは現状、現地メーカーが主導しているアジア最大市場での戦略転換だと、「網易科技報道」が伝えました。
CEO直属「中国ビシネス・イノベーション・チーム」結成
業界関係者によると、サムスン電子が新たに設立した部門名は「中国ビシネス・イノベーション・チーム(China Business Innovation Team)」。モバイル・スマートフォンから半導体チップまでの各種業務において、世界最大のIT市場で販売量のテコ入れを目的としたもの。
新チームは2つの部門により編成されており、一つは人的資源管理と営業販売、もう一つはモバイル端末、家庭電気製品、ディスプレイ、半導体部門の人員により構成され、このチームは業務について直接韓鐘熙に報告することになっている直属部隊とのこと。
業界関係者は「今回の取り組みは、韓鐘熙が直接中国でイノベーションを追求する、一つの転換点と見られる」と語りますが、サムスンはこの新チームについては返答を拒絶したとのこと。
最重要市場で急がれる「テコ入れ」
中国は常にサムスンにとって鍵となる市場であり、その販売総額も最大シェアを占めています。今年Q3に、中国市場は同社売上額の30%を占めてトップ、これに米国が29%で続き、その他アジアとアフリカ市場がそれぞれ16.4%で同率、欧州12.6%。
12月初旬の同社改組のなかで、テレビ事業部担当の韓鐘熙が副会長に昇進し、視覚ディスプレイ、デジタル家電、ヘルスケアと医療設備、MX(携帯電話とタブレットPC)を包括する「DX」部門と、ネットワーク業務を統括することに。
ここ数年、サムスンの中国業務は不振が続き、とくにスマートフォン業務では1%を割り込む、グローバルスマホ市場ではトップシェアを誇るサムスンとしては、不本意な状況。
「折りたたみスマホ」も形成挽回ならず
Counterpoint Researchのデータによると、2013年から2014年までサムスンは中国市場で20%以上のシェアを占めたものの、2019年からは1%以下に低迷。一方、vivo、OPPO、栄耀と小米といった中国国内4大メーカーの出荷台数は今年Q3で72%を占めています。
このほか、サムスンの中国でのリストラも注目を集めてしまいました。2020年現在でのサムスン中国業務の人員数は1.8万人ですが、2018年から40%減少。サムスンのデータによると、中国での営業収入は12.5%、319億ドル減少。
業界アナリストによると、こういった下落の原因は、中国国内スマホメーカーの急成長が主な原因だといいます。サムスンの折りたたみスマホが全世界で好評を得たとしても、その新製品は中国の消費者から強い関心を集めることは出来ませんでした。中国スマホメーカーが争ってそれぞれの折りたたみスマホを発売するにしたがい、サムスンGalaxyブランドは中国での存在感を復活させることができなかったと指摘します。
サプライチェーン上の重要拠点でもある中国
サプライチェーンの管理問題も中国新チーム結成に影響しているようです。サムスンは西安でメモリチップ生産工場、蘇州でチップ包装工場を経営しており、とくに西安工場はサムスン唯一の海外メモリチップ生産工場なのだといいます。
また、サムスンの実質的トップである李在鎔がすぐにでも中国を訪問するのではと囁かれているとのこと。8月の仮釈放後、カナダ、米国、中東を訪問し、アフターコロナ時代の新商機を模索しているところ。
まとめ
「副会長兼CEO直属部隊」での中国市場テコ入れ、裏取りはされていないというものの、売上トップの市場で主力コンシューマー商品のスマホが、全然まったくサッパリ売れていない現状をほったらかしにするとも思えないので、「そりゃ本社指導部刷新のタイミングで、なにかやるだろうな」というところ。
折りたたみスマホではダメだったとはいえ、一時は販売台数が落ち込んでいたiPhoneも、華為脱落もあってフラッグシップ市場を総取りして首位に返り咲いたことを思えば、まだまだ復活のチャンスはあるかも。