キッズが老人身分証で5連コンボ炸裂!政府検閲で「冬の時代」、中国ゲーム業界がヤバすぎる すまほん!!

 2021年の中国ゲーム業界は、未成年ユーザーへの制限と、リリース検閲許可審査の停止がマイナス要因としてクローズアップされ、「倒産件数800以上」というニュースもありました。

 私自身、中国のゲーム会社とは別の仕事で取引がありますが、「プロジェクト中止」「部門ごとリストラ」といった不景気な話をよく耳にします。

 中国「界面新聞」によると、「年年都是行业寒冬(年がら年中が業界の冬)」とは、中国のゲーム市場で言われてきた冗談。少し誇張があるものの、ゲーム業界が近年直面してきた苦難を反映しているといいます。業界内での過当競争激化、政府による規制が厳しくなる状況下で、ゲーム市場規模は成長を持続しているものの、メーカーのプロジェクト中止、リストラ、倒産のニュースは引きも切らないところ。

 ここからは、「界面新聞」の論評をご紹介します。

人口ボーナスの終焉

 2021年12月16日、中国音像与数字(音声映像とデジタル)出版協会の遊戯(ゲーム)出版工作委員会と中国遊戯産業研究院の発表した「2021年中国遊戯産業報告」によれば、2021年、中国ゲーム市場の実際の販売収入は2965.13億元(約5兆3,000億円)で前年比7.57%増。モバイルゲームユーザー規模は6.56億人、前年比0.23%増で、人口ボーナスは飽和していっているとのこと。

 あまりよくない成長データから、2021年のゲーム業界が暗礁に乗り上げていることは争う余地のない事実だと言います。

 しかし、これと同時に、「ゲーム工業化」の背景下に、ビジネスのモデルチェンジは水面下で進んでおり、大手各社は大作ゲームの企画、投資、買収、スタジオ設立など、新たなプロジェクトを進めているそうです。

 ゲーム業界はビジネスモデル転換期の「産みの苦しみ」の段階にあると見ることもできるが、新たな成長点はまだ見つかっていないと言います。

未成年者ゲーム規制の逆風

 2021年のゲーム業界は「年がら年中が業界の冬」となりましたが、2020年の前年比成長率は32.61%と、2021年とは大きな開きがありました。

 これは日本でもリリースされた「原神」等の大ヒットゲームが牽引したものでしたが、ゲームユーザー規模が頭打ちとなった今、ゲームメーカーはどのようにして血路を開くのでしょうか。

 もし業界の冬が本来「年に一度」であれば、市場の話題もここまで憂鬱にならないところですが、背景には無視できない客観的な市場環境があり、例えば突然厳しくなったゲームの規制政策だと指摘します。

 8月末、中国国内ゲーム市場規制政策がついに固まりました。国家新聞出版署より「更なる厳格管理による未成年のネットゲーム のめり込み防止に関する通知(以下「通知」)」が出され、全てのネトゲ企業に対して未成年者には金曜日、土曜日、日曜日と法定休日の20時から21時の1時間に限ってのみサービスを提供するよう要求するとともに、ネトゲユーザーアカウントの実名登録の徹底を求め、いかなる形式でも実名登録のないユーザーにゲームサービスを提供してはならないとしました。

 中国国内での未成年者「のめり込み」防止への関心は増す一方で、関連する政策も絶えず追加されていっていたところですが、近年来の全ての規定と比べても、「通知」の規制力は前代未聞だといいます。

 大量の未成年ユーザーはこれによってゲームメーカーから締め出されましたが、それでも諦めないキッズたちは「仙人の神通力」のような技を駆使してゲームを続けようとしているそうで、「60歳の老人が午前3時に王者栄耀で5連コンボを繰り出している」という笑い話もあるのだとか。

大手ゲームメーカーは未成年制限の影響軽微というものの……

 もちろん、これらの政策の風向きに敏感な大メーカーにとって、「のめり込み防止」は業務上重要と位置づけられており、一部の企業では既に未成年者のゲームプレイ・課金制限を一つの「成績」として財務報告に書き入れています。

 テンセントでは、2020年第4四半期財務報告で初めて未成年者の消費データを公開、2021年代に四半期財務報告では年齢層を更に細分化し、満16歳以下のゲームユーザーは中国市場の売上額の2.6%、満12歳以下は0.3%を占めるに過ぎないと公開。

 このように、大手メーカーは「のめり込み」防止規制が売上に影響がないとしているものの、中小メーカーの反応はそうではないようです。音ゲー「同步音律」は未成年者を制限してから、一日あたりの売上が600元(約1万円)まで減少したと表明しています。

 このような落差が生じたのには複雑な理由があり、中でも主要な原因として、「通知」が出たあと一歩の未成年者は、成人の身分情報を盗用または「強奪」して「偽大人」として紛れ込んでおり、これら偽大人を青年ユーザーの中から削除することは技術的な手段では不可能であるため、データと実情にずれが生じているのだと言います。

検閲手続き停止で中小メーカーは「踏んだり蹴ったり」

 未成年ユーザーの大量流出のほかにも、ゲーム会社に大きな打撃を与えているのが、中国国内ゲーム規制政策が反映された「インターネット文化管理暫定規定」や「ゲーム審査評価細則」です。

 前提として、ゲームのリリースには政府の「検閲許可」が必要で、「検閲許可番号」がないとリリースできません。なので、リリース日は許可番号が出るまで決まらなかったり、許可番号が出るのがあまりに遅いと「政府の政策でゲームのリリース本数に制限を賭けているのでは?」とヤキモキしたりするのですが、審査基準が厳格になり、ゲームの収益化ハードルが引き上げられたことで、とくにアプリ内広告で収益化しているゲームの会社は、リストラ・転換を強いられているところが少なくないのだとか。

 「許可番号」は特に製品の蓄積が少ない中小企業にとって、定番の問題となっています。

 近年のゲーム「大作化」傾向は、ゲームの遊び方、美術、音楽等で「質の過当競争」を引き起こして中小企業を疲弊させているところ、政策環境変化で中小企業はすでに十分焦っているところ、許可番号の審査停止は、中小企業の前途に暗い影を落としているといいます。

847件倒産も新規開業は4万件以上

 ただし、ゲーム媒体「遊戯新知」の統計によると、2021年12月10日現在で2021年のゲーム会社倒産件数は847件なのに対し、同年に設立されたゲーム会社数は4万件を突破しており、多くの起業者がゲーム市場に期待していることが見て取れると指摘します。

 ゲームの「工業化」と「クオリティ重視」の潮流は、ゲーム会社がより多くの資源と時間をゲーム開発に投入する必要があることを意味すると言います。

 「原神」という「先輩」の成功例は中小企業にとって「ショートカット」で大手に打ち勝つという自信を与えたものの、同様に、「原神」は大手メーカーにも新たな方向性を与えており、より多くの資金力と経営資源を擁する大手が「二次元」「オープンワールド」という分野に参入し始めている中、中小メーカーにどれだけの機会があるのか疑問なところ。「楽観できない」というのが記事の見立て。

まとめ

 中国のゲーム業界が「冬の時代」なのは、未成年ユーザー規制や検閲手続きの停止といった政策的要因もあるものの、そもそもモバイルネットユーザー数が頭打ちに達したのが根本的な原因であるというのが私の感想です。

 一方、倒産件数800件がクローズアップされている傍で、新規の起業が4万件と桁違いなのは、まだまだ中国の投資家はゲーム市場に期待を寄せているのだなと、少し意外に思いました。

 但し、本記事中指摘されたとおり、開発コストは上昇トレンドであり、新規参入に勝ち目があるのかは、大きな疑問符というところ。

 「市場の飽和」と「製作コストの上昇」、中小メーカーにとっては氷河期なのではないでしょうか。