XperiaはAndroidスマートフォンの中でも良い部類――確かにそうでした。少なくとも2011年までは。
最近NTT docomoから初のXi(LTE)通信対応XperiaであるXperia GX / SX等が発売され、KDDI版acro HD IS12Sには6月中にICSアップデートが行われると発表されたり、いろいろと盛り上がっているようにも見えます。
しかし、それはあくまでも2011年までの国内市場のお話。海外市場を見てみると、今のXperiaが立たされている状況、いや、むしろ今年になってからは国内市場を見てもXperiaはもう駄目だな、と思える状況になってきています。
この記事では、筆者の目線から、現在のXperiaの置かれている状況を噛み砕いていきたいと思います。
魅力的じゃないハードウェア
Xperiaの魅力はなんと言っても“デザイン”でした。Xperia X10(国内ではSO-01Bとして販売)の購入者へ購入理由を尋ねると、デザイン、と答える人が圧倒的に多かったのが印象的でした。
2011年にはXperia arc LT15i(国内ではSO-01Cとして販売)が発売され、海外でもそのデザイン性やX10の時に問題となっていたAndroid OSのバージョン周回遅れ問題が解決していた事からそれなりの評価をされるなど、”Xperiaが商品ブランドとして成立してきたな”と思わせてくれました。
しかし、2012年になって発売されたXperiaはどうでしょう?まず最初に発表されたのはXperia S LT26i(国内ではNFCを除去しSO-02Dとして販売)です。Xperia SはmicroSD非対応、バッテリ取り外し不能かつ大して大きくないバッテリ容量、ゴツく重たい本体など、どう見ても2011年モデルから見ると“劣化した”としか言い表せない出来となっていました。ハードウェア面の不満だけならまだしも、他社がAndroid 4.0 Ice Cream Sandwitch標準搭載端末を続々と発表する中、Xperia Sは周回遅れのAndroid 2.3 Gingerbreadを搭載して発表/発売されました。
国内では2012年夏に比較的高評価だったXperia arcのデザインと仕様を“模倣”した初のXi対応Xperia、Xperia GXや、小型モデルにして良いスペックだったXperia rayに国内特化機能をつけて質感を落としデカデカとSONYロゴを入れたXperia SXなどが発表されました。ですが、やはり2011年モデルが発表された時のようなインパクトはありません。Xperia GXを見ていると、WalkmanやPlayStationの成功という過去の栄光にすがりついている醜い今のソニーを思い出すのは、私だけでしょうか。
何がしたいのかイマイチわからないチグハグな社員の発言
Sonyと言えば社員がダメ。これはSonyに買収されたSony Ericssonにも通じるようです。2012年にXperia Pが発表されたとき、Sony Mobileの社員である加藤氏はこのような発言をしていました。
加藤 端末を薄型化するのはもちろんカンタンではないですが、やりやすいです。スマートフォンは、ディスプレー、基板、バッテリーと重なってるわけですが、現在のトレンドとして薄型の端末が多いです。そのため一般的には面積を広げていけば、薄型化というのは解決しやすい。でもそれだと、どうしても薄型化できないポイント、たとえばカメラ機能ですが、そこだけ浮き上がるデザインになってしまう。それはわれわれが求める美しいデザインではありません。
via 週アスPlus
ここまで書けば、もう勘の良いかたは気づいているかもしれません。
これはなんなのでしょうか?
他社に対して優位性の無いカメラ
Sonyの端末といえば何が良いでしょうか?もちろんそれはカメラです。いや、むしろそれ以外はダメとも言えるかもしれません。ふと歩いているうちに、良い風景、景色やお祭り等の出来事、風情を感じる出来事があったら、写真を撮りたくなるでしょう。スマートフォンはあくまでも携帯電話ですから、いつでも持ち歩くものです。そんな時に高画質の写真を撮れたら、あとから写真を見てじっくりとあの時の記憶を思い出す…そんなことも出来るようになります。もちろん、撮った写真をTwitterなどのSNSにポストし、仲間と共有する…そういう使い方もあるでしょう。
Xperia arcは800万画素の裏面照射型CMOSセンサー”Exmor R for Mobile”を搭載することで、ユーザーの願いを叶えてくれました。当時、裏面照射型CMOSを搭載しているスマートフォンはまだ少なく、非常に高画質の写真が撮れる、ということでちょっと話題になったりもしました。
もちろん、良い所は他社だって真似をします。AndroidがiOSの良い部分を取り込み、iOSがAndroidの良い部分を取り込んできているように、ある端末の良い部分はどのメーカーも自分たちの端末に搭載しようとします。もちろんカメラも。
HTCは同社初の統一ブランドである”HTC One”シリーズでF値2.0の裏面照射型CMOSカメラを搭載してきました。F値とは簡単に説明すればレンズの明るさを示すもので、低ければ低いほど暗い場所に強く、綺麗な写真が撮れる、とされています。
Samsungもカメラの大切さに気づき、Galaxy S IIIにて裏面照射型のCMOSセンサーを搭載してきました。画素数は800万画素で、どうやらSonyのExmor R for Mobileを搭載しているようです。Xperia arcなどと同じですね。
さて、ではXperiaの2012年モデルではカメラに何か革新はあったのでしょうか?いいえ。そんなものはありません。F値もarcの時と変わらず2.4のままです。カメラの画素数だけは増加していますが、画素数が増えればそれだけ多くの光量が必要になります。つまり、捉え方によってはカメラは2011年から劣化した、とも言えるのです。
確かに写真の仕上がりはF値というレンズの明るさ、スペックだけで判断できる物ではありません。しかし、暗闇にも強い、や、明るく写真が取れる、という事を売りにし、高画素にもこだわるのであれば、F値据え置きで高画素化、というのはいかがなものかと思ってしまいます。
また、他にもXperia系のカメラのユーザーインターフェイスは、お世辞にも他社に比べて使いやすいとは言えず、オートフォーカスがHTCやSamsungの端末などと比べてなかなか定まらなかったり(最近は若干改善されては来ましたが)、連射に対応していないなど、様々な不満点があります。
カメラ面でも魅力がなくなったXperia。ハードウェアは周回遅れ。デザインは過去の栄光にすがるだけ。SONYというブランドを外して見た時、誰がこんな端末を買うのでしょうか。よほどの物好き以外は買うとは思えません。もちろん、HTCやSamsungなどのより良いスマートフォンが国内でも販売されているという事を考えれば、ですが。
でもやっぱり、SONYというブランド名だけで売れてしまうのでしょうね。国内にももっと良い端末はいくらでもあるのに。
2012/06/29 2:40 – 客観的目線を筆者の目線に変更し、一部不適切な文面を削除、及び説明不足な点を追記致しました。ご迷惑をお掛けしました。