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なぜドコモのLTEは遅いのか。単純かつ明確な理由

 先日、ドコモのLTE(Xi)が3キャリアの中で最も遅く、日本におけるLTEの通信速度の平均値を下げているという報道がなされた。本サイトでもそのニュースを取り上げたが、なぜドコモのLTEが3社の中で速度が遅いのか、専門的な話を抜きに理由をひもときたい。

 なお、この記事の内容は原因はドコモ  世界のLTEの通信速度、日本は9カ国中最下位という結果にを読んでいないとピンと来ないので、まずはそちらに目を通していただきたい。

はじめに

 回線速度は電波の強度とともに利用者の人数に大きく左右される。一般的にネットワークの混雑を表す方法として「道路」が使われる。早い話、車(利用者)が多ければ多いほど道路(回線)は混雑をする。逆に車(利用者)が少なければ、道路が許している最高速度でスピードを出すことが出来る。

 本来ならば、ここで利用する周波数の違いやLTEの方式の違い(ドコモとKDDIはFDD-LTEを採用。ソフトバンクはTD-LTEを採用している)も出すのが理想的だが、今回はあくまでも簡単に説明をしたいため割愛する。

ドコモのLTEが遅い理由

 従来の3Gの回線を一般道路とすれば、LTEは高速道路のようなもので、車が目的地に到達するまでの車線が広く信号もないため、スピードが出しやすく、一般道では渋滞が起きる量の車でも高速道路なら快適に走行をすることができる

 だが、高速道路であろうとも車が増えれば当然速度は落ちる。それがドコモの抱えている問題であり、KDDIやソフトバンクの道路はまだ車が少ないということでもある。

 ドコモのLTE(Xi)は他社と比べて契約者数が多く混雑している。なぜ、混雑しているかと言えば、以下のような理由である。

サービスインが他社よりも早かったから

 ドコモは競合二社(KDDIとソフトバンク)と比べて、比較的早い段階でLTEのサービスインをしていた。

 今回の結果(OpenSignalの結果)はアンドロイドを搭載したスマートフォンが計測に利用されている。では、LTEに対応したアンドロイドスマートフォンが発売されたのは各キャリアいつ頃からかを見てみよう。

キャリア  スマートフォン投入時期 
 ドコモ 2011年11月(Galaxy S2 LTE) 
KDDI  2012年11月(SHL21  SOL21 SCL21 CAL 21など)
ソフトバンク  2012年10月(201HW 201Mなど)

 このように、ドコモは各キャリアの約一年前からLTEに対応したスマートフォンを投入しており、必然的に利用者が多いことになる。

LTEに対応している端末が多いから 

 サービスインが早かったドコモは当然ながらLTEに対応している端末が多い。現段階で対応しているアンドロイドスマートフォンを集計すると以下のようになる。
(ここでアンドロイド限定なのは、先日の集計がアンドロイドのみで実施されていることによる)

(2013年2月17日12:15 グラフの配色などを変更)

 このような現状を鑑みれば、ドコモの高速道路を走る車の数は、KDDIやソフトバンクに比べて圧倒的に多いことになる。その分、速度が出なくなるのだから、当然といえば当然の話なのである。

おまけ

 では「実際にLTEを利用しているユーザ数をキャリアごとに比較すればどうか」という話になるが、ドコモがFOMA(3G)とXi(LTE)の契約者数を個別に公表しているのに対し、KDDIとソフトバンクは3GとLTEの契約者数を合算で公表しているため比較ができない。

 ただし、ソフトバンクのアンドロイドスマートフォンが対応しているSoftBank 4G(AXGP)はWireless City Planning からのMVNO であり、貸し出しを受けている事業者はソフトバンクとTOKAIコミュニケーションズのみだ。かなり強引な方法となるが、Wireless City Planning の契約数をSoftBank 4Gの契約者数として見ると以下のようになる。

 キャリア 累計契約者数 
 ドコモ(Xiのみ)  8,678,200
 Wireless City Planning  718,800

(2013年1月の電気通信事業者協会が公表しているデータより)

 もはや雲泥の差があるといっても過言ではないのだが、ソフトバンクと言えばiPhoneのイメージが強く、アンドロイドの陰は薄い。この記事や OpenSignal の算出結果はアンドロイドスマートフォンのみで行われており、iPhoneの情報も含めればまた変わってくるのだろう。

 また、OpenSignal  の比較で登場した8カ国の人口や国土面積もしっかりと考慮をしたいポイントだ。知っての通り、日本は国土面積が狭く人口が異常に多い国だ。比較で出てきた8カ国の人口をグラフで比較すると以下のようになる。

2011年 世界銀行のデータより筆者がグラフ化

 トップクラスの速度を誇っていたスウェーデンや香港、デンマークはグラフで見ればわかるように、人口が日本とは比べものにならない。

 また、国によって携帯電話の回線契約の方法は異なるため、一概に比較ができないということも考慮しておきたい。

 以上、長々となってしまったが「またドコモか!!」とか「ドコモが悪い!!」と考えるのではなく、見ただけのデータだけでなく、その値が本当にフェアであるかということを考えたい。

 もちろんドコモも今の状態を良しとはしておらず、Xiに対して周波数を割り当てを増やし「道路を広くする」行程にも着手している。今後、KDDIやソフトバンクのLTEを利用するユーザが増えることにより、どの程度まで速度が落ち着くのか、その中でドコモのXiはどれだけ頑張れるのかという点にも着目していきたいところだ。