4月30日、ニコニコ超会議にてLogicLinksが新サービス発表会を行い、LinksMate(リンクスメイト)ブランドでdocomo回線を使用したMVNO事業への参入を表明しました。2017年7月1日のサービスインに先立ってすでに公式サイトが公開され、先行会員登録の受付が始まっています。
プランと料金
プラン設定は以下の通りで、下位のプランでも5GBからとなっています。全てのプランでSMSが利用でき、月額600円で音声通話機能オプションを付加できます。また、最大4枚までデータ容量をシェアできる追加のSIMが発行できます(追加SIM1枚につき月額300円)
月間データ容量 |
月額料金 |
連携可能ゲーム数(後述) |
スター付与数(後述) |
---|---|---|---|
5GB |
1,500円 |
同時に最大1つ |
なし |
10GB |
2,500円 |
同時に最大3つ |
毎月1個 |
20GB |
4,200円 |
同時に最大3つ |
毎月1個 |
30GB |
5,400円 |
同時に最大3つ |
毎月1個 |
HUAWEI P9やVAIO Phone AなどのSIMフリー端末をセットで購入することも可能です。
LinksMateの特徴
カウントフリー
サービスの特徴としては2点あり、その1つが月額500円のカウントフリーオプション(2017年12月まではキャンペーンにより無料)です。
カウントフリーというのは、特定のアプリ・サービスの利用にかかる通信が、月間の高速データ通信容量に含まれなくなり、データ容量を節約できるというサービスです。例として「LINEモバイル」ではLINEがカウントフリーというものがあります。
LinksMateがカウントフリーの対象としているアプリ・サービスは、TwitterやFacebook、App StoreやGoogle Playなど、他社のSIMカードでもしばしばカウントフリーになっているものが挙がっていますが、これに加えて、関連企業であるCygamesの人気ゲーム「グランブルーファンタジー(グラブル)」や「シャドウバース(シャドバ)」をはじめ、提携済みソーシャルゲームアプリもカウントフリーの対象となっていることが大きな話題となりました。
ゲームアプリのカウントフリーというと「Pokémon GO」を対象とするDTIのサービスもありましたが、SNSやメディアストリーミングサービスに比べるとあまり盛んではありません。LinksMateはここに需要があると睨んで参入したようです。
カウントフリーの対象となるゲームはDMM.comの「刀剣乱舞」やHappy Elementsの「あんさんぶるスターズ!」など、関連企業以外のタイトルも含まれており、今後も追加される予定とのことです。
ゲーム連携・特典
もう1つの特徴はLinksMateを契約し、提携ソーシャルゲームのアカウントと連携設定を行うことでゲーム内で特典を得られるという「ゲーム連携・特典」サービスです。現時点ではグラブルとシャドバのみが対象ですが、こちらも今後提携タイトルが追加される予定ということです。同時に連携設定できるゲームの数はプランによって1~3と異なります。
注意したい点
手頃な値段でデータ通信が利用でき、普段自分が遊ぶゲームやSNSは通信量を気にせず利用できて、さらには大量のゲーム内特典も貰えるということで、LinksMateは非常に魅力的な通信サービスであるように思われます。
しかし、筆者が気になった点がいくつかあるので、ここで示しておきたいと思います。
SIMカード削除手数料
LinksMateは「最低利用期間なし」を謳っており、これは音声通話機能オプションを使用した場合でも同様の模様です。
しかしながら、LinksMateを解約する際には「SIMカード削除」という手続きが必要になり、この手続きに手数料3,000円がかかるとされており、事実上の解約手数料が発生します。裏を返せば、どれだけの期間利用したとしても「金を払わなければ解約させてもらえない」ということなので、契約に際しては十分に注意が必要です。
SIMカード発行手数料
上記の削除手数料に比べれば少額ですが、LinksMateでは新規契約事務手数料にSIMカード発行手数料が含まれていません。SIMカードの初回発行にも、発行手数料400円が別途発生します。
スター特典
ゲーム連携・特典の1つに「スター特典」というものがあります。これは10GB以上のプランを契約することで、連携設定したゲームごとに毎月1個「スター」というポイントが付与され、6個集めるとゲーム内特典と交換できるというものです。このスターはゲームごとに6個が保有上限となり、6個貯まったらその月の内に交換しないと、次の月の分のスターが付与されないので、注意が必要です。
動作確認済み端末一覧
LinksMateはdocomo回線を利用したMVNOであるため、普通に考えれば、利用できるのはSIMフリー(SIMロック解除済み)の端末か、docomoから販売された端末ということになります。ですが2017年5月1日現在、LinksMate公式サイトの「動作確認済み端末一覧」のページでは、一部の機種を除いて「Xperia Z3」「Galaxy S5」のようにペットネームしか記載されておらず、SOL26やSCL23でも利用できるようにもとれる書き方になっています(ほぼ間違いなくSO-01GやSC-04Fを指していると思われますが)この点については事業者に確認を取る必要があるでしょう。
カウントフリーとネットワーク中立性
カウントフリーサービスは当然ネットワーク中立性に関わる事項であり、LinksMateに限らずLINEモバイルのサービスイン時などにもネット上で様々な議論を呼びました。
LINEモバイルはこのような意見に対し「現段階では法令上問題ないとの認識を示したうえで、今後懸念が発生した場合には誠意を持って対応する」と、コメントを発表しています。
この点に関してLinksMateは非常に楽観的に捉えているようで、むしろ自社をきっかけにゲームアプリのカウントフリーが業界全体として普及して、コンテンツのリッチ化が推し進められればいいと考えているようです。
全てのゲームメーカーがCygames・LogicLinksのように企業体力があり、回線を確保してきて、カウントフリーが提供できれば良いのですが、残念ながらそうではありません。ゲーム市場における自由な競争が、カウントフリーによって阻害されてしまい、結果として消費者の不利益になるのではないか、という恐れは払拭されません。
「ネットワーク中立性は気にならない」「自分のプレーしているゲームがカウントフリーならいい」というユーザもいるかもしれません。しかし、ネットワーク中立性を抜きにしても、カウントフリーのサービスには気を付けなければならない点があります。
LinksMateはほぼ全ての利用者がカウントフリーオプションに加入し、無制限にゲームをプレーすると考えられます。ゲームのアップデートが行われサイズの大きいファイルが連続的にダウンロードされると、負荷が集中して回線が混みあうおそれがあります。これについては、LinksMateがどれだけ回線設備に投資を行うかがポイントになります。サービスイン後、しばらく時間が経過しないと分からない部分ですが、考慮に入れた上で契約を検討する必要があります。
ソシャゲ業界とMVNO業界、両方に革新をもたらすか?
色々と難点も並べてしまいましたが、ゲームメーカーの関連企業がMVNOに参入しその強みを生かすというのはとても挑戦的な取り組みであり、期待できるところもあります。
ネットワーク中立性についても、LogicLinksをきっかけに再度議論が深まることとなれば、官公省庁や業界団体から何らかのアクションが起き、市場全体としてより良い方向にことが運ぶということも考えられます。今後どのように事態が推移していくか、注目していきたいサービスです。
(編集・校閲: 高橋ノゾム)