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通信と端末のセット販売や2年縛りなど、違法になるおそれがある携帯会社の行為を公取委が列挙。

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 公正取引委員会は、平成30年度の「携帯電話市場における競争政策上の課題について」を発表しました。前回の平成28年度調査から2年経過しましたが、MNO(大手携帯キャリア)による改善はまだまだ進んでいない実態が浮き彫りとなりました。

 以下、調査結果・独禁法違反で違法となるおそれのあるものなど、公取委の報告を要約します。

通信と端末のセット販売

調査結果

 前回の平成28年調査では、端末価格を通信量から値引きするセット販売(実質価格)の見直しが望ましいとしましたが、MNOは依然としてこれを改善していません。このため通信料金単独では大幅には値下がりしておらず、通信サービスの競争が進んでいるとは言えないとしました。

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違法となる可能性

 端末市場においてMNOはシェア9割であり、MNOが横並びでこうした販売手法を採っていることが、MVNOなど他の事業者の事業活動を困難にさせる場合は独占禁止上の私的独占となるおそれがあるとしました。MNOや販売代理店の独自判断による端末代割引やキャッシュバックが、私的独占や不当廉売にあたるおそれがあるともしています。

 また、本来の価格として表示された価格で端末の販売実績がないなど、根拠のない値引き額を強調、他の事業者よりも著しく有利であると消費者を誤認させ不当に誘引する場合、景表法上問題となるおそれがあるとしました。

筆者補足

 3年前のNTT docomoの販売手法は、現在では公取委によって違法と看做される可能性もありそうです。

2年縛り

調査結果

 28年度調査では、2年縛りの契約解除料は必要最小限にすべきとしたものの、依然として契約解除料は変更されないまま。

 MNOは2年経過後はいつでも解除料無しで解約できるプランも提供をはじめましたが、消費者にとって実質的な選択肢として機能せず。

違法となる可能性

 2年縛りのあるプランとないプランがありますが、利用者を2年間拘束すること以外に合理的な目的はないと判断される場合に他事業者の活動を困難にさせる時には、独占禁止法の私的独占・取引妨害にあたるとのこと。

 2年縛り自動更新についても、消費者拘束しか目的のない場合、他事業者の活動を困難にさせる時にも同様に独禁法違反にあたる可能性があるとのこと。

4年縛り

調査結果

 auとソフトバンクの4年縛り。残債免除の条件を満たさない場合の負担が大きいため、一度4年縛りを契約してしまうとスイッチングコストが高まるので他社への乗り換えが難しくなるおそれがあるとしました。

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違法となる可能性

 4年縛りが消費者の乗り換えを断念させることで利用者の選択権を事実上奪うものと判断される場合に、他事業者活動を困難にさせる時には独占禁止法の私的独占・取引妨害にあたるおそれがあるとしました。

 また、あたかも端末を半額で購入できるかのような印象を与えることが景表法上問題になるおそれもあるとしました。

SIMロック

調査結果

 平成28年度調査はSIMロックを設定しないことが望ましいとしていましたが、MNOは盗難防止などの観点からSIMロックを設定し続けています。

違法となる可能性

 SIMロックが消費者にとって乗り換えの妨げとなり他事業者の活動を困難にさせる場合、私的独占・取引妨害になるおそれがあるとしました。

 MNOは一定要件を満たす場合には利用者申請があって初めてSIMロック解除に応じていますが、そもそもSIMロック自体がMNOの都合に過ぎず、要件が満たされた場合MNO自らSIMロックを解除することが望ましいとしました。

その他スイッチングコスト

調査結果

 契約の解約月の通信料金等を日割り計算をせず、1か月分の料金を支払わせることや、MNP手数料など、これらの組み合わせが契約解除料以上になり、スイッチングコストを高めているとしました。

違法となる可能性

 それぞれ単体の行為でも独占禁止法上の問題となり得ますが、それらの組み合わせはそれぞれの競争排除効果が累積的に増幅され、独占禁止法上問題となるおそれが一層高まるとしました。根拠のない端末価格の値引き表示も前記の行為を独占禁止法問題となりやすくさせる可能性があるとのこと。

中古端末の流通

調査結果

 平成28年度調査では、MNOが下取りした中古端末の国内販売を端末メーカーが制限することなどが独占禁止法上問題となるおそれがあるとしていましたが、その後も中古端末の流通数は増加していない状況とのこと。

 MNOは中古端末のSIMロック解除に応じていないことや、4年縛りなど端末下取りを前提とする手法なども、中古市場の流通数減少に繋がると指摘。

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違法となる可能性

 MNOが下取りした端末を、再度販売する業者に対して、MNOが国内市場への販売を制限することが、MVNOを排除する効果を持つ場合には、独占禁止法上の拘束条件付取引・取引妨害等にあたる可能性があるとしました。

公取委、厳正に執行

 公正取引委員会は、消費者が自由に商品・サービスを選択、円滑に変更できることが重要とし、総務省との連携は継続しつつも、スイッチングコストを高め不当に囲い込む携帯キャリアの行為に対し、厳正に独占禁止法を執行していくと述べました。

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