学童・生徒による携帯電話・スマホの使用については、公式には否定的な見方がされることが多いようで、欧州では学校への携帯電話持ち込みを禁止している国もあります。最近では幼稚園児、小学生、中学生による校内での携帯電話使用を禁止する法案が仏議会を通過しています。
今時「学習に必要ないものは学校に持ち込むべからず」を理由にスマホを禁止するのは、私個人としては「財布を持ってくるな」というのに近い気がしますが、高校時代にまだ携帯電話が普及していなかった世代がまだまだ世の主流なので、コミュニケーションをとるのは難しいかも知れません。
さて、「買い物から何から、生活の全てにスマホが必須」の中国では、どうなのでしょうか。新華日報で、欧州各国の「携帯電話禁止令」から中国を考える論評記事が掲載されていたので、ご紹介します。なお文中、「小中高生」が一律「学生」となっているのは、中国での呼称に準拠しました。
実は、フランスは禁令の第一号ではない。2007年には既に、イタリアで学生が授業中に携帯電話を使用することを禁止している。英国は2012年、小中学生による携帯電話の教室持ち込みを禁止した。ギリシャでは学生の携帯電話使用禁止ばかりか、教師の携帯電話使用も教学目的に限定している。フィンランドでは中学三年生以下の学生への携帯電話を禁止しており、違反者には最高10万ユーロの罰金が科される。米国では、多くの学校で学生による教室への携帯電話持ち込みを制限している。
「欧米諸国」と比較すれば、「携帯電話持ち込み」規制が形式的な日本の学校は、むしろガバガバなのかも知れませんね。
今のところ中国では学校への携帯電話持ち込みを明確に禁止する法律はありません。各学校側の対応に委ねられています。
南京市第一中学では、数年前に「学生がスマホを携帯して学校に立ち入ることを禁じる」保護者への通達を発表、学生が校内でスマホを使用することを禁じているが、学生と保護者の連絡のために、各学級に2台のガラケーを提供している。
「学生がスマホを学校に持ち込むのは通信手段としてばかりではなく、ゲーム、或はブラウジングを目的としている可能性があり、学習に影響を与える」と、南京一中校長憂小平は言う。保護者への通達を出したのち、多くの保護者はこれを肯定、支持しており、大部分の学生は規則を遵守しているという。
「親と連絡するために持っています」という言い訳を粉砕する、合理的手法ですね。
最新のインターネット上での調査結果によれば、学生のスマホ管理方法について、59.3%の回答者が授業時間中の統一管理を支持、58.8%が宣伝・教育の方法で学生の合理的な使用を指導すべきと回答、「学校が没収するべき」と回答したのは7.6%に止まった。少なからぬ教育専門家も、強制的手段のみで学生のスマホ使用に取り組んだ場合、根本的な解決にはならないと指摘している。
南京師範大学児童発展と家庭教育研究センターの副主任・殷飛は、「スマホはモバイルインターネット端末として、子供の成長に与える影響はみな十分わかっているとおりだ。家庭と学校が注目しなければならないのは、如何にしてスマホを時間つぶしの“玩具”から学習と成長の“道具”とするかだ。一方では子供のスマホ使用時間と空間を制限する必要があるが、家庭と学校には子供にスマホを正確に認識させる義務と責任があり、子供の成長過程で積極的な作用を発揮させなければならない」と指摘する。
また、江蘇省教育科学研究院基礎教育研究所副所長・倪娟は、「情報化社会において、小中学生の情報収集、判断と選択能力は核心となる素養の一つであり、一概に禁止することは上策ではない」「とくに人工知能時代、我々は教学面でスマホ等の端末を如何に学習に使用するかを研究しなければならず、簡単に禁止はできない」という。
ご指摘のとおりだと私は思いますが、「学校現場での禁止情況」に対して、教育学の権威による「スマホには効用もあり、一律禁止はすべきではない」というコメントが登場するという構成、日本ではあまり見ない論調だと感じました。
試しに日本のサイトをググってみると、学者先生による「スマホ脳」、「スマホを持たせるメリットは、行動を把握できる、家族と連絡・交流ができる……」という内容の記事が検索結果に並び、頭痛がしたので、踏み込んだ日中比較はやめておきます。
最近、西村博之氏による「高校3年生にスマホ使用ありでセンター試験を受けさせたら高得点を取れる」という発言が物議を醸したが、学校教育も社会に情報端末がありふれていることを前提としたものに変えるべきかどうか、今一度議論が必要な時なのかもしれない。