総務省は1月22日、「特定関係法人に係る報告を怠っていた」として、KDDI株式会社に対して行政指導を行いました。
電気通信事業法第27条の3第1項には、特定関係法人である電気通信事業者(いわゆるMNO直属のMVNO)については総務省に報告を行う必要があると記されています。しかし、KDDIは株式会社ジュピターテレコム(通称J:COM)のグループ会社など計12社の報告を行っておらず、今回の行政指導となりました。
今回報告漏れが指摘された株式会社ジュピターテレコムの関連企業(ジェイコム東京やジェイコム湘南・神奈川など)は、「J:COM MOBILE」と銘したMVNOサービスを提供しており、親会社のauからの仕入れを通じて第2世代のiPhone SEの販売を行うなど、MNOの傘下企業であるというメリットを最大限活かしたブランドです。
J:COM MOBILEは、本来自前で電波設備を持つMNOであるKDDIの特定関係法人であるため、端末の値引き規制などの法律が適用されるはずですが、特定関係法人であるという届け出を行わず、特定関係法人ではないという認識のもとiPhone SEの実質無料キャンペーン(記事執筆段階も実質無料とは謳っていないものの、同様の割引を継続中)を行っていました。
このキャンペーンは、10GB以上のプラン、割賦48回払いでiPhone SEを購入することで月額1050円引きとなるキャンペーンで、このキャンペーンで割り引かれる価格はiPhone SEの価格(5万4000円)と一致します。
株式会社ジュピターテレコムの社長・石川氏は以前、ITmediaの取材に対し、以下のように述べていました。
(規制の対象にならないのは)KDDIの特定関係法人ではないからです。正確に言うと、ジュピターテレコムは特定関係法人ですが、J:COM MOBILEはジェイコム東京やジェイコム湘南・神奈川などの各地域会社が提供しています。
2019年に改正された「端末代金の割引は上限2万円」とする法律は、MNOの特定関係法人は全事業者が対象であり、J:COM MOBILEももれなくこの規制に該当するはずです。しかし規制を超えた大幅な割引が行われており、不適切な割引が行われていたということになります。
総務省の指導にはこの過剰な割引に対する指導は含まれていませんが、行政指導によりJ:COM MOBILEの提供企業(ジェイコム東京やジェイコム湘南・神奈川など)も特定関係法人と指定されたため、近いうちにこの割引は取り下げられるだろうと筆者は考えます。
各社が規制の枠組みの中で様々なキャンペーンを行い、契約者数の獲得に必死となっている中で、割引の規制対象となるにも関わらず報告を怠り、過剰なキャンペーンで契約者の獲得を行っていたことは大きな問題ではないでしょうか。
総務省は、KDDIに対し再発防止策を徹底して実施するとともに、不断の見直し及び改善を図るよう指導しています。また、今回の件に関して、1月23日から2月22日までパブリックコメントの募集を行い、その後特定関係法人として正式に追加される予定です。