今回、360度カメラ「RICOH THETA Z1」をお借りできましたのでレビューします。
360度カメラとしては、1.0型裏面照射型CMOSセンサーを採用し2300万画素相当で「最高画質」をうたい、プロ向けの巨大なものを除けばこのカテゴリーでは最もハイスペックで「画質」にこだわったモデルです。
東京大阪を拠点にポートレート写真を中心に職業カメラマンとして活動、普段は一眼カメラを使用している筆者が、さまざまな切り口で試した実際の画質を、撮影した写真とともに紹介していきます。
Index
どんな写真が撮れるの?
こんな感じ。グリグリ動かすの面白くないですか?
肝心のクオリティですが、桜を至近距離で捉えてもしっかりとした描写という感じですね。近距離でもそつなく写るのはこのカテゴリーのカメラだと「すごい」のひと言に尽きます。
写真として扱うのであれば、このように魚眼レンズのようなパースの効いた写真を切り出すのがおすすめ。撮影時に角度などは気にしないでもよく、カメラをどう向けてもこういった写真を切り出すことができるのが360度カメラの強み。シャッターさえ切ればカメラがどんな向きを向いていても構図を切り出せます。
ゴースト・フレア・フリンジフリーを実現
撮影した写真の細かいところを確認していきましょう。カメラの画像処理の入らないRAWをLightroomで開き、暗所を少し持ち上げ、拡大してみました。
フレア・ゴースト・フリンジなどほぼ気にならないレベルです。
ごく右端が緑に霞んでいますが、ここはスティッチングと言われる書き出し後の処理で映らない、レンズのごく端の部分ですので気にしないでも良いでしょう。直射日光で細い枝も写しているので、かなり難しい被写体ですが、よく写っていますね。細い枝の先までしっかりという感じ。
4K収録可能な動画の画質は、良くも悪くもふつう
桜の下を動画撮影しながら歩いてみました。動画はこちら。飾らないけど嘘のない色で、そのまま資料として使うにも、編集素材にも使いやすいです。
本音を言うともう少し”色気”が欲しいところですが、本機はそういうところは割り切って工学性能などに力を入れ、堅実に作られているので、これはこれで良いと思います。
こちらの動画は公開用に再処理されており分かりづらいのですが、画質は普通。4Kを謳うのであればもっとシャキっと映って欲しいです。手振れ補正もまあまあかな。オーディオ収録は4chの空間音声記録に対応させることができます。VRなどで楽しむには良いのかもしれませんが、映像収録を目的するには物足りないかも。
ちなみに、もう少し簡単にみていただくために、YouTubeに動画をアップしようと試みたのですが、動画の中から使いたい時間だけを切り取ってアップロードすることができませんでした。全天球動画という特殊性から、他のツールを使ってトリムしてアップロードしようとしたけどダメ。これは困りますね。
ハードな編集に耐えるRAW現像耐性
スマートフォンから設定をマニュアルで操作し、感度や露出など調整可能な本機ですが、やはり物理ダイアルなしだと細かい追い込みは厳しいですね。そうなると気になるのはRAWによる持ち上げがどこまで可能なのかというところ。
流石に広角レンズのように画像を切り取って出力しようと思うと、画像の解像度的な限界は感じるものの、暗い部分を持ち上げてもかなり綺麗に明るくなってくれる印象です。
同じような小型カメラを積むスマートフォンやドローンのRAW画像はどうにも緑にノイズがかったりあまり気持ちよく持ち上がらないので、やはりここはセンサーサイズのパンチが効いているのではないか?と思います。
ちなみに……現像画面の全景はこんな感じ。まず、前後レンズの写る独特な画面で色合いなど調整します。写り込みなどをスポット修正などで除去するのもこの段階がいいでしょう。
そののち、書き出し専用のプラグイン「RICOH THETA Stitcher」で前後レンズを合成して画像を生成します。一手間かかりますがワンランク上の全天球画像を仕上げるのであれば必要な作業です。
アプリはもう少し作り込んで欲しい
データを取り込む場合、本機をPCに接続して取り込むか、スマートフォンの場合は専用アプリからWi-Fi経由でデータを取り込めます。ただ筆者の試した中だと、何度か接続に失敗し設定アプリを経由することに……毎回のことなら、いっそ慣れれば良いんですけどね。
現像用のプラグインなどももう少しシンプルに・使いやすくして欲しいです。まず画像を開く操作からして大変。操作手順と照らし合わせこの通りやらなければなりません。
でも、簡単にギャラリーページを生成して友達に360度ビューを共有できる機能はかなり良いと思います。とりわけ不動産物件閲覧や建設現場の進捗管理などビジネス用途での利用が多いと思いますが、この辺りは抜かりないですね。
静止画にあたらしい表現を求めている人にはこれ!
期間中に夜景・星景を撮れなかったのは残念でした。色々書きましたが、個人的に購入し、撮影を試してみようと思うほどには面白いカメラでしたよ。星空写真はカメラやレンズの地力が必要ですが、問題なく星空写真に耐えるポテンシャルがこのRICOH THETA Z1にはあります。全天球で星空を撮るのは楽しいでしょうね。
なお、本機は記事執筆中にリニューアルされ、内蔵ストレージの容量が19GBから51GBにアップグレードされています。この機会にぜひ。