オンラインコミュニケーションSNS「VRChat」上にて、展示会イベント「GameVketZero」が開催されています。開催期間は2021年4月29日(木)~2021年5月5日(水)。
主催はVR法人HIKKY。インディーズゲーム(新規・もしくは小規模な企業や同人団体等が開発したゲーム)を紹介する展示会です。
今回は12の特設展示と96の一般出展が入り乱れるこのイベントの特徴と魅力、そして今後予想される展望について取り上げていきます。
スマートフォンやタブレットからも参加可能
今回のイベントの特徴の一つは、何と言ってもブラウザを経由してスマートフォンやタブレットでもイベントに参加できるという点でしょう。
従来、会場となっているVRChatはパソコンからのアクセスが必要であり、また十全に遊ぶには相応に高いスペックが求められてきました。
そこに今回、ある程度遊べるというレベルではあるものの、スマートフォンなどから参加できるシステムを導入したため、来場までのハードルが相当下がったのは大きな変化です。
なお今回の解説はパソコンのPCゲームプラットフォーム「Steam」版が中心となります。
会場
会場に入ると馴染みのある人にはお分かりのホール入り口のような場所に出ます。この建物のモデルとなっているのは幕張メッセ正面入り口でしょうか?
エントランスの左右には会場内にも掲載されているポスターが展示され、クラウドファンディングの協力者やスタッフリストも見て取れます。そしてこれでもかと存在感を主張する扉をくぐれば、会場まで一直線に向かう通路に入ります。
ここで出てくるのがナビゲーターのすたんどにゃろんというキャラクターです。会場内では常にプレイヤーの近くを浮遊し、出展ブースに近づくと出展元の名前を伝えてくれます。またカメラ機能も搭載されていて、VR機材がないプレイヤーでも自撮りをする事ができる優れものとなっています。掴んで離せば一定の距離まで離れてくれるため、視界の外まで移動させたりヨーヨーのように遊んだりする事も可能です。
ホール内の会場は一面の星空が広がる中マイクロソフトとGoogleのブースを筆頭に、カンファレンススペースや配信スペースを備えたSFチックな構造となっています。
また会場内最奥部にはパソコンの筐体と各種色彩の名前がついた展示会場に向かうポータル、そして行く先を簡単に説明する案内板が備え付けられています。
ここで目を引くのはバリエーションの多さです。アクションやシューティングといったジャンル分けがされており、その数はなんと11会場にも及びます。また各展示会場には目玉となる企業出展ブースが存在し、1会場8つから9つのインディーズゲームのブースが設置されています。
展示の内容は出展物を解説・宣伝する動画と画像が中心であり、3Dモデルなどが中心となっていたこれまでの展示イベントとはだいぶ毛色が違う様相を見せています。展示会場最深部には次の会場へ移動できるポータルが存在する他、VRChatのメニュー画面からもGameVketZeroの各展示会場へ移動する事が出来ます。
スマートフォン等から閲覧できるブラウザ版ではやや演出が抑えられている他、アバターは固定であり展示ブース内での動画の再生と停止は自動で行われずそれぞれ操作が必要となります。またVRChatではほぼ出来ない三人称視点(キャラクターの後方にカメラがある状態)と一人称視点を切り替えて操作する事が出来ます。
先程紹介したすたんどにゃろんは各会場入り口に佇んでいるだけで、ブラウザ版では一緒についてきてくれないという少しだけ寂しい様な仕様となっています。しかし展示会場間の移動はスムーズに行える他、スマートフォンやタブレットといった端末でリラックスした体勢のまま、手軽に会場にアクセス出来るのはブラウザ版ならではの大きな強みとなっています。
インディーズゲームとVRの親和性
今回のイベントの特徴はまだまだありますが、その一つはVRタイプのゲームについて展示発表を行える大規模イベントであるという点です。
VR環境対応のゲームは必要となる環境やゲームとしての市場規模や認知度から、どうしても後手に回らざるを得ない状況が続いている状態でした。
そんな中でVRChatというVR環境を整えているユーザーが多い界隈でVRを活かしたゲームを発表する事は、非常に親和性が高く高い宣伝効果が期待できます。
また実際にVRタイプのゲームを展示会等で試遊させようとする場合の物理的な制約が大きい問題も、自宅にVR対応の環境を整えているユーザーが対象となれば話は別です。
こういった点から今回のイベントは特にVR対応のゲームを制作しているチームにとって大きな追い風になるのではないでしょうか。
目を向けつつある企業とバーチャル展示会の可能性
今回のイベントについてまた一つ大きな要素と言えば、企業出展ブースの存在です。
これまでバーチャルマーケットといったVRChat内の展示会イベントでも多くの企業が展示を行ってきましたが、今回の出展ブースも負けず劣らずの認知度です。
その中でも大きな存在感を放つブースを2つ取り上げてみますと、その一つ目に挙がるのはバンダイナムコエンターテインメントのブースです。
バンダイナムコといえば先日HMD開発メーカーとして知られるHTCの日本法人HTC Nippon株式会社と、バンダイナムコホールディングス傘下のバンダイナムコピクチャーズがパートナーを組んだ事で話題となっています。
バンダイナムコエンターテインメントも同様にバンダイナムコホールディングスの完全子会社であり、長らくゲームメーカーとして高い認知度を得ています。VRコンテンツ等を中心としたこの展示会に出展したという点で、VR向けコンテンツを商機の存在する市場として注目している可能性を示唆しているのではないでしょうか。
同様に存在感を放つブースの二つ目はテレビ東京ブースです。
こちらは毎週日曜日の夜10時48分から「eSports high TV」という番組を放送しています。こちらはいわゆる話題のゲームをプレイし解説したりイベントの様子を放送したりするという内容で、AI VTuberのタミ子という看板キャラクターを中心に二人のアナウンサーが進行する番組です。これまでラジオ局の出展はありましたが、テレビ局は初めてであり宣伝する番組もインディーズゲームの展示会に合ったものとなっています。アナウンサーの写真を観光地のボードの様に設置して記念撮影用に展示するという掴みどころを心得た内容もまた注目点となっています。
今までただ放送されるだけで終わってしまう画面の向こうでやっているイベントという状態から、テレビ局の参入で一気にイベントがこちら側と地続きになったのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの流行により今までにはない形態として着目されつつあるバーチャル空間上での展示会ですが、徐々に企業やユーザーからその存在を知られつつあります。
ゴールデンウィークに差し掛かりまだまだ外出するには難しく、じっくり腰を据えて色々見て回りたいという欲求を覚えられる方も多いかと思われます。この期間にぜひ、自宅から仮想のイベントへ足を運んでみてはいかがでしょうか。