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BALMUDA Phoneレビュー。あなたの人生に不要、社長「自己満足」の欠陥デザイン

 家電メーカーBALMUDAのスマートフォン「BALMUDA Phone」を購入したのでレビューします。SoftBank版は14万3280円、直販の公開市場版(SIMフリーモデル)は10万8000円となっています。

 バルミューダというブランドの看板を背負って鳴り物入りで登場した本機。ネット上でも賛否両論あり、どちらかというと否定的意見が多かったと思います。

 論評は自由ですが、筆者が唯一受け入れられないのが、Snapdragon 765で10万円超えだからゴミという極めて安直な言説についてです。

 スマートフォンを構成するのはSoCだけではありません。様々な部品、ソフトウェア、フォームファクタがあり、処理性能を欠いても他の部分で高品位、差異化している製品も存在します。わかりやすい例でいえば、圧倒的なギミックで突き抜けるLG Wingやrazr 5GはSnapdragon 765/Gを搭載して10万円~17万円、音質で突き抜けたGRANBEATはSnapdragon 650で9万円。筆者が愛用するBlackBerry Key2はSnapdragon 660で8万円~9万円でしたが、今でも神機だと感じており代替もなく、最近4台目のKey2を購入しました。

 また、いくらSnapdragon 800番台でも、様々な部分でコストダウンを図っているコスパハイエンドとしてGalaxy FEシリーズ、Xiaomi Tシリーズなどがあり、またハイエンド機として当然具備しているべき仕様をことごとく欠きながら12万円という到底不釣り合いな価格で販売され投げ売りされたarrows 5Gの例もあります。

 Snapdragon 765で10万円超えだからダメ、という言説はいかに馬鹿げているかがわかると思います。これがゴミであると出力するには入力している情報があまりにも少なすぎます。

 ではBALMUDA Phoneを実際に買って使ってみてどうなのか。別に本機がSnapdragon 888を搭載していたとしても到底、本機を推奨することはないでしょう。もはや「呆れ」すら感じる、味わい深い出来です。

使いにくすぎる

 本機の特筆すべきはデザインです。確かに持ちやすいサイズとデザインについては非常に好感です。10年前は丸みを帯びた有機的なデザインの機種も散見されました。Sony Ericssonや、それこそiPhone 3G/3GSもラウンド形状でした。個人的にはPalm Preを思い出したところ。

iPhone 3G/3GSに似ている、パクリ元だ、彷彿させるとの意見がSNS上でも多い

 この丸い背面自体は結構好き。たしかに持ちやすくて良いです。エンボス加工のBALMUDAロゴは個人的には邪魔ですがファンには嬉しいのかもしれません。いまのところ背面はプラスチックでもレザーっぽさのあるシボ塗装なので手触りは非常に良いと思いますが、普通に傷や汚れには弱いと思います。

 寺尾社長は長く使うと味が出るなどと主張していました。とあるメーカー関係者曰く傷は「塗装に工夫を施しているならありえる」とのこと。ただTwitterではデニムズボンのポケットに入れていたらすぐに青色に変色してしまい後悔しているといったもあり、筆者は少なくとも汚れには注意が必要だろうと見ており、自宅でコーヒーなどを飲む時はヒヤヒヤするので、BALMUDA Phoneを遠ざけるなど神経を使っています。筆者は「裸族派」なので保護ケースは装着しませんが、いまのところまだ目立った傷や汚れはありません。

 公式サイトで「芸術」などと謳っているほど素晴らしいとは思えません。背面の指紋認証とカメラも左右非対称。

 しかも、カメラと指紋認証に間違えて指を触れてしまいます。左手で持った時には自然に人差し指が指紋認証の位置にきますが、右手だとそうはいきません。指紋認証に指を動かす必要があります。せっかく片手操作できるのに、右手では不便というのが引っかかります。

 前面はフラット。インカメラはパンチホールに配置。スマートフォンは狭額縁化を推し進める中で、やむを得ずフロントカメラを画面内にパンチホール・ノッチとして取り込みました。ところが、上下に額縁がありながらもパンチホールを配置する本機には強烈な違和感を覚えました。

 しかも小さめの画面ながらフロントカメラが大きすぎるために、ステータスバーが二段になってしまっています

 もし穴やノッチのない16:9比率画面なら、動画を視聴する上で優位性になりえるのですが、パンチホールが邪魔になりがちです。動画に穴が空いたり、動画の表示領域が大きく狭くなってしまったり。

 ただ高さがそれほどないことで指が上部に届きやすく、片手操作はしやすいです。一方で現代のスマホが縦長化した理由の一つがスクロールSNSの情報表示量の増大であるため、SNSでは画面が狭く必ずしも使いやすくはありません。

 昨今のアプリは狭い画面に対応しておらず、各種アプリで表示がおかしい部分が出てきます。アプリ設定を見直す必要があります。標準のステータスバーすらおかしくなることがあります。OS設定から文字サイズを小さく、表示サイズを小さくしておくと、各種問題が生じにくくなります。

 電源ボタン兼用指紋認証センサー。これが最悪です。なんと一発で解錠できません。一度電源を押し込んでから、画面を点けて、そこから指紋認証センサーが作動します。そんな面倒くさい機種はそうそう存在しません。ほとんど多くの機種の指紋認証は画面消灯中にさっと触れるだけで即解錠可能です。

 特に「背面の電源ボタンを押し込まないといけない」のが、とにかく厳しいです。側面であればまだいいでしょう。反対側に手を当てて、挟み込む形になるので自然です。これは背面にあるので変に力を入れる必要があります。右手のみで無理やり人差し指の腹で一発解錠させようとすると、筆者の指の肉が少ないせいもあると思いますが、人差し指以外の指が画面端に食い込む形となり、指が痛いです。

寺尾社長自らデザインし、オーガニックだ自然だと主張しているものの、横から見るとわかりやすいが、背面側面の曲線と、フラット前面部の接触する点が不自然なほど鋭角になっていることに気付かされる

 このため、いったん人差し指の先で電源ボタンを押して画面を点けてから、人差し指の姿勢を変えて、人差し指の腹で解錠するのが一番ラクです。これが不便で仕方ない。「ロック画面でも見てろ」ということかもしれません。

 本機は顔認証にも対応していません。使いにくい指紋認証を使うしかありません。

 電池消費は増大しますが、ゆらす/持ち上げることで画面点灯が可能。常時センサーで検知することになりますが、ただでさえ電池持ちが悪いので有効化したくありません。「高級機なんだから生体認証周りはまともなハードウェア積めよ」としか思いません。仕方なく有効化している状態です。

 また、これを有効化したとしても、結局ズボンのポケットに入れる前には電源ボタンを押し込むのでストレスを感じるのは同じです。高級機だろうが廉価機だろうが全ての基本である電源ボタンと生体認証がダメなスマホはダメだと思います。

 背面は卵のように丸みを帯びており、机上に背面から置くと不安定。グルグル回転すらしてしまいます。机上で動画を再生するのは非常に向いていません。

 ちなみに三脚やカーマウントへの装着も不可能。

 スピーカーはモノラルで、音を鳴らしてる間、周囲がビリビリ震えて箱鳴りしており、音質は悪く感じます。位置もおかしいので、動画や音楽を再生すると塞がれがち。ただでさえ微妙な音質がさらに変なこもった印象になる場合もあるように思います。価格帯を考えると悪いのではないでしょうか。

 そもそも動画なんてほとんど見ず、Twitterを開きながら、少し音楽を聞いて、Google Mapでナビゲーションを活用しながら散歩する、ラーメンや喫茶店に行くという日常を本機で楽しんでみました。ところがどうでしょう。減るわ減るわ。凄い勢いで電池が減っていきます。1時間10%。待機中に過剰に減りすぎるということはないのですが、使用中は劇的に減ってしまうため、筆者の使用法ではメイン機として1日まともに使うのは難しいです。それもそのはず、本機の電池容量はわずか2500mAhしかありません。

 これについて私は当初「デジタルデトックス」的なテーマから読み解けるのだと思っていました。

キミは気付いたか、BALMUDA Phoneの優れた設計思想

 寺尾社長は語ります。人生の中心がスマホとなり画面を見ている人が増えていると。

 なので、きっと本機の主題はデジタルデトックスであり、この機体は、決してラウンドした背面から置くのではなく、「画面側」を下に、つまり伏せて使う機種なのか?と筆者は推定しました。

 事実、平坦な画面側の縁は突起で囲まれており、伏せても画面部分が接地しないようになっています。

 そして背面配置の通知LEDライトが見えるようになるので、通知が来たらわかります。これならスピーカーが塞がれることもありません。

 そこで持ち上げて電源ボタンを押して、ロック画面を見る。特にロック画面にめぼしい通知がなければ、そのままスマホをいじらずに机上に置く。画面点灯と指紋認証が同時に行われない不便な仕様は、そういうデトックス的コンセプトを反映させて不便にしたのではないか?

 そう、「日常は画面外で起きている」とはこういうことだったのではないでしょうか?これならBALMUDA Phoneでやりたかったのは、コレだったんだろうか、とわかるじゃないですか。

 ……「いや、それなら背面にQiがあるのはおかしいよな?」「机上で『ゆらして』画面点灯ってオプションの存在も変だよな?」とかいう疑問は、ひとまず置いておきましょう。

なぜ説明しないのか?

 もしそうならば発表会プレゼンで延々と「俺は昔貧乏だった、その頃読んだシリコンバレーのIT企業の本を読んで憧れた、長年PCを作りたかった、会社を起業した、経営が大変だった」とどうでもいいことを語り続け、公式サイトのメッセージでジョブズを引き合いに出す薄っぺらい文章を載せている場合ではありません。こういうデジタルデトックスの製品コンセプトだから、あそこはこう、ここはこう作ったんだ、と最大限製品について語るべきでしょう。

 ちなみにジョブズプレゼン丸パクリスタイルで、「試行錯誤を続けて4.8型がベストサイズだと導き出した!」と長々とこだわりを語った挙げ句「でも入り切らないので妥協して4.9型にした」と寺尾社長が語ったところで、さすがに筆者は噴き出してしまいました。あそこ、完全に笑いを取りにきてましたよね。本当に自信を持って製品を世に送り出すなら、そこは単に「4.9型こそベスト」と説明すべきであり、それが自社製品に14万円払う顧客に対する誠実さです。

 もしほんとうにデジタルデトックスのためなら、電子ペーパーや背面サブディスプレイで通知確認や、インカメラ廃止ぐらい検討してもいいのにな、と思ってしまいます。それぐらいやったら面白いものになったと思います。

 デジタルデトックスをにおわせる説明がわずかなのは、本当に下手すぎる。コンセプトのために伏せて使う機種を作ったのだと、正々堂々プレゼンすべきでしょう。説明不足すぎるのは不可解……と思っていたのです。

なぜなら、そんなもの考えてないからだ

 ところがITライターの中山智氏曰く、開発担当者に「(丸い背面を机上に置くと)不安定で、音も全部うしろにいってしまう。画面側を下にして聞くのが基本ということか?」と訊いたところ「置いた面に反響させて良い音が鳴るようにしてある」との回答だったとのこと。なんと、つまり伏せて使う機種ではないというのです。少なくともまるで重要なテーマではなさそうです。

 こうなると寺尾社長が少しだけ語ったデトックス的な主張は、製品テーマなどではなく、「後付け」ではないのか……?という疑念が頭をよぎります。

 プレゼンで語っていた通り、公式サイト上にあるように、社長が単に丸くて小さいスマホを作りたかっただけ。本当にそれ以上でもそれ以下でもないのではないか?

社長の自己満、あとはツギハギ

 発想法はこうです。「背が丸い」。これだけが譲れない主題。寺尾社長はとにかくこれがいいんだとデザインスケッチを書き上げます。

 さて、どうするか。ラウンド形状に電池を敷き詰めるには技術とコストが必要になる、では電池容量は妥協しよう。ラウンドの端となる画面上下ベゼル部分は、厚みが薄くなってしまいスピーカーやカメラなど置くのが難しい部品がある。じゃあスピーカーも通知LEDもどちらも背面に配置してしまおう。インカメラはしょうがないから画面内で……。

 しかし、丸い背面のために、電池持ちも音質も犠牲となり、画面は大きな穴があって狭い。どう正当化できるのか。

 ……そこでマジックワード、デジタルデトックスの登場です。意識高い系のBALMUDAファンならコロッと騙せそうな横文字をにおわせる。これなら電池容量を詰め込む努力を怠る言い訳にできます。スマホを見るな、人生に集中しろ!

 無理なデザインを押し付けて、そのしわ寄せを克服できないことを肯定する免罪符として、都合のいいワードを使っているのではないでしょうか。

 本機がデジタルデトックスにならないと断言する理由はもうひとつあります。これは後述します。

 つまりこれは本当に、完全にプレゼン通り、寺尾社長が「作りたかった機種」であり、べつに「使いたかった機種」では全く無いのではないか?

物議を醸したジョブズそっくりプレゼン。ただただジョブズファンで昔のiPhoneが好きなんだなとしか思えない

 現に寺尾社長は、Twitter for iPhoneでツイートしています。使いたかった機種なら、喜んで試作機から使い倒しているはずです。きっと背面が丸くて小さめのiPhone 3G/3GSが好きだったのでしょう。ジョブズのiPhoneが大好きで、それを作ってみたかった、それ以上でもそれ以下でもないわけです。

 使う人の目線などない。実にくだらない、自己満足なプロダクトではないかと感じてしまいます。その自己満足を突き通して販売価格に見合うだけのクォリティーを担保する技術力が委託メーカーにないかコストを投じていません。

 京セラも、このデザインを落とし込めないなら突き返すべきでしょう。もうiPhone 3GSを丸パクリして、そっくりそのまま側面部もラウンドにしておくべきです。なぜなら、こうすることで上下ベゼルに部品の配置が可能となるからです。

 フロントカメラもLEDも上ベゼルに配置できるはずです。バカみたいなパンチホールも不要。背面の電源兼用指紋認証センサーを押し込む際に指が側面エッジに当たって痛くなる問題も生じません。様々な問題を解消できます。

 iPhone 3GSをパクりたい、でも自分でデザインをしたい、そんな素人の自己満足のスケッチを信じられないことにプロである京セラが止められなかった、現実的なプロダクトに落とし込めなかったことで奇怪で整合しないデザインに堕したのです。

カメラは5年前レベル、全てが低水準

 筆者は、尖ったピーキーな機種や個性的な機種はけっこう刺さることはあるものの、こうなるとただ単に他機種と比較するしかありません。

 画面にはデカイ穴が開いて60Hz駆動の液晶、音質も悪い本機ですが、カメラも悪いです。

 単眼、画角はやや狭めの印象。日中屋外ではそこそこ普通に撮れますが、AFが遅く、特に近い被写体を撮影する際に迷う場面がありました。以下作例です。

 少し条件が悪くてもモロに影響を受けやすい、廉価モデル、ローエンド程度の実力。逆光、強い光源下、夜景/低照度下などには向きません。

 本機はAIやオートによる自動切替すら備えず、手動で料理/人物/夜景モードの切替が必要という有様。面倒です。手を掛けた分大きな効果が得られるならばともかく、各種モードも正直微妙。単純に彩度を上げて塗りつぶしたような料理モードは5年前レベル。マニュアルモードはなし。

 左が通常、右が手動夜景モード。空はノイジー、シャドウも潰れディテールもダメ。

 価格帯としては競合する10万円代前半の高級機と比べると雲泥の差であり、2万円の機種が比較対象として妥当でしょう。2万円の機種でも、オートぐらいはありますが。指紋認証すら削った情弱一本釣り用の激安一括0円バラマキ機OPPO A55s(AQUOS sense3 basicポジ)と比べればまだ良い、といったところ。

 筆者が使用しているのは公開市場版にも関わらず、カメラシャッター音の消去はできません。

 本機の驚くべき点が、スクリーンショットの撮影でもシャッター音が鳴る点です。これを強制的に鳴らすことは合理性が全くありません。昔はそういうメーカーも多数ありましたが、こういった基本的なことをやっていない大手メーカーは、もはやローカライズを雑にサボっているGoogleのPixelぐらいです。iPhone、Galaxy、Xperia、AQUOS、Xiaomi、当然のようにスクリーンショットで音など鳴らしません。もはやarrowsですら鳴りません。鳴るとしてもマナーモード中は連動して消えるのが当然でしょう。

 電車でゲームをしていてゲーム画面をスクショする時、図書館や静かな喫茶店で本を読む傍らネットの検索結果をスクショでメモする時、スクリーンショットでシャッター音が鳴り響く、そういうストレスフルな機械はたとえ値段が一括0円だろうがメイン機として使う価値はないと筆者は思います。

 Snapdragon 765 5Gは悪いSoCではありません。そこそこのパワーはあります。

 いくらパワーがあろうとも画面に穴があいてるのでゲームや動画の邪魔です。普通は20:9のような画面比率なので、画面端の黒帯部分にパンチホールが来るのでそれほど邪魔にならず、妥協できるという人は多いと思いますが、本機は16:9なので、ゲームや動画にパンチホールが重なりやすくなっています。

 10万円、14万円の機種では到底ありません。

良いと思う個性もあるが挽回は全くできない

 細かい部分では良いと思う部分もあります。たとえば音。充電音の「キュイーン」は可愛い。

 あと通知バーの各種トグルスイッチは、サウンド/バイブが「音/振動」、LEDライトのアイコンがランタン、機内モードは無尾翼デルタなどセンスは良いです。

 ホーム画面でラベルをスワイプするとアプリ起動は、配置したアイコンタップによる起動で十分なので魅力を感じません。

 オリジナルアプリは時計、電卓は正直まったくどうでもいいです。メモ帳はバックアップは可能ですが他デバイスのメモ帳とは同期できません。見るべきところがあるのはカレンダーで、Googleカレンダー経由でマルチデバイス同期が可能。予定をしっかり毎日詰め込んでいる人はグラフィカルに確認できて楽しいかもしれません。しかし予定表にそれほどギッシリ入れているわけでもない筆者には普通のカレンダーアプリで十分です。これらの使わないアプリの開発費で端末価格が上がっていると考えると、むしろマイナスポイントかもしれません。

デトックスはできない。絶対に買うべきではない

 仮に、10万円、14万円で贅沢にデジタルデトックス専門として設計された機種だったとしましょう。そうだと思い込みましょう。

 デジタルデトックスとはなにか?スマホのことを考えず、他のことに集中することですよね。

 でも、本機は電池容量を詰め込むことを妥協しました。おかげで、終日電池が持たないので、夕方にはスマホの電池残量が気になって仕方ありません

 「動画は画面が小さくて穴が開いてるし、電池も大きく減るからなるべく見ないのだ」、そう思っても、LINEやSNSを見る以上、友達から動画や動画のURLは送られてくるのではないですか?SNSをチェックしてるだけでもけっこう減ります。

 「電池はまだあるかな?家に帰るまで持つかな?さっき送られてきた動画のURL、家に帰ってから充電器を繋ぎながら見るって覚えておかないと。このまま急に飲みに行く誘いが入ったらどうしよう?喫茶店で充電しておこうかな?モバイルバッテリーを持たなきゃ、ああ明日からはモバイルバッテリーも充電して持ち歩かないといけないのか……」

 こんなことを考えてソワソワしていたらデジタルデトックスできますか?無理ですよね。

 これならまだ「頭の片隅に常にスマホの充電時間がある状況を打破して、毎日をもっと楽しもう」とシャープが企画開発、「廉価モデルなのに普通の見た目、でも大容量電池」で大ヒットを飛ばしたAQUOS sense3、その最新モデルAQUOS sense6を買った方がよほどいいでしょう。

 とはいえ、デジタルデトックス的な「不便で小さくて電池容量少なめのシンプル端末」にはニーズがあります。このニーズは、Jelly2やPalm Phone、Rakuten Mini/Handのような端末ですね。

 しかしこれらはどれも2万円程度と激安。10万円や14万円の端末など買わずとも、デジタルデトックス端末は買えるのです。2万円なので他の端末を買うための予算があります。「休日のお出かけだけ使ってくださいね」「タブレット等と組み合わせて使ってくださいね」と、どう使うべきか明白ですね。詳しい人は適当にSIMを差し替えたり複数台持ちして使うでしょう。

 しかしBALMUDA Phoneは違うでしょう。テレビや雑誌で宣伝させSoftBankの販売力で売る、SIM差し替えも頻繁にせず複数台持ちもしてなさそうな一般人がターゲットです。そんな人達に使いこなせるでしょうか?電池がもたない、思うようにはデジタルデトックスできない。普通に使うには画面は不便で音も悪くカメラもダメ、2万円程度が相場のただただダメな機種を10万円、14万円で買わされるだけ。もはやBALMUDAブランドを毀損しています。

 根本的に、不便を強いることでデトックスなどやめるべきです。低価格機種ならば、それも創意工夫、引き算の妙でしょう。しかしお客様から10万円、14万円をいただく高級機ならば、高級機に相応しい手法があるはずです。

 もし14万円も予算があるなら、まだGalaxy Z Flip3でも買うほうが良いでしょう。電池容量は3300mAhありますし、通知は見やすいサブ画面に表示されるのでスマホを開かずに済みます。開けばちゃんとハイエンドスマホ並の品質とサイズの画面で快適に使えますし、SoCはSnapdragon 888なので、快適な画面と快適な処理性能ですぐに用事を済ませ、画面を閉じて、スマホの外で起きる人生により集中可能でしょう。こっちの方がよっぽどデジタルデトックスという主題に向き合えています。

机上に置いておけばサブディスプレイで時刻や通知、再生中の音楽制御などが可能。14万円と高額だが、極力スマホを断つ生活を最新テクノロジーで実現できる意欲作だ

 BALMUDA Phoneを使ってみて、不出来な製品の言い訳にデジタルデトックスを使っただけではないのか、という結論に至りました。

 それをこんな価格で売るのは酷すぎる。これを誰かに勧めようとは思えません。あなたの人生で買うべきスマートフォンはこれではありません。ここまで挙げた機種名からも検討すべきですし、小さめのスマホを買うならiPhone miniやiPhone SEシリーズも検討するべきです。

もし、こんなBALMUDA Phoneだったら

 Rakuten MiniやJelly2は電池持ちが良くなくて画面も小さくて不便です。これが大きくなったと捉えれば、選択肢としてはナシではありません。そういう人にはBALMUDA Phoneが2万円ぐらいなら購入価値があったでしょう。それは無理としても、Snapdragon 400番台で4万円以下に収めれば持ちやすい筐体から支持する人はもっと多く出てきたでしょう。6万円ぐらいでも、京セラらしいスマートソニックレシーバー(ディスプレイパネルごと振動させ音を伝えてスピーカーとして代用する機能)、防水防塵耐衝撃MIL規格にしっかり対応していれば評価する人もいたかもしれません。(BALMUDA Phoneは耐水のみ、スマートソニックレシーバーには非対応)

 本来、BALMUDAはおしゃれな家電で好評のメーカー。京セラは色気のある王道機種は作れないものの、海の中でも使える超強靭タフネススマホやニッチなガラホ、法人向けスナドラ800番台Androidルーターといった邪道を作らせたら光る個性的なメーカーです。戦車から装軌車両回収車まで作れる三菱重工業に、おしゃれなEVスポーツカーを作って欲しいなどと頼むのは至難の業です。

 LeicaとSHARPの提携はとてつもない可能性を秘めた1型カメラスマホを誕生させ、意義のある幸福な結婚だったと思いますが、真逆の結果となったのが対照的です。

 どうしてもBALMUDAと京セラが組まなければならないなら、いっそガラホでも作った方がマシだったでしょう。INFOBAR xvや電子ペーパーのカードケータイ、G’zOne TYPE-XXを作ってきた京セラなので、自己満足の失敗作ではなくよほどBALMUDAらしい携帯端末ができそうです。

決して完璧ではなかったが京セラの手掛けたINFOBARは筆者も気に入っている

 スマホの形でスマホのサイズをしていると、「スマホはこう使うものだ」という了解があります。言い訳など通用しません。BALMUDA Phoneはただひたすら電池持ちの悪いスマホでしかありません。「ガラケーはこう使うものだ」という了解があるので、きっと大丈夫でしょう。ガラホ向けなら独自アプリも作る意味があります。多くを制限したソフトウェアなら電池を詰みきれずとも誤魔化せます。そしてガラホ自体が希少なので、バカみたいに高額な値段でもある程度許されるのではないでしょうか。

 家電をIoT化する気もなくスマホに参入する意味もないメーカーなのでそれが分相応。今後はガラホを作って欲しいですね。

 本来ならば、こういった独自デザインの新規スマホは歓迎されるべきです。Android OSの成熟によりカスタマイズ最小限でも端末を作りやすくなりました。今後参入のメーカーはどうか「製品企画を実現できる委託先を選ぶ」「使わないアプリの開発費でお値段数倍という愚かな判断をしない」といったことを肝に銘じることで、光るデザインアイデアを活かした素晴らしい製品を送り出してくれることを期待します。本業のブランド価値と株価を落とすなどということもなく、新しいファンの獲得に繋がるはずです。

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