世界最大の半導体受託製造企業である台湾積体電路製造(TSMC)が開発中の最先端2nm製造プロセス。それに関する技術情報が、社内エンジニアによって不正に持ち出されました。台湾の複数メディアが報じています。
それよると、TSMCは2025年7月に社内の監視システムを通じて異常なファイルアクセスを検知。その後の内部調査で、新竹にある第20工場および研究開発センターに勤務するエンジニアが、スマートフォンで機密資料を撮影するなどして外部に情報を持ち出した疑いが浮上しました。
流出した情報の提供先は、日本の大手半導体製造装置メーカーである東京エレクトロン(TEL)に勤務する技術者とされています。この人物はかつてTSMCのシステム統合部門に在籍しており、今回関与した現役のTSMC社員らと個人的な関係があった模様です。
漏洩した技術資料は、日本の国策半導体会社ラピダスが開発を進める上での参考データとして渡された可能性が指摘されていますが、直近公開されていたラピダスの2nmノードトランジスタ試作成功に本件漏洩技術が流用されているとのエビデンスは示されていないことには注意が必要です。
台湾の検察当局は7月下旬、国家安全法違反の容疑で関係者への捜査に着手し、新竹市観心路スターバックスで防犯カメラの映像に映っていた、ノートパソコンに2nm機密情報を写す二人を確認。エンジニア6人を拘束し、そのうち主犯格とされる陳氏、呉氏、戈氏の3人については、知的財産及び商業裁判所が勾留を認めているそうです。というのも、台湾では2022年の改正法律で「国家核心重要技術」として14nm以下の先端半導体技術を保護対象に加えているからです。
許可なくこれらの技術を取得、複製、漏洩した場合、最長で10年の懲役と、最高で5000万新台湾ドルの罰金が科される可能性があります。本件は、この改正法が適用される初のケースだそうです。
TSMCは2025年末までの量産開始を目指しており、競合に先んじています。また、台湾は世界に冠たる「半導体大国」であり、それを代表する世界企業がTSMCです。世界の半導体開発競争に大きな影響を及ぼしそうなこの一件、続報を注視したいところです。