NHKが報じたところによると、総務省有識者会議の携帯料金値下げの議論で、MNP優遇は不公平であるとの指摘を受けて、NTT docomoはMNPでのキャッシュバックと実質0円を廃止するとのこと。携帯キャリアが全国の販売代理店への監督や指導を通じて徹底させるそうです。KDDIやSoftBankも追従を検討中です。
そもそも不健全な販売手法を奨励し、販売代理店がそうせざるを得ない構造を構築してきたのは他ならぬ携帯キャリア自身であり、あたかも販売代理店だけが悪いかのような総務省有識者会議の議論とNHKの報道は理解に苦しむところ。
MNP優遇を廃止すると、端末買い替えサイクルが低下します。これについて、総務省有識者会議の掲げる対策は「中古市場の拡大」とのこと。16日にとりまとめる報告に盛り込まれる見通し。
中古市場の拡大には賛成ですが、端末買い替えサイクル低下への回答にはなっていないと思います。なぜ端末買い替えサイクルの低下が良くないのか?といえば、端末製造メーカーが苦境に陥るからです。端末が売れなくなれば撤退もありえます。端末製造メーカーが減少することは、選択肢の狭まる消費者にとっても不利益であると言えます。
そもそも中古市場なんて総務省の管轄外だと思いますが、総務省の出来る範囲があるとすれば、携帯キャリアのSIMロック解除拒否に対して業務改善命令を出すことでしょう。NTT docomoとSoftBankの「SIMロック解除半年間拒否、中古端末の解除も拒否」というルールは、中古市場や消費者の利便性にとって害悪です。これを是正させなければ完全に片手落ちです。
大体中古端末がなぜ安いかと言えば、MNP優遇で流れ着いた端末であるからで、MNP優遇を規制したら中古市場の端末も値上がりするでしょうね。「中古市場拡大」のお題目を掲げる報告書が、中古市場を縮小させる政策を書いているわけです。
私は携帯市場に政府が介入すること自体は、理解はできます。一時期、全国でiPhoneの「一括0円、割引特盛り、現金数十万円キャッシュバック」が行われた光景はさすがに異様でした。さらにそれは、日本人の払った通信料が、携帯キャリアによってアメリカ製のiPhoneのバラマキに使われ、そのiPhoneは中国に渡っていたという構図でもあり、しかも国内メーカーの苦境の一因であるとなれば、むしろ政府介入はあまりにも遅すぎたとさえ言えます。しかし、やっと介入したかと思えば、ぶちあげたのが「中古市場の拡大」って、何のために介入したのかわかりませんね。中古端末を買っても国内メーカーに利益は入りませんよ。(強いて言えば、最も利益を得られるのは、iTunesエコシステムの拡大で儲けられる米国メーカーAppleぐらいでしょうか?)
消費者にも利益にならない、メーカーにも利益にならない。適正負担化にしても中途半端。キーマンのNRI北氏の主張にも同意できない点が少なくありませんでした。あまりにも整合性がなさすぎて、総務省が通信放送行政を監督する意義がわからなくなります。今回の携帯料金値下げの議論は本当に残念です。